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ポケモン剣盾:音楽のお話~冠の雪原編

 どうも、S(h)inと申します。

 この記事はちょっとしたゲーム音楽好きが『ポケットモンスター ソード・シールド エキスパンションパス』の第二弾「冠の雪原」をプレイした感想を、音楽面に偏らせつつ書いたものです。

1.はじめに

 まず、本記事には以下の要素が含まれます。

・『ポケットモンスター ソード・シールド』のネタバレ要素
・同作品の楽曲タイトルがまだ公表されていないため、正式なものでない

 これらの点を留意していただけますと幸いです。内容は基本既プレイ者向けで、使用画像については私がプレイした際のキャプチャです。

 また、『エキスパンションパス』以前と『鎧の孤島』の感想についてはこちらの記事にまとめてありますのでご参照ください。

2.「冠の雪原」の内容と音楽

 今回、お話しする「冠の雪原」は大まかにいうと「主人公がカンムリせつげんを訪れたら突然おっさんに伝説ポケモン探しのツアーをさせられる」といった感じのサブストーリーになります。

 ただ「伝説を巡る冒険」と一口に言いましても、

・カンムリ雪原に伝わる豊穣の王の調査(バドレックスのイベント)
・巨人の眠る遺跡の探査(レジ系のイベント)
・大きな木に集まる巨鳥の追跡(ガラル三鳥のイベント)

とバリエーションがあります。そのため、それぞれの場面によって毛色の異なった楽曲を聴く事ができました。

 特に本筋となる新しい伝説のポケモン「バドレックス」を中心とした話の音楽はどれも良かったので、まず感想を述べていきます。

3.「バドレックス」を中心とした楽曲たち

「カンムリ雪原」

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 実際に雪原に入って初めに聴き、またこの大地を旅する中で聴き続ける楽曲です。出だしはピアノで雪の儚さを感じさせつつ、すぐに管楽器の音色が入ることで見果てぬ大地を演出するといったイントロの出来がとにかく良いですね。
 その後は、先の「雪らしさを担当するピアノ」と「壮大さを感じさせるその他のオーケストラ楽器たち」がそれぞれ主張しあいながらどちらのモチーフも崩さない塩梅で奏でられている聴き減りのしない良曲です。

「フリーズ村」

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 雪原の大地を少し移動して着く「初めて現地の人間と会える場所」がこの村です。オルゴールとフルートがメインメロディを担当して静かに曲を組み立てることで壮大さのあった雪原との差をしっかり出し、ここは冒険を一休みする場所なんだなと教えてくれます。
 おそらく限界集落であろう村の寂しさと、雪自体の切なさや儚さといったものを両方感じられる曲調となっております。同じ雪降る町「キルクスタウン」と聴き比べてどういった差別化がなされているのか確認するのも面白いですよ。

「バドレックス1」

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 フリーズ村での探索を行っていると出くわす伝説ポケモンのバドレックスとの戦闘の際に流れます。威厳に満ちたメロディでイントロを飾りながら、その後は曲のテンポを速く・遅くと変えながら展開していく面白い曲です。遅いテンポのあたりはプレッシャーをかけていくイメージを、速いテンポの時は神秘性に満ち溢れるイメージを彷彿とさせます。どちらも同じメロディと使っている場面があるのに不思議ですね。
 また、ネットで多少話題になってましたが、フレーズの1つに『ダイヤモンド・パール』の「戦闘!トレーナー」からの引用がある、なんて特徴もあります。北海道モチーフのシンオウ地方と雪国つながりでのファンサービスなんでしょうかね。こういう仕込みは結構好きです。

「カンムリ神殿」

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 バドレックスに関するストーリーを進めていくと行きあたる場所がこの神殿です。ちゃんとイントロに「バドレックス1」のフレーズを使って関連性を示しているのいいですね。
 そもそも、伝説のポケモンの戦闘BGMというものは(一般のプレイヤーなら)聴く機会も時間も多くありません。だからこそ、あらかじめ別の楽曲とのリンクを作っておく手法はいろんなゲームで行われています。ですが、この楽曲についてはもう少し特別な意味があります…

「ブリザポス・レイスポス」

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 バドレックスの愛馬、ブリザポス・レイスポスとの戦闘シーンに流れる楽曲ですが、疾走するイメージのせいか常時早めのテンポとなっています。特に、ほぼ常時「チッチチ チッチチ」と小刻みに音が鳴っている点がかなりの焦燥感を与えるのもポイントです。
 しかしながら、単純に疾走感のみで曲が構成されているわけでなく、音数を減らして低音管楽器によるちょっと不気味なメロディを奏でるパートもあります。個人的には疾走感のある辺りは軽やかなレイスポスの、低音の辺りはどっしりしたブリザポスのイメージなのかなと思っています。

「バドレックス2」

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 ついに愛馬に騎乗して本領を発揮したバドレックスのテーマですが、分かりやすいことに「バドレックス1」と「ブリザポス・レイスポス」が合体した楽曲となっています。ただ、この楽曲の本当にすごいところはゲーム本編側が元となる楽曲をほぼ直前に聴かせている構成にあります。
 進行上、「ブリザポス・レイスポス」はこの戦闘のかなり直前に聴く事になります。ただ、「バドレックス1」は少し前過ぎるイベントで聴かせたのでフレーズを忘れているかも…と考えて、舞台となる「カンムリ神殿」のBGMに同じフレーズを仕込み、元となる楽曲を両方とも予習させています。これによって、人馬一体となったポケモンのBGMも両方の合体であることを明示しているのです。ゲームとの連動がとても見事でまさに「ゲーム音楽」の本領発揮といった構成ですね。

3.冠の雪原を彩ったその他の楽曲

 ここまで、今作の本筋となる楽曲たちについて感想を並べていったわけですが、ここからは少し毛色の異なる個性派の曲もいくつか紹介していきます。

「ピオニー戦」

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 物語の開幕で娘と言い争ってるおじさん、ピオニーと成り行きでバトルする際に流れるBGMです。なんといってもイントロがかっこよく、サックスの渋さを前面に出してダンディなキャラクター性をアピールしてきます。楽器もよくポケモンのBGMに使われているシンセなどを廃しており、レトロっぽい雰囲気を味わえますね。
 途中で少し穏やかになるパートでは裏のピアノが目立って、彼のクールさを象徴していたりと、曲調に意外な変化がもたらされているのもポイントです。そして、ループ直前に「溜めに溜めてから」盛り上がるイントロに戻しているあたりもゲーム音楽だなーと感じられて好きです。

「ガラル三鳥戦」

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 先の楽曲と打って変わって「やかましい」のがこのガラル三鳥との戦闘テーマ。そもそも、各地を逃げ回る三鳥に自転車使って必死で追いつかないとこの戦闘に至れず、そんなところで落ち着いた曲をお出しされても困るので正しい曲作りだと思います。
 じっくり聴いてみると、1ループ約2分の間にさまざまな楽器・フレーズが詰め込まれた楽曲になっていることが分かります。終始ドラムが速いテンポで鳴っているので多少統一感はあれど、曲の全体としてのまとまりは薄めですね。ただ、この曲が流れるのが三鳥全員であることから、それぞれを印象したフレーズなどをつなぎ合わせたのが本曲であることが想像できます。
 イントロから始まるけたたましいパートは一定のドラムのリズムが大地を蹴っているイメージにも合うので「ガラルサンダー」、主旋律をシンセが奪って神秘性を物語るパートが「ガラルフリーザー」、裏の曲にギターが入って悪っぽさを演出しているパートが「ガラルファイアー」かなとか妄想してますが、これは個人の意見ということで…
 また、元の三鳥がいたカントー、つまるところ『ポケモン赤・緑』へのリスペクトをこめてか、最後のあたりにGB音源によるメロディがあるのも心憎い演出ですね。

「レジ系戦」

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 今回新規も追加されたことで話題となったレジ系との戦闘BGMです。これは別に新曲じゃないんですが、実は今作でアレンジが加えられております。と言っても新パートが追加されたとかいうわけではないし、劇的な変化こそありませんが、楽器のチョイスが多少変わっており無機質な怖さが深まっていて良アレンジだと思います。
 ちなみに、この楽曲はアレンジによるバリエーションが多いことで有名で
  1.『ルビー・サファイア』(オリジナル)
  2.『プラチナ』
  3.『ブラック2・ホワイト2』
  4.『オメガルビー・アルファサファイア』
  5.『ソード・シールド』(今回)
と、いろいろありますので聴き比べて楽しめます。是非。

4.本DLCの問題点:復活した楽曲の少なさ

 このように「冠の雪原」はとにかく良曲が多く、いい追加コンテンツだったと思います。

 …そう思いますが、1つ問題があります。それは「過去BGMの復活が少なかったこと」です。

 今作の目玉要素の1つとして、「ダイマックスアドベンチャー」というものがあります。ダイマックスしたポケモンとの連戦の先に過去作の伝説ポケモンが鎮座しており、それを倒せば捕獲することができるモードです。

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 伝説のポケモンが一堂に会することはDLCの発表段階で告知されていたため、この要素で各伝説ポケモン専用BGMが聴けるのだと思っておりました。しかしながら、実際はどの伝説ポケモンに会っても流れるBGMは同じ楽曲(マックスレイドバトル用BGMのアレンジをした新曲)となっています。これによって、過去作で用意されていた固有のBGMは聴く事ができません。

 正直この仕様には大変驚かされました。前作「ウルトラサン・ウルトラムーン」における「ウルトラワープライド」も同様に伝説ポケモンと戦えますがこちらでは各専用BGMが流れる仕様であったため、今作の仕様は全く想定していなかったのです。このため、結局『ソード・シールド』で復活した過去曲は「レジ系戦」のみとなっています。

 これに関しては「よくわからん巣穴で固有のBGM使っても雰囲気が出ないから」という理由があるとは思われます。伝説のポケモンたちの専用BGMはそれぞれに合った場所やストーリーを加味した上で聴くことを前提としているため、ここで流しても無条件に良い!という反応にはならないでしょう。確かにこの巣穴で「戦闘!ホウホウ!」とか流しても多分合いませんし…

 ただ、この問題は楽曲面の話以前に「よくわからん巣穴に伝説のポケモンを集める設定に無理がありすぎないか?」というものが先に立つ気がします。ファンサービスとして過去作の伝説ポケモンを出したい、というものありきで制作したがうまく作中での理屈が付けられず、結果として音楽面でのファンサービスが断念されたといったところだと思います。

 …じゃあ、ちゃんと調査・戦闘するイベントまで用意された「三闘(聖剣士)」のBGMが復活しなかったのは何故なのか。これじゃ優遇されてるのか冷遇されてるのかわからないですよ?

5.まとめ

 以上が「冠の雪原」における音楽の感想等になります。最後のあたりに語った問題点に関しては本当に残念でした。確かにBGMが場面に合わないのは想像できるのですが、今までその楽曲を聴いてきた人達にとっては曲が聴けるだけでも十分嬉しいと思うのですが。

 それとは別に、前半でたくさん感想を挙げたように新曲はどれも良曲でしたのでその点の評価はかなり高いです。「過去曲が復活しない」という文句自体贅沢なものですので、純粋に収録楽曲を評価すれば「冠の雪原」がハイレベルなものであったことは疑いようはないと思います。

 これで、エキスパンションパスの楽曲も聴き切りましたし、また本編の楽曲を聴きなおしてみるのもいいかな、と思ったところで今回の記事は終了となります。

 ここまで読んでいただきありがとうございました。またの機会にお会いしましょう!

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