読書記録

①殺人出産 村田沙耶香
気持ちが悪かった。読んでいる間ずっと気持ちが悪くて、話の内容で頭の中がいっぱいだった(とくに表題作)。倫理や常識、そういったものを捨てて、内容だけ比較するとしたら、殺人も出産も同じくらいグロテスクなものなのかもしれない。短編はいずれも現在の常識を覆す内容で「もしこうだったら」という着眼点は面白い。

②肩ごしの恋人 唯川恵
よくわからない人たちが色々な過程を経てよくわからない終着点に辿り着く話。自分が何か共感できないとしても、フィクションの他人の人生を追体験できる読書という行為はそれだけで面白いなと思う。女性2人のいびつな友情のようなもの、こういった関係性はときどきフィクションで見かけるけれど、実際にはここまで続くことはないような気もする。

③あのこは貴族 山内マリコ
眼を閉じると思い出す、階段の上から見下ろした庭いっぱいに広がる、紺一色の母親たち。きっとあの頃の幼児が大きくなって、今度は紺色の衣服を身に纏って同じ場所にいて、そうやって一部はずっと再生産されてゆくんだろうなと思う。都会にはいくつもそういうところがあって、それらはとても閉鎖的だ。
たまたま故郷が東京だから認識できなかったけれど、自分の中に、生まれ故郷に束縛されている内向的な部分があるんだなと初めて気づかされた。設定が早稲田や他の学校ではなく慶應なのが上手いなと思う。個人的には最後の青木との和解のシーンは不要な気がしたが、ここまで描く方が丁寧なのだろうな。

④ここは退屈迎えに来て 山内マリコ
全体的にふーんと思って読んだ。以前、地方出身の方に聞いた話(高校生のとき、田舎でやることがなさ過ぎて、平和にヤンキーと立ち話したり、ラジオ聞いたりして、一生このままなのかなと思いながら休日寝そべっていたという話)を思い出した。地方出身の方の感想を聞きたいものである。今はネットやSNSの発達でここまでではないのかもしれないが、学生は行動範囲が狭くてアクセスが限られる以上、そして都会に進学しても何らかの事情で帰ってくる人がいる以上、きっとこういったことは多かれ少なかれあるのだろう。都会でも都会なりの閉塞感はあると思うけれど、「もし地方に生まれていたら(何もかも上手くいったに違いない)」と自分の出身地を恨むことはあまりないだろうから、それは大きく異なる点かもしれない。


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