ドローンの開発(1)設計理論①
私は、これまでヘリ型やマルチコプター など様々なドローンを設計・開発・運用してきました。そんな経験を踏まえ、どのように設計したらいいのか、製作方法は?操縦方法は?など、ドローンを作る上での疑問を解決するような記事にしたいと思います。ネットや本を探しても、設計理論からきちんと解説している記事はあまりないような気がしますので、誰かの参考になるように、また自分自身の勉強のために書き溜めたいと思います。
モーターの出力はどうやって決める?
さて、一番迷うのが、ローターの大きさやモーターのパワーです。ぶっちゃけてしまうと、余程設計が悪くない限り、適当に選んでも浮きます。ただ、スピードが出なかったり、常にフルスロットルで飛行させることになったりと、あまり性能が良くない機体になってしまいます。そこで、今回は、モーターのパワーや最適な羽の選び方について説明します。その前に、機体の重量を決めなくてはなりません。自作クワッドの場合、大体700g~1000gくらいを見ておけばよいでしょう。ただ、作ったフレームや形状によってもだいぶ違うので、ある程度正確に見積もりを出した方がいいかもしれません。
さて、ドローンやヘリコプター、プロペラの解析をするにあたっては主要な方法として、①翼素理論 ②運動量理論 というのがあります。少し難しそうですが、ざっくり説明すると、①翼素理論はローターのブレードに注目して詳細に計算する方法、②運動力理論はローターを通る空気の量から推力や必要パワーを概算する方法です。ドローンのローターは大抵複雑な形をしているため、①翼素理論を使うとちょっとややこしくなるので、②運動力理論を用いて、概算してみます。
<運動力理論でロータを解析する際に使う数式>
ちょっとややこしそうですが、この式を見る限り、ローター半径だけ計測しておけば、あとはこの式に代入していくだけでいろいろと求まることになります。ちなみにv1というのは誘導速度と呼ばれ、ローターにどれだけの速さで空気を巻き込むかという値になります。イメージ的にはダウンウォッシュの速さと思っておけば問題ないでしょう。
例えば、700gのクワッドコプターを作りたいとき、ローター一基あたりの推力は700÷4=175g=1.78Nです。ここで直径20cmのローターを使うとすると、これらの数字を代入して、v1=11.56(m/s) P=20.58Wとなります。これが四発あるので、700gのドローンが直径20cmのローターを使ったとき、必要なパワーは約82Wとなります。さて、ここで計算したのはあくまで理想状態での値です。実際は、様々なエネルギーロスがあるため、この計算値では飛ばないでしょう。そこで、次の性能指数と呼ばれるものを導入します。
一般的なFOMは0.6~0.7と言われています。ここでは、0.6を使って、先ほど求めたパワーから実際に必要なパワーを求めてみると、700gのドローンがホバリンフする際に実際に必要なパワーは約137Wとなります。ローター一基あたりに必要なパワーは34.25Wです。これはホバリングに必要最低限なパワーですので、実際には余裕を持たせてこの3~5倍の100W~150Wくらいのモーターを選ぶと良いでしょう。このサイズだと大体リポ3セル (11.1V )を使うことが推奨されるので、電流は10~15Aくらい流れることになります。これも余裕を持って20~30AのESCやそれに対応したモーターを選ぶといいと思います。
ローターの選び方
さて、ここまで飛行のために必要なパワーを求めました。ここからは、ローターの選び方について説明いたします。参考までに、ドローンのプロペラが豊富に販売されているHPを見つけたので貼っておきます。https://store.shopping.yahoo.co.jp/littlebellanca/c595aaade12.html
さて、もう一度、この式を見てみます。
これらの式より誘導速度v1が小さいほど、必要なパワーは小さくなることがわかります。では、どうやったらv1を小くることができるでしょうか。答えは、ローター半径Rを大きくすることです。Rを大きくすれば、推力も大きくなり、必要なパワーも小さくなる、つまり効率が良くなるということがわかります。フレームの関係で搭載できる大きさには制限がありますが、可能な限り直径の大きいものを選んだ方が良いということになります。余談ですが、機体の大きさに対して最も大きなローターを選べるのはヘリ型ドローンです。
2年くらい前に開発して現在も運用していますが、重量1kg以上もあるのにも関わらず、ホバリングに必要なパワー(電力)は実測で97.6Wです。先ほど計算した700gのクワッドコプターよりめちゃくちゃ燃費がいいです笑
今回は、モーターやローターの必要なスペックを概算する方法を紹介しました。実際、これだけでは設計を完璧にすることはできず、結局のところやってみないとわからんいのですが、割と正確で参考にはなります。ぜひ、取り入れてみてくださいね。では。
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