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神様、何がしたかったんですか?

某日、待ち合わせ時刻の30分前。
彼に「もう向かってる?」と確認のLINEを送った。
数分後、彼からは「え、ほんまごめん。明日だと思っていた」と返信があった。
仕方がない。仕方がないのだ。
もう間もなく待ち合わせの駅へ到着する地下鉄の車窓には、いつもの1.5倍可愛い自分が映っている。
今朝はいつもより2時間も早く起き、シャワーを浴びながらムダ毛を剃りまくった。
試供品でもらったSABONのシャワーオイルで体をコーティングし、おしりは「恋するおしり(ヒップケアソープ)」で念入りに洗った。
一緒に入場するはずだったイベントのチケットを抽選で勝ち取り、コロナに2ヶ月連続で罹患した為に消滅した有給を無理やり前借りして作った休みだった。
仕方がない。仕方がないのか?

2日前、彼には「○日の予定は大丈夫か」とあらかじめ確認し、彼も「○日は大丈夫」だと返信をくれていた。
この頃からなんとなく嫌な予感はしていた。

いつかバチが当たるのではないかと。

彼は既婚者だ。
私は彼の手駒の一人に過ぎず、彼には奥さんがいる。
彼との出会いは2年前に遡る。
共通の趣味のイベントで出会い、意気投合、食事に行くようになった。
彼はしきりに「今は彼女を作る気は無い」と繰り返しながら、私を巧みに口説き落とした。
その後、関係を清算したくなったのか、別のお気に入りができたのか、彼からの連絡は途絶え、私も追いかけることは無かった為に自然消滅してしまった。

1年後、そんな彼を見つけたのは、なんとYouTubeだった。
あれほど遊びに行きたいと渇望していた彼の自宅は、ルームツアーと称して世界中に公開されていたし、家族の顔までもが公開されていた。YouTubeを皮切りに、彼の他のSNSも見つかり、画面の中の彼の薬指には指輪が光っていた。

彼に騙されていたショックよりも、まずは驚きが降ってきた。
そしてその後、私の心を巣食ったのは不快感と怒り、自分自身への嫌悪だった。
情けなかった。

神の悪戯か、そんな彼から1年越しにひょっこり連絡が来た。
これは復讐の好機だと思った。その反面、もう二度と関わるべきではないのではないかと葛藤を重ねながら、恐る恐るLINEを返してしまった。
そこからはトントン拍子に話が進み、彼との再会の日が決まった。

相談していた友人や母らは口を揃えて「やめておけ」と言ったが、もう再会が決まった以上は一言「奥さんと幸せにね(嫌味)」とサラリと言ってやらねば気が済まなくなってきた。

「嫌な事が続き、お気に入りには愛想をつかされ、得意のマッチングアプリでも収穫は無い。
そうだ、昔の女に連絡をしよう。
都合のいい女がいたよなぁ…。久しぶり、と…」
恐らくはこんな心境でLINEをしてきた彼に、トドメとまではいかずとも、まち針くらいは刺してやりたい。
そして冒頭へ戻る。

彼は来なかった。
アホなのか私は。
とりあえず有給とお金返してもらってもいいですか?
神様がいるならお伺いしたいんですが、
何がしたかったんですか?

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