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【しくじり企業】米ブロックバスター:レンタルビデオチェーン、ネットフリックスに敗れしもの

概要
「レンタルビデオは巻き戻してから返す」と聞いてピンとくるのはもはやおじさんだろうか。そんな時代に全米のレンタルビデオ事業を席巻していたのがブロックバスター。1986年の上場以来中小店舗を次々買収し、海外展開も行い、盤石の体制を築いた。しかし1997年創業のネットフリックスにその座を奪われ、2010年に破産。現在オレゴン州に1店舗残すのみとなった。

1. ブロックバスターの歴史

従来レンタルビデオ事業は、地場中小企業によるローカル色の強いビジネスであった。そうした中1985年創業のブロックバスターは1986年に上場。資本力と合理化された運営体制を武器に各地の中小店を買収。全盛期には全米で4,500の店舗を構え(さらに海外も同じく4,500店)、大量仕入れによるコスト低減と大量のラインナップを実現。「仕事帰りにビデオを借りて、家でリラックス」というライフスタイルと共にブロックバスターは未来永劫盤石かと思われたが、1997年ひっそりと操業したネットフリックスに押し出され、2010年破産申請。

2. 失敗原因①オンライン以降への遅れ


1997年DVDレンタルサービス事業会社、ネットフリックスが創業。当時はまだDVDプレーヤーは一般的ではなく、ブロックバスターはVHSビデオの店舗レンタルを継続していた。しかし2001年頃から安価なDVDプレーヤーが販売され始め、それと共にネットフリックスは成長。2003年にようやくブロックバスターもVHSからDVDへの転換し、2005年にはオンラインレンタルを開始したが時既に遅し。2007年にはついにネットフリックスがストリーミングを開始し、完全に息の根を止めた。ネットフリックスやアマゾンプライムに慣れ切った現代人はすっかり忘れているが「家から出なくても映画が見られる」は当時衝撃を以て受け止められたのだった。

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3. 失敗原因②顧客とのコミュニケーション(サブスクと延滞金)

当時ブロックバスターのレンタル料金は「1本あたり2~5ドル」と借りる本数に応じた金額であり、それが当時の常識であった。しかしネットフリックスはそれと真逆の料金体制、現代では当たり前だが、サブスク(定額)を採用。実はブロックバスターの売上の内、15%を延滞金が占める。返却忘れて延滞金を取られた、と苦い心当たりがある読者もあるだろう。アメリカでも同じで、この延滞金は非常に評判が悪い。そこにサブスクモデルとセットでネットフリックスが風穴を開けた。

さらにブロックバスターには「顧客とのコミュニケーション不足」という致命的な欠点があった。実店舗のスペースに限りがあるブロックバスターは新作ラインナップを重視するあまり、旧作を過小評価(誰でもふと昔見た古い映画を見返したくなることはあるだろう)。顧客のニーズを把握せず満足は低下し、元々延滞料への不満が積もっているところにネットフリックスが登場し、止めを刺されたのであった。

ちなみに、2007年延滞料を廃止した際のCMはこちら。恐らく経営陣は清水から飛び降りる気持ちだったろう(売上の15%を失うのだ)。「its over(終わったんだ)」と音楽が流れるCMで、コメント欄に「Now it's REALLY over(本当に終わったね)」とあるのはナイスジョーク。

4. まとめ:先行き不透明な時代だからこそコンセプトが大事

私たちはこの数年で、盤石と認識していたものがあっという間になくなる場面に直面した(東日本大震災、コロナ等々)。そんな時代だからこそ、コンセプトが大事である。ネットフリックスのHPを見ると「Netflixは、世界中を楽しませたいと考えています。あらゆる好みを持つ人、あらゆる地域に住む人に、私たちは最高のテレビ番組、映画、ドキュメンタリーをお届けします」とある。もしブロックバスターに「そもそも自分たちのコンセプトは何か、顧客にどんな喜びを届けたいのか」という軸がはっきりあれば、オンラインの脅威に対して素早く対応できたかもしれない。

ブロックバスターから我々が学ぶべきことは、
 ・コンセプト=結局誰に何を売っているのか?
 ・そのコンセプトを実現する最良の手段は何か?
を常に自分に問いただすことの重要性ではないだろうか。

最後になりますが、取り上げてほしい企業があればお気軽にコメント欄でリクエストお願いします。

参考文献



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