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おすすめ本:「20歳の自分に受けさせたい文章講義」

このマガジンは、最近読んで面白かった本をピックアップ。
本から学んだことを障害福祉に置き換えながらご紹介していきます。

福祉の仕事は、対人援助職と言われ、人相手の仕事です。
利用者の方との関わりが多いですし、直接的な支援業務が多いです。

でも、意外と知られていないのが「文章を書くこと」も多いってこと。
ということで、今回の「おすすめ本」はこちらです。

「20歳の自分に受けさせたい文章講義」

フリーランスのライターである古賀史健さん。
「話し言葉から書き言葉へ」のノウハウと哲学を、余すことなく書かれた一冊です。

本書の冒頭では、「文章の苦手な人が悩んでいるのは『話すのに書けない!』というもどかしさなのだ」と書かれてあり、誰だって、話すことはできるのに、どうしてうまく書けないのかを説明されています。

「話すこと」と「書くこと」は、まったく別の行為とした上で、
・「書くことは考えることである」
・「“書く技術”を身につけることは、“考える技術”を身につけることにつながる」

と提言され、講義形式で本書は進んでいくスタイルで、とても読みやすい内容でした。

目次にもあるように、本書はガイダンスと4つの講義から成り立ってます。
・文章は「リズム」で決まる
・構成は「眼」で考える
・読者の「椅子」に座る
・原稿に「ハサミ」を入れる

さて、印象に残ったところを中心にご紹介していきたいと思います。

 

視覚的リズム

(本書より)
文章を書こうとする人の多くが、大事な視点を忘れている気がする。
それは、「読者は文章を“眼”で読んでいる」という事実だ。
われわれが新聞を読むとき、本を読むとき、メールを読むとき、耳を使って読むわけではない。ときに音読することがあったとしても、基本敵意は黙読、つまり黙ったまま“眼”で読んでいるはずだ。
だとすれば、書き手の側の聴覚的リズムを気にする前に、「視覚的リズム」を考えなければならない。

考えてみると、たしかにぼくも「眼」で読んでいるし、基本黙読です。
見た目で「読みやすそう」とか「読みにくそう」とかを、判断していることも多いように思います。

本書では、視覚的リズムは、
・句読点の打ち方
・改行のタイミング
・漢字とひらがなのバランス

の3つを取り上げており、リズミカルな文章の大切さが書かれていました。

仕事柄、自閉症の人への支援が多いので、視覚的な理解の重要さはとても分かりやすかったです。
今までは、あまり考えたことがなかったポイントでしたので、これからは視覚的リズムをキーワードにして書いていこうと思います。

読者の存在

あらゆる文章には、必ず読者がいます。
本書では、読者の立場に立つのではなく、読者の「椅子」に座ることと書かれていました。
・「10年前の自分」の椅子に座る
・「特定の“あの人”」の椅子に座る

本当の意味でその「椅子」に座れるのは世の中に2人しかいないのではないかとする古賀さん。

特に、特定の“あの人”の重要性がとても分かりやすく、読者を多数派のみんなに設定すると誰からも喜ばれない文章になり、特定のあの人といった少数派に限定することで言葉のベクトルがはっきりし、結果的にその他の人にも伝わりやすくなるとのことでした。

福祉の仕事で書くことと言えば、ケース記録、行政への報告書、家族への手紙、会議資料など、読者は様々です。
できるだけ読者を特定の一人にすると、書いた文章が届きやすくなるように思いました。
早速、明日から実践です。

やさしく書くむずかしさ

(本書より)
あらゆる人に開かれた“平易な文章”ほど難しいものはないのである。

この言葉はとても奥が深いですね。
専門用語に溺れることで、文章はどんどん雑になることがあり、むしろ「こんな文章で、うちのオカンは理解してくれるだろうか」と考えた文章のほうが読みやすいと書かれていました。

「筆者の理解がふかければふかいほど、分かりやすい文章で高度な内容も語れるはず」

古賀さんがライターとしての座右の銘であり、本書の中で紹介された吉本隆明さんの言葉です。

専門用語や業界用語を使わずに、オカンにいかに分かりやすく伝えられるか…

ぼくら障害福祉の仕事は、障害のことを知らない人に分かりやすく伝える場面も多く、就労支援の場面では障害者雇用の企業担当者にメールすることも多いため、「やさしく書くこと」の大切さを改めて学ぶことができました。

 

本書を読み、「話し言葉から書き言葉へ」へのむずかしさを改めて感じました。
一方で、ちゃんと意識してトレーニングすることで上達することも理解できました。

こうやってブログを書くことも多いですし、書きながらトレーニングを続けていこうと思います。

 


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