コーヒー豆は必ず60粒。
コーヒーが大好きで、行きつけの居酒屋では4時間ほど入り浸って葉巻を吹かしながら新聞を読み、たまに居合わせた友人とはチェスを楽しんだ愉快な男がいた。
そんな彼の大好きなコーヒーに関する逸話がある。
一杯60粒。
しかし測った際に数え間違えてしまった時は、
自らもう一度、一粒ずつ数えていた。
お客さんが来ていた際は特に注意を払って数えた。
-Anton Schindler, Biographie von Ludwig van Beethoven, 1840
こだわりが強い。
几帳面というよりも、若干狂気を覚えるほど細かい。
コーヒー豆くらいいいじゃないか...と投げかけたくなる。
そして、本人も自覚があるほど社交的な人間だったのだ。(ハイリゲンシュタットの遺書でも言及されている)
特に若い頃は人と話すことが好きで、お洒落にも気を遣っていた。
のちに耳が聞こえなくなってからは人とのコミュニケーションが取り辛くなったことで、身嗜みも気にしなくなった。
部屋も散らかし放題だった。
しかし、自分が楽譜を書く手、ピアノを弾く手は常に清潔にしていた。
一日に何度も手を洗ったらしい。
憎めない感がハンパない。
正直言ってとても不器用だが、自分のこだわりは決して曲げない。
自らが指揮した初演で、オーケストラと合唱の演奏に納得いかず、途中で止めて
もう一度最初から演奏したほどだ。(合唱幻想曲 作品80の初演にて)
そしてびっくりするほどにロマンチストだ。
彼の人となりに関しては書ききれないが、とにかく自分の作品にも強いこだわりを持っていた。
そりゃ作曲家なのだからこだわりを持って当然だが、それでもかなり強い方だ。
師匠のハイドンに対しても、自作のピアノ三重奏曲を気に入ってもらえず大反抗した。
(ちなみに言うと、彼が居酒屋で時折楽しんでいたチェスはハイドンから教わったものだ。*1)
今日はルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンの249歳の誕生日。
生誕250周年である来年は、きっとベートーヴェンの曲が世界で溢れるだろう。
楽しみで仕方ない。
*1: Jan Cayers, Beethoven Der einsame Revolutionär, C.H.Beck, 2012
Twitter: https://twitter.com/s_5100
↑ ベートーヴェンの生家(ドイツ・ボン)のレリーフ。
12月17日生まれとなっているが、この日は洗礼を受けた日。
生まれた日はその前の日である16日というのが定説になっている。