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【Oscars】多様性の波はどこまで?第94回アカデミー賞主要6部門ノミネート徹底予想‼︎

今年から作品賞候補が10作品に固定された、
米アカデミー賞。

"その年、最も優れた映画を決める賞"だった映画の祭典『アカデミー賞』は、ここ数年でその姿が大きく変わりつつある。

『Oscars So White』での白人"優遇"問題。
『#MeToo #TimesUp』での相次いだ性犯罪告発。

再来年の第96回から適用される、
『❶主要な出演者に黒人やアジア人などの人種/民族的マイノリティを少なくとも1人、
❷主役以外の出演者と製作スタッフ、配給会社やマーケティングの幹部などに女性/LGBTQ+/障がい者/人種・民族的マイノリティを一定数起用、
❸作品のテーマが女性/LGBTQ+/障がい者/人種・民族的マイノリティを含む』
などといった複数の条件をクリアしていないと、作品賞候補になれないという改変...。

アカデミー賞は、その時に特に騒がれた社会問題に対していち早く反応し、その問題の当事者らの声を取り上げ、マイノリティや立場の弱い人間の側に立ち、彼らの地位を向上させようと務めてきた。
そしてそれが実際に結果にも結び付くような変更を積極的に加えていくようになった。

例えば、アカデミー賞の長い歴史において、【女性か非白人の俳優が主人公の映画】が作品賞を受賞すること自体数える程度だったのが、
近年、性差別問題が顕著に騒がれるようになったことで、直近5回のうち4回【女性か非白人の俳優が主人公の映画】が作品賞を受賞するという結果に。

他にも、それまで第87回、第88回と2年連続で俳優部門にノミネートされたのが20人全員白人だったことで、当時のアカデミー賞会長が抜本的な見直しを行うとコメントした直後、
次の第89回では俳優部門にノミネートされた20人中7人が黒人俳優、作品賞も当時受賞最有力と言われた『ラ・ラ・ランド』を下して、監督・出演俳優が全員黒人&同性愛描写を含んだ『ムーンライト』がサプライズ受賞を果たした。

こういった面から、世界的に見ても非常に特殊な映画賞と言えるアカデミー賞だが、今年はその流れから大きく逸脱しており、現時点で作品賞のノミネートが特に有力視されている作品のほとんどの主人公が白人の俳優だ。

その中でも、アカデミー賞作品賞に特に直結しやすい重要前哨戦である、アメリカ製作者組合賞、ブロードキャスト映画批評家協会賞、ゴールデングローブ賞。これらの作品賞全てにノミネートされた以下の9作品は、アカデミー賞でもまずノミネートは外さないはず。

「ベルファスト」
「コーダ あいのうた」
「ドント・ルック・アップ」
「DUNE/デューン 砂の惑星」
「ドリームプラン」
「リコリス・ピザ」
「パワー・オブ・ザ・ドッグ」
「tick,tick…BOOM!:チック、チック、ブーン!」
「ウエスト・サイド・ストーリー」

だが、この9作品の中で【非白人俳優が主人公】の映画はウィル・スミス主演の『ドリームプラン』のみ。

このままでは「白すぎるオスカー」問題が再燃してしまい、多様性尊重を主張するアカデミー賞の信念と反している、と批判されるのではないか…。
そう恐れた会員たちに、最後の1枠には【非白人俳優が主人公】の作品、あるいは【女性が主人公の映画】を入れようという思惑が働き、思わぬ伏兵が浮上する可能性がある。

現在、最後の1枠へのノミネートの可能性を残しているのは、

ニコール・キッドマン主演
『愛すべき夫妻の秘密』。

レディー・ガガ主演
『ハウス・オブ・グッチ』。

主人公も監督も女性の
『ロスト・ドーター』。

そして日本人・西島秀俊が主演の
『ドライブ・マイ・カー』。

今まで通りの"ハリウッドの内輪ネタ"が好きなアカデミー賞なら、『愛すべき夫妻の秘密』が来る。
1950年代に全米で放映されたテレビドラマ『アイ・ラブ・ルーシー』の内幕を描いた作品で、主演のニコール・キッドマンとハビエル・バルデムはそれぞれ俳優部門でのノミネートの可能性が高い。無難に予想するならここかもしれない。

スタイリッシュな予告編の登場でバズッた瞬間が恐らくピークで、作りすぎたキャラクターのビジュアルや過剰な演出に今や否定的意見の方が目立ってきた『ハウス・オブ・グッチ』の逆転は恐らく厳しい。

『ロスト・ドーター』の主演はおそらく今一番オスカーに愛されている女優オリヴィア・コールマン、
監督は女優としても活躍するマギー・ギレンホール。
第90回授賞式でプレゼンターとして登壇したエマ・ストーンが放った「グレタ・ガーウィグとその他の男性の監督の方達」の発言を支持する人が多ければ、監督が女性という大きな強みがあるの線も無くはなさそう。

そして『ドライブ・マイ・カー』は、NY、ボストン、LA、全米映画批評家協会賞といった、主要な“批評家賞”で作品賞4冠を達成しているにも関わらず、先に挙げた、アカデミー賞に直結しやすい重要な前哨戦の方では一切顔を見せていないのが痛い。

批評家にどれだけ受け入れられようとも、アカデミー賞で投票資格を持つ会員の内訳は、ほとんどが俳優・監督・プロデューサーなどの、“映画に直接携わる人間”。
そういった人々が所属し票を投じるそれぞれの組合の前哨戦【アメリカ俳優組合賞、アメリカ脚本家組合賞、アメリカ監督組合賞など】においてスルーされているのは、もはや致命的ともいえる。

国際長編映画賞の受賞はほぼ確実と見られているが、『パラサイト』の時のような「作品賞までも…」といった勢いも感じられない。
"多様性尊重の波"に乗るなら、作品賞の最後の1枠は『ドライブ・マイ・カー』で埋まるはず。しかし、前哨戦での評価がやはり心許ない。

そもそも『ドライブ・マイ・カー』は作品賞より、監督賞と脚色賞のノミネートの方が可能性がある。毎年必ず巻き起こるサプライズがあるとするなら、西島秀俊氏の主演男優賞。
アカデミー賞は外国語の演技でのノミネートがそもそも少ないが、"多様性尊重の波"が予想以上に大きいなら…。

そして、もし『ドライブ・マイ・カー』が作品賞にノミネートされるなら、純粋な日本映画としては史上初の快挙となる。

果たして日本映画の歴史が動くのか?

2/8(火)のノミネーション発表を待ちましょう。


-第94回アカデミー賞 主要6部門 ノミネート予想-


【作品賞】
愛すべき夫妻の秘密
ベルファスト
コーダ あいのうた
ドント・ルック・アップ
DUNE/デューン 砂の惑星
ドリームプラン
リコリス・ピザ
パワー・オブ・ザ・ドッグ
tick, tick...BOOM!:チック、チック…ブーン!
ウエスト・サイド・ストーリー


【監督賞】
ケネス・ブラナー
『ベルファスト』
濱口竜介
『ドライブ・マイ・カー』
ドゥニ・ヴィルヌーヴ
『DUNE/デューン 砂の惑星』
ポール・トーマス・アンダーソン
『リコリス・ピザ』
ジェーン・カンピオン
『パワー・オブ・ザ・ドッグ』


【主演男優賞】
ハビエル・バルデム
『愛すべき夫妻の秘密』
ベネディクト・カンバーバッチ
『パワー・オブ・ザ・ドッグ』
アンドリュー・ガーフィールド
『tick, tick...BOOM!:チック、チック…ブーン!』
ウィル・スミス
『ドリームプラン』
デンゼル・ワシントン
『マクベス』


【主演女優賞】
ジェシカ・チャスティン
『タミー・フェイの瞳』
オリヴィア・コールマン
『ロスト・ドーター』
レディー・ガガ
『ハウス・オブ・グッチ』
アラナ・ハイム
『リコリス・ピザ』
ニコール・キッドマン
『愛すべき夫妻の秘密』


【助演男優賞】
ベン・アフレック
『僕を育ててくれたテンダー・バー』
シアラン・ハインズ
『ベルファスト』
トロイ・コッツァー
『コーダ あいのうた』
ジャレッド・レト
『ハウス・オブ・グッチ』
コディ・スミット=マクフィー
『パワー・オブ・ザ・ドッグ』


【助演女優賞】
カトリーナ・バルフ
『ベルファスト』
アリアナ・デボーズ
『ウエスト・サイド・ストーリー』
キルスティン・ダンスト
『パワー・オブ・ザ・ドッグ』
アーンジャニュー・エリス
『ドリームプラン』
ルース・ネッガ
『PASSING -白い黒人-』

※『ドライブ・マイ・カー』は監督賞・脚色賞・国際長編映画賞の3部門でノミネートされると予想しました。

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