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スクラム生誕30周年記念ウェビナー2「日本向け特別対談企画」を視聴しました

Scrum Inc Japanさんのyoutubeチャンネルにて掲題の動画を視聴しました。


Q.システムのメタ認知を向上させるためにスクラムマスターができることとは

メモ

  • 2つの側面がある

  • 1つはツァイガルニク効果と呼ばれるもの。人間の心理は未完成の物事を覚えていてそれを終わらせようとする傾向がある。進化によって組み込まれている

  • スクラムマスターは何が完了して、何が完了していないのか徹底的に可視化すべき。全てのデイリーミーティングはそれを明らかにすることから始まる

  • もう一つは、チームが何をしたいかという段階になったとき。システム全体を進化する生物学的な実体として見ること。システムを進化させるために、最小の作業で最大の効果を生み出すにはそのシステムのどこを触るべきか。システムの一部で何か小さなことをすると、それがシステム全体に波及効果をもたらし、システムが望む方向に向かい、上手くやればアーキテクチャが現れる。これはアジャイル宣言の原則の一つ。

  • アーキテクチャが現れると新しい機能が10倍の速さで出てくるようになり、アーキテクチャが柔軟で適応性があるため10倍優れたものが出てくるようになる。

  • 典型的なやり方はシステムを完成した、変えられないとみなし、そのシステムの上に、バンドエイドのように新しい機能を構築する。しかし、その機能が完全にうまく機能することはない。なぜならその新機能を本当にうまく機能させるためにはシステムの他の部分を変更する必要があるから

感想
ウェビナー1の中でスクラムのシークレットソースとして語られていたチームがシステムをメタ認知すること。そのためにスクラムマスターは何ができるかという質問でした。
スクラムマスターとして可視化すること、システムを生物学的な実体として見ること。の2つが挙げられていました。
どうしても従来のウォーターフォール的なアプローチでは最初に分析して設計をやり切ったとみなしてから進めることが多いと最近考えていました。システムや組織を工業的な製品と考えるというか。
一方でアジャイルな人たちはシステムは組織を生き物と考えている。
そもそもの見方が異なるということを最近考えていました。

Q.カオスの縁で活動しているチームは進化が早いと言っていたが、そのような環境を作るためにスクラムマスターが出来ることとは。日本人は不確実性をあまり好まない

メモ

  • 多くの文化における問題。人々は不確実性を求め、ヒエラルキーを求め、何をすべきかを指示したがる。問題はそれが宇宙の仕組みではないこと

  • スクラムの元となった論文の一つは、クリストファー・ラングトンという人物がロスアラモス研究所で発表したもの。コンピュータ上で人工生命をシミュレートし、コンピュータ上で進化をシミュレートしていた。そこで発見したのは、システムの自由度を増やせばシステムはより速く進化する。つまり速い進化を得るために必要なのはシステムをできるかでカオスの縁に近づけること自由度が高いと不規則な行動になる

  • 日本人が理解しなければならないのは野中教授と会うたびに話しているイノベーションについて。野中教授は10年以上日本のイノベーションのスピードは遅いと言っている。システムを十分に速く進化させていない。イノベーションを起こすにはカオスの縁に向かって進まなければならない

  • スクラムマスターがするべきことはこのことを経営陣に理解してもらう事。断続平衡説(カオスの縁においてチームが急激に進化する)。

  • チームのメンバー全員がシステム全体を出来る限り理解して次に何をすべきかを語らなければならない。全員が語ったのちにチームとして何をすべきかを決定する。スクラムマスターの仕事はそれを促進すること。何をすべきか指示することではなく、実際に人々がメタ分析をしなければならないような枠組みを作る

感想
日本人は確かにそうだが、多くの文化圏において不確実性が好まれない。というのはなるほどと思いました。スクラムマスターとして経営者に理解してもらえるような動きが出来ているかと内省しました。また、チーム全員のメタ分析が進むような動きについても反省することは多いなと思いました。

Q.スクラム初期の経験について教えて欲しい

メモ

  • 経営陣や投資家からクレイジーなアイデアだうまくいくはずがないと言われた。ベル研究所でunixやC言語を開発した主要なチームからチームがどのように機能しているかを学んだ。小さく、自立化した、自己組織化したチームだった

  • 1つのビジネスユニットから始める必要がある。小規模で自律的なクロスファンクショナルなチームを作る必要がある。少人数のチームで実験させてもらった。そこで成功したことからうまくいくかもしれないと全員が思い始めた

  • 誰もうまくいかないと思っていることが日本の問題。経営者のトレーニングのバックグラウンドが全く異なる。劇的な効果を素早く見せないといけない。そのためには本当に優秀なスクラムマスターと優秀なコーチングが必要

感想
ここでもスクラムマスターやコーチの重要性について語られていました。また、経営者の目線でスクラムをやることの意義や目的についても語られていて、普段自分が経営の目線でチームを見れているのかということも考えさせられました。

Q.30年を振り返って何か違うやり方はあり得たか

メモ

  • スクラムの基本は検査と適応。何かうまくいかないことがあれば他のことをした。うまくいかないことは何千回もあった。何千回もそれを修正した

  • ウルフラムという技術者が数学者、物理学者のためのプロダクトを作った。そこでのシミュレーションを通じて非常に単純なルールから複雑な振る舞いが生まれる。スクラムの元になっている人工生命の論文はそべてそれを示している。

  • 物事が進行しているネットワークから始まり、時間の経過とともにそのネットワークは変化し様々な構成に移行する。ネットワークの変化は非常に複雑なのでどんなコンピュータでも予測できない。日本の経営者は何が起こるかわかっていると思っている。それは宇宙の真理に逆らっている。だから失敗が絶えず日本のイノベーションは遅い。基本的な物理学を理解していない。コーチングやトレーニングが必要

感想
宇宙の法則に逆らっているや物理学を理解していないというパンチラインが出てきました。ここでも再度生命の進化について語られていて、システムが進化するために何ができるのかというのが重要なポイントであると理解しました。

Q.バリューが日本企業にとってどのように重要なのか

メモ

  • アジャイルマニフェストは価値観の集合。人々を導くのに役立つ。価値観にそぐわない行動をしている時はすぐにわかるから

  • スクラムの最初の価値基準は「公開」である。なぜ、オープンである必要があるか。システム全体を見る必要があるから

  • システムのメタアナリシスは全ての人がすべてを見ることでしかできない。全ての人が共有しないと何をすべきか見つけられない

  • 人々が話すことを恐れていてはオープンにならない。イノベーションは生まれない。誰もが発言し、誰もがアイデアを持っている必要がある。そして最良のアイデアを引き出し、実行に移す

  • 人々がオープンになる唯一の方法はトヨタ・ウェイの2つの柱の1つである人に対する尊敬を持つことだ。日本人はこれがとても得意だ

  • 新しいことはうまくいかないことも多いのでそれに挑戦する勇気も必要になる

  • 人々が考えていることの半分は間違っている。マネージャーやプロジェクトリーダー、スクラムマスターとして何を間違えているのかを考えないといけない。間違っていた違うことをすべきだとチームに告白できるなら、チームはあなたを信頼してついてくるだろう

  • これこそ日本の経営陣が持つべき勇気であり、大野耐一氏の勇気である

感想
日本人は根回しや建前の文化でスクラムの価値基準と合わないところがあると個人的に思っていましたが、その一方で人々を尊敬する姿勢や大野耐一氏が持っていた勇気などがジェフ・サザーランド博士から語られて、励まされたように感じました。私も勇気を持って行動できるようになりたいです。

最後に

クロエさんとの対談形式だったからということもあり、今まで私が見たジェフサザーランド・博士の講演やインタビューとは異なり、とても自然体でただ熱く語られていたように感じました。スクラムマスターやコーチへの励ましをいただき、また明日から頑張る活力になったと思います。

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