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コロナ禍以後の住宅

5月末に住宅が完成予定です。
設計を開始したのが2021年の夏頃ですので、コロナ禍を体験してから設計を開始した初めての住宅となります。

コロナ禍によって住宅はどう変わったのか?

このどう変わったか?という話は・・・
住宅に仕事が入って来ることで、テレワークスペースが必要になる、帰宅後に手を洗う場所が玄関付近にあると良い、といった間取りや設備の話しではないです。

暮らし方、生き方と言っても良いかもしれませんが・・・そのような事に住宅は価値を提供できるのか?(ちょっと大きな話ですが)
この住宅の設計を通じて考えるキッカケとなりました。

Sデザインファームでは

「日常」に「心おどる空間」を、

というコンセプトで設計をしています。心おどるとは?どういう事か?
これは、ワクワクしたり、楽しかったり、驚いたり、ドキドキしたり
など「頭で考える事」でなく、「心が勝手に反応する」ような状態を例えています。

誤解を恐れずに言うと、コロナ禍において住宅は
安らぎの場でもありながら、息苦しさもある場でした。どんなに良い空間でも、あれだけの期間を閉じ込められると辛いのかもしれません。便利にオシャレに作られてて、使いやすい家事動線、美味しいコーヒーを入れる機器があってもでした。

その頃はまだ自身の設計したバスキッチンの家に住んでいましたが、あの頃の救いのはベランダ空間でした。幅6m、奥行き1mと小さな空間でしたが、テーブルを作り、スダレで日射を防ぎ、使っていなかった照明で即席のペンダント照明を作ったのですが、子供たちもそこで食べる夕食が楽しかったようで翌朝もその次の日もベランダで食事をしていました。

なぜ、ここは楽しいのだろう?

まず考えられるのが・・・元々が食事を想定していない空間だからだと思います。住宅には部屋名があり、そこで行われる活動を暗黙の内に指示されています(ちょっと考えると怖いですが)「ここでくつろぎなさい、ここで料理をしなさい」など。そのようにすることで利便性や快適性を高めていたのだと思います。でもあのベランダはそのような用途で使われることを想定していなったので、なにか子供が秘密基地を作るようなワクワクドキドキ感があったのだと思います。

次に考えられるのは・・・スダレを垂らした事による囲われ感と照明です。外ではありますが「何か室内を感じさせる」ものを散りばめた事で「外なのに落ち着く」という事が生まれました。キャンプと似ているかもしれません。きっと室内的なものがあるから室内と錯覚し、無意識の内に安心感を感じていたのだと思います。

このドキドキや心に作用するような場がキレイでオシャレで家事動線も完ぺきなのに、日常である家に不足しているのだと思います。
いま僕らが設計している住宅では、クライアントも当然異なりますし
敷地も違います。でもそれぞれの家族の日常となる住宅には
「心おどる空間」を埋め込もうとしています。

想像通りの効果を発揮して欲しいですし、それを上回る効果や思いもかけない効果が生まれる事も期待しています。そのような事が、そこで過ごす人の日常や人生が更に満たされたものに繋がる・・・

住宅は満ち足りた人生を送るための器

と考えています。



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