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1ミリの後悔もない、はずがない

1ミリの後悔もない、はずがない / 一木けい

「うしなった人間に対して1ミリの後悔もないということが、ありえるだろうか」

 なんとなく手に取った本。
 前々から題名が気にはなっていた。パンチ力あるなぁ、と。

思った以上に心に響く本だった。
話の中心にいるのはどの話でも由井と桐原。
恵まれない家庭環境の由井、そこから逃げ出すことのできない少女時代。全体的にもう、自分ではどうにもできない感じ。
身内にはもちろんろくな大人がいないし、担任も上っ面だけだし、同情せざるおえないような設定。

そんな愛に飢えた由井を救ったのは桐原だった。貧乏で小さい由井とは対照的な、恵まれた家庭環境で大きい桐原。

桐原と出会ってはじめて、自分は生まれてよかったのだと思えた。
彼を好きになると同時に、すこしだけ自分を好きになれた。
桐原がわたしを大事にしてくれたから。
あの日々があったから、その後にどんなに人に言えないような絶望があっても、わたしは生きてこれたのだと思う。

中学生の2人の恋愛を「未熟だ」「若いときってそうゆうことあるよね」というのは簡単だ。

ただ、例え中学生だろうと、まっすぐに人を思う気持ちが、ただ愛しいと思う気持ちが、その人を助けることがある。

その事実が、なぜか嬉しかった。

結局、2人は好き同士のまま、離れてしまう。
別れてしまうのではなく、大人の事情で離されてしまう。
もし、この2人が離されずにいなかったら、この2人はずっと一緒にいたのだろうか、それとも、多くのカップルのように別れを選ぶのだろうか。


多くの恋人は、別れる。
別れた後に、「1ミリの後悔もない」と言えるものはいくつあるのだろうか。
もっと自分の気持ちを伝えられたら、感謝を愛を与えられていたら―――。

わたしは少なくともそんな別れは一つもない。
でも、その人との日々が、自分の中の支えになっていると信じたい。



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