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ゲーム時間がより長いと、二年後、より知能が向上する。遺伝要因や社会経済要因を考慮した縦断研究。

 デジタルメディアの子どもへの影響は、ゲーム依存疑い率の過剰な報告等により、この国では負であるように語られやすい。しかしデジタルメディアの認知的影響については、プラスに働くという研究もあれば、マイナスとする研究もあり、不明な点が多い。
 Bruno Sauceとカロリンスカ研究所のTorkel Klingbergらは、このばらつきは遺伝的影響や社会経済状況(SES)を考慮に入れていないこと、および縦断的研究が乏しいことによると考えた。そこでかれらは認知機能に影響を及ぼす遺伝子データとSESを用いた研究を行うことで、これまで考慮されてこなかった遺伝的要因や社会経済状況の影響を補正でき、ディジタルメディアと認知機能の因果関係を明らかにできると考えた。彼らは、ABCDデータセットに含まれる米国の9855人の子どもを対象に、ベースライン(9~10歳)および2年後の知能を測定し、認知における遺伝的差異と社会経済的状況(SES)の交絡効果をコントロールしながら、「デジタルメディアを受動的に視聴する時間(視聴時間)」「SNSなどで社会的につながっている時間(社交時間)」「ゲームをしている時間(ゲーム時間)」それぞれが子どもの知能に及ぼす影響を推定した。
 ベースラインでは、視聴時間(r = - 0.12)と社交時間(r = - 0.10)は知能と負の相関があり、ゲーム時間は相関がなかった。遺伝的要因と社会経済状況のよさはスクリーンタイムを減らし、また、認知機能の高いこととかかわっていた。つまり、横断調査などによって示されるスクリーンタイムと認知機能の関連は、多く、遺伝的要因や社会経済状況によって説明される。

 一方、2年後、ゲーム時間が長いことは知能を高めるという因果的な影響が認められた(標準化β=+0.17)。しかし、社交時間は影響を与えなかった。また、視聴時間も知能を高めることにかかわった(標準化β=+0.12)。しかし、視聴時間のかかわりは、事後分析では、親の教育(SESの代わりに)でコントロールすると有意ではなかった。つまり、スクリーンタイムの内ゲーム時間は認知機能を高めるが、他は影響がなかった。

 まとめると、スクリーンタイムの長いことが認知機能に与える負の影響は、おおむね社会経済状況や遺伝的な問題で説明され、ゲーム時間そのものはむしろ知能を高める。

Bruno Sauce, Magnus Liebherr, Nicholas Judd & Torkel Klingberg, The impact of digital media on children’s intelligence while controlling for genetic differences in cognition and socioeconomic background, Scientific Reports volume 12, Article number: 7720 (2022)

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