「緑」


 「緑」と「縁」をよく間違える。形がよく似ているので、近頃はもっぱらデジタルでしか綴らない私にはどうにも混乱してしまうのだ。

ただ私にとってこの二文字は雰囲気も近しいように感じる。自然を連想させる「緑」と人や物事を繋ぐ「縁」は、どちらも人間の手を加えられない、それ故に優しさと強さを持つようなそんなイメージだ。


いわずもがなであるが「新緑」とは晩春から初夏にかけての若葉の艶やかな緑を指す言葉だ。すっかり花を散らせた葉桜などが浮かぶ。

春というのは出会いと別れの季節である。三月には卒業、四月には入学、というのがわかりやすいが、子供にとってはクラス替えや担任が変わることだって十分に大きな変化だ。
その意味で、子供の頃の春はいまよりももっと特別な季節であった。特に葉桜の頃は、新しい出会いにようやく慣れる頃だったような気がする。


この短歌では、そんな春の特別なざわつきをちょっとした言葉遊びと共に表現しようと試みた。

漢字テストのような形式は学校を連想させ、「はなまる」という言葉は「花」で春らしさを演出しつつ、子供の間違いに詩情を見出す大人の眼差しを取り入れたつもりである。