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【その2】プロットの作り方

について、お嬢様口調で解説しますわ。

今回の記事は長文なのでお覚悟を。



前回はログラインについて話しましたわ。

今回はプロットについて話しましょう。プロットには二つのストーリーラインがありますわ。

①主人公が目的を果たそうとする話

「魔王を倒すために旅に出る」など。表のストーリーとも言えますわ。

②主人公の間違いが正される話

「魔王など一人で倒せるという思い込みが、仲間は大事だという考えに変わる」など。裏のストーリーとも言えますわ。

目的を追うストーリーだけでは不十分ですわ。それは主人公がただ頑張る話です。感動はありませんわ。頑張った結果主人公の間違いが正されることで、感動は生まれます。

▼出典


表のストーリーついて

表のストーリーは、主人公が目的を果たそうとする話ですわ。目的には元となる欲求があります。そして欲求には種類がある。この種類を把握できれば、主人公の目的を自然に設定できますわ。


欲求の種類

は下記の通りですわ。

①生理的欲求

食欲、性欲、睡眠欲、排泄など、生きる上での根源的な欲求。

②安全の欲求

住居、衣服、秩序など、身を守るための欲求。

③親和の欲求

家族や同僚に好かれたいなど、所属する集団への欲求。

④承認欲求

地位や名声を得たいなど、他者からの評価を望む欲求。

⑤自己実現欲求

目標を達成したいなど、理想の自分を追い求める欲求。

マズローの5大欲求を参照していますわ。この考え方をベースに、主人公の目的を設定しましょう。


欲求の発生順

欲求は①→⑤の順で発生しますわ。逆はありません。例えば無人島に裸で放置された場合、欲求は下記のように変化します。

①生理的欲求

食べ物が欲しい。じゃないと死ぬから。

②安全の欲求

服が欲しい。このままじゃケガするから。

③親和の欲求

仲間が欲しい。一人は寂しいから。

④承認欲求

リーダーになりたい。評価されたいから。

⑤自己実現欲求

島を近代化したい。それが私の夢だから。

食べ物がない状況で、島の将来など考えませんわ。①が満たされてから②へ、②が満たされてから③へと欲求は移りますの。


欲求に共感する人数

欲求の種類に応じて、共感する視聴者の人数は変わりますわ。①生理的欲求に近づくほど共感する人数は増え、⑤自己実現欲求に近づくほど共感する人数は減ります。

例えば「ジョーズ」について。主人公は「サメから逃げたい」という①生理的欲求を持っていますわ。この欲求には全人類が共感します。みんな死にたくありませんもの。

対して「プラダを着た悪魔」について。主人公は「理想のキャリアを築く」という⑤自己実現欲求を持っていますわ。この欲求には共感できない人もいます。仕事に熱心ではない人もいますもの。

これだけ聞くと、①生理的欲求のほうがメリットが大きい気がしますわ。でもそうとは限りません。それは、共感の深度に違いがあるからです。


共感の深度

「ジョーズ」を見て、「まさに自分に向けた映画だ!」と考える人は少ないでしょう。対して「プラダを着た悪魔」はキャリア志向の女性に刺さる。それは、主人公の欲求が現実的だからですわ。欲求は①→⑤と移るにつれ現実感を増していきます。ただし、現実は人によって違うので共感する人数は絞られます。

まとめるとこうなりますわ。主人公の欲求が

①生理的欲求に近いほど多数の視聴者が浅く共感する
⑤自己実現欲求に近いほど少数の視聴者が深く共感する

この法則を念頭に置き、主人公の欲求(目的)を設定しましょう。


カセの活用

主人公がスムーズに目的を達成してはドラマになりませんわ。達成を阻むカセ(障害)を用意しましょう。カセにも種類がありますわ。

①時間のカセ

出勤時間、電車の発車時刻、爆弾解除のタイムリミット、余命

②場所のカセ

密室、袋小路、敵に包囲された場所、デコボコ道、交通渋滞、沈没寸前の船

③状況のカセ

悪天候、戦時下、社内の不和、家庭内の不和、金欠

④約束のカセ

承諾したこと、ルール、遺言、契約書

⑤肉体のカセ

拷問、病気、ケガ、精神病、不眠、顔の美醜

⑥内面のカセ

トラウマ、葛藤、秘密

⑦人間のカセ

敵対者

これらのカセを主人公が目的を追う道中に設定し、ドラマを盛り上げましょう。


カセの注意点

カセの数は多いに越したことはありませんわ。ですが、目的に関係のないカセはNGです。例えば「走れメロス」について。メロスがセリヌンティウスの元へ戻る途中、財布を落としたとしましょう。これは状況のカセ(金欠)ですが、意味はありませんわ。金を失くしてもメロスは走りますもの。メロスはセリヌンティウスの命を救うために走っています。金など眼中にありませんわ。このような、目的に関連しないカセの使用は控えましょう。



裏のストーリーついて

裏のストーリーは主人公の間違いが正される話ですわ。「魔王など一人で倒せる」という思い込みが、「仲間は大事だ」という考えに変わる。このような変化を描きますの。そのためには、主人公に誤った先入観を持たせる必要があります。その先入観を持たせる方法が、トラウマの活用ですわ。


トラウマの活用例

例えば主人公を女性としましょう。彼女は男にストーカーされた経験がトラウマになっています。そしてトラウマが原因で男は全員危険だと思い込むようになりました。ですが、それは間違いですわ。男を恐れる気持ちはわかりますが、男全員が危険と考えるのは誤りです。全男がストーカーではありませんわ。

このように、トラウマは過度な思い込みを生みます。その先入観を主人公の間違いとして活用しましょう。ただし、実際にトラウマを抱えている人への配慮は怠らないように。


トラウマの克服

トラウマを活用するメリットは他にもありますわ。それは、トラウマの克服という話の軸が生まれることです。例えば先の女性が主人公の場合、下記のような展開が作れますわ。

男を恐れる主人公(OL)は異性と距離を置いている。恋愛などもってのほか。そこへある男(職場の後輩)が現れる。彼はぐいぐい距離を詰めてくる。当然主人公は拒絶するが彼は止まらない。主人公をからかったり、時には守ったり。次第に主人公は心を開き始める(間違いが正され始める)。そんな中、新たな事実が判明。彼も女にストーカーされていたのだ。主人公はどうするのか。もし彼を助けるなら、それは間違いが正される瞬間だ。

このように、トラウマを乗り越える話はストーリーの軸になり得ますわ。


トラウマへの反応

トラウマを乗り越える話を作る際は、トラウマへの反応も理解しておきましょう。人間はトラウマに対し、下記の反応を示しますわ。

①忌避

トラウマとなった体験と、同じ状況になるのを避けること。失敗をして人に迷惑をかけた経験がトラウマの場合、責任の重い仕事は避けるようになる。

②自己不信

トラウマが原因で自分を信じられなくなること。失敗をして人に迷惑をかけた経験がトラウマの場合、自分の判断に不安を抱くようになる。

③強迫観念

トラウマが原因で異常なこだわりを持つこと。虐待を受けたことがトラウマの場合、護身や防犯にのめり込むようになる。

④否認

トラウマとなった体験を認めないこと。虐待を受けたことがトラウマの場合、虐待はなかったと思い込むようになる。

▼出典


トラウマは必須ではない

間違った思い込みは、トラウマが原因でなくても構いませんわ。例えば御曹司キャラがいるとしましょう。彼は使用人に囲まれて育ったため、他人を見下しています。これは間違った思い込みですわ。でもその思い込みの原因はトラウマではありません。環境から生じた思い上がりです。このように、間違いを設定する方法はトラウマ以外にもあります。



プロットの型について

二つのストーリーラインが出来たら、ストーリーをプロットの型にはめましょう。ストーリーが食材なら型はレシピです。食材そのままをお客様に提供したらクレームが来ますわ。レシピに従い料理を作りましょう。そのレシピが起承転結ですわ。起承転結は下記のように解釈します。

・起:導入
・承:展開
・転:クライマックス
・結:結末

それぞれのパートに必要な描写がありますわ。


起(導入)

起パートで必要な描写は下記の通りですわ。

①舞台の紹介

世界観、時代設定など。

②キャラの紹介

名前、職業、性格、能力、人間関係など。
例:主人公は俺様勇者でぼっち

③主人公の間違いを示す(裏)

裏のストーリーの始まり。
例:魔王など一人で倒せると思い込んでいる

④日常を壊す事件が起きる

例:村が魔王に襲われる

⑤主人公の目的を示す(表)

表のストーリーの始まり。
例:魔王を倒すと決意する

このパートは、表と裏のストーリーが始まるセクションですわ。話の前提を説明しつつ、主人公の日常を描写します。そしてその後、事件を起こしますの。この事件によって主人公は目的を持ち、承パートへ進みますわ。


承(展開)

承パートで必要な描写は下記の通りですわ。

①目的を追うが上手くいかない(表)

例:魔王に挑むが負ける

②原因は間違った思い込み(裏)

例:一人で勝てると思っていた

③さらに目的から遠のく(表)

例:魔王の手下にも負ける

④間違いに気づき始める(裏)

例:俺一人じゃ勝てないかも…

このパートは、表と裏のストーリーが進展するセクションですわ。ここでカセを使いましょう。カセを使い主人公の邪魔をして、ドラマを盛り上げますの。そして最大のカセが、間違った思い込みです。この思い込みが原因で、主人公は目的を達成できません。


転(クライマックス)

転パートで必要な描写は下記の通りですわ。

①主人公の間違いが正される(裏)

例:村人に助けを求める

②主人公が目的を達成する(表)

例:村人と協力し魔王を退ける

このパートは、表と裏のストーリーが完結するセクションですわ。間違いが正された結果、主人公は目的を達成します。


結(結末)

結パートで必要な描写は下記の通りですわ。

①主人公が日常に戻る

例:村で暮らす主人公

②間違いが正された結果を示す

例:村人と話す主人公(ぼっちを卒業した)

このパートは、表と裏のストーリーの後日談を描くセクションですわ。起
パートとのコントラストを意識しましょう。主人公の日常が起と結で対称的であるほど、変化がわかりやすいですわ。


起承転結の時間配分

起承転結には適切な時間配分がありますわ。下記を目安にしましょう。

起:導入(20%)
承:展開(40%)
転:クライマックス(30%)
結:結末(10%)

特に起パートを作る際は注意が必要ですわ。前提の説明に時間を使いがちですが、説明が長いと視聴者は冷めます。起の分量は全体の20%以下に抑えましょう。


プロット作りのコツ

プロットを作る際は、起承転結の型に加え下記の点を意識しましょう。


感情移入させる

感情移入とは、主人公の勝利を願うことですわ。視聴者が主人公を応援している状態を指します。この状態を作るためにはバトルが必要ですわ。そしてバトルには2パターンあります。

①他人との戦い

例:親を殺された主人公VS殺した犯人
視聴者は主人公に勝ってほしいと願う。

②内面の葛藤

例:拝金主義の主人公VS愛を信じたい主人公
視聴者は愛を信じてほしいと願う。

どちらかのバトル要素をシナリオに入れ込み、感情移入できる物語を作りましょう。


矛盾は覆い隠す

話の流れに矛盾がある場合は、新たな話で覆い隠しましょう。視聴者を次の展開に注目させ、矛盾点を忘れさせますの。もちろんベストは一貫性のある物語を作ることですわ。ですが、そこに固執すべきではありません。つじつま合わせのために冗長なシーンを追加しても、視聴者は喜びませんもの。大多数の視聴者は、整合性より面白さを求めています。矛盾の解消に時間を割くより、新たな展開で視聴者の目を引き、記憶を上書きしましょう。


場面転換は効果的に

場面転換にはコントラストをつけましょう。静かな会話シーンの後に派手なバトルを描いたり。殺害シーンの後に家族の団らんを描いたり。描写にメリハリがあると視聴者は飽きませんわ。


予定調和を防ぐ

プロットに予定調和な流れがないかチェックしましょう。例えば、親を殺された主人公が犯人に復讐に行く展開。予定調和ですわ。いっそ犯人と友達になりましょう。そして親友になってから復讐しますの。大事なのは、一時的にでも視聴者の予想を外すことですわ。犯人に復讐するという目的は、そのままで構いません。一瞬でも「復讐しないのか…?」と視聴者に思わせることが重要です。サプライズを提供し予定調和を防ぎましょう。


プロットを捻る

作ったプロットがしっくりこない際は、下記の観点でプロットを捻りましょう。

①季節を変える

春、夏、秋、冬

②天候を変える

暑い、寒い、晴れ、曇り、雨、雪、雷、霧

③時間を変える

早朝、朝、昼、夕方、夜、深夜

④場所を変える

オフィスで話す→浜辺で話す

⑤脇役を変える

ヤンキーに絡まれる→オカンに絡まれる

⑥反応を変える

殴られて痛がる→殴られて笑う

▼出典


以上!

プロットについての解説を終えますわ。続編はこちらです。

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