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【映画】どん底一家のいざこざが多元宇宙を駆け巡る感動物語に。『エブエブ』レビュー

箸が転ぶだけで笑うことはあっても、まさか岩が転がるだけで泣くことになるなんて。

【ディルドでぶん殴る、お尻の穴に長い棒を挿れる、おばあちゃんがお漏らし、鼻くそ食べる、嘔吐、フルチンの男が下半身丸出しで闘う...。
下ネタだらけのこんなカオスの果てに、シンプルな感動物語が待っている。バカバカしくも壮大な多元宇宙の闘いの原点は、どの家庭にもきっとある、些細な親子喧嘩だったー。】

第95回アカデミー賞で作品賞/監督賞、ミシェル・ヨーがアジア人初の主演女優賞、キー・ホイ・クァンが助演男優賞、ジェイミー・リー・カーティスが助演女優賞を受賞。

他にも脚本賞/編集賞と主要部門を総なめにしたこの『エブエブ』は、色んな人のレビューを見る限り、ウケる人にはとことんウケて、ハマらない人にはとことんハマらないような作品のようだけど、確かにどっち側の意見も理解できる。

やりたいこと伝えたいことは分かるし、ストーリーの全体像も完璧。終盤は『こんなことをこんな演出でやってほしかった』怒涛の展開が待っていて、終始興奮状態に。もう最高だった。

だからこそ前半の観客置いてけぼりの流れがキツかった。いきなり豹変してワケの分からないことを言いまくる夫(ウェイモンド)や急に異世界に飛ばされることに対して、妻(エヴリン)のツッコミが弱いというか、あまり戸惑いの見えない彼女の立ち位置が、初見だと『既に何度も経験してるからうんざり』なのか『観客と同じで何が起きてるのか分かってない』なのか、このあたりが微妙に分かりづらくて(後々ちゃんと分かるとはいえ)、中途半端に物語に乗れきれてない妻目線で見ると微妙に感覚のズレがあって、序盤は物語にも登場人物の誰にも感情移入できなくて、この話をどう見たら良いのか戸惑ったまま観ちゃってました。(俺の読解力が低いだけ...?)

何が何だか理解できてないエヴリン側、ひいては観客側の目線を、もっと大事にして欲しかったように思います。
意味不な現象に対する説明も複雑すぎて(あえて?)、何度ついていけずに眠くなったことか。

振り切った下ネタなんかはむしろ全然アリで、それより露骨に面白くない、何を言っているのか理解できないシーンが多々あって、この辺はマジで観るのがしんどかった。

ある程度仕組みが分かってからの中盤以降は怒涛の面白さなだけに、必要とは思えないシーン・セリフをもう少し無くして、もう少しシンプルな造りにしてもらいたかった...。

面白いところはとことん面白く、退屈なところはひたすら退屈な本作。評価に迷いましたが、間をとってこのくらい。ストーリーがマジで良かっただけに、もっと単純明快な設定のシンプルな造りなら、評価は爆上げでした。

その他。(※ネタバレあります)

ヘンテコな世界観の中、家族一丸となって闘う家族愛の物語で、基本的に下品で下ネタが多いときたら『クレヨンしんちゃん』と結構被る。エブエブをクレヨンしんちゃんで出来たり...しない?

あの最後の"優しい"闘い、画期的だし面白いしめっちゃ良かったなぁ。

そして、岩が岩を救う。この一瞬のシーンで涙腺崩壊したのは俺だけじゃないはず。いかにも泣かせにくる作った表情より、こんなに素朴でこんなにシンプルな画の方が、断然グッとくる。

この映画の結末に関しては、ちょっとだけ疑問が残った。
家族が一緒にいることだけが家族愛だけとは限らないので、『ベーグルの中に行くこと=悪』じゃなく、親子が和解した上で、その上で娘が独り立ちして、ベーグルそのものが崩壊する的な流れの方が好きだったかな?

個人的に、劇中、露骨に眠くなった映画史上最高点です。(3.6 / 5.0点)

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