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【創作】通電

ジジっと電気が走り、私の瞼が光を灯したその日
私はここでのルールとして始まった。
終わっていいと告げられるまで、
私はここにずっといる。
私はここでずっとまつ。

瞳を閉じて良いと言われるその日まで。

もうどれだけの季節を過ぎたのか。

雨の日は色とりどりの傘たちが埋め尽くす道を
楽しそうにずぶ濡れで駆けていたあの子は
もう、きちんと傘をさして制服を来ている。

暑い夏、照りつけるギラギラする光に
細い私の影を求めて後ろに気だるげに立っていた
あのサラリーマンは、白髪混じりになり
今も尚、気だるげに私の影に隠れている。

私の激しい静止と母の手を掻い潜り、
飛び出したあの子だろうか
小さい手を引き柔らかな笑みをこぼして
曲がった腰をトントンと叩きながら
私の隣に立つ。


時に人との生き死にに立ち会い
時に人に恨めしく睨め付けられ
時に感謝され
時に教育者の補佐となる

ただの傍観者ではあるが、
その時々に
私の胸は回路がつまるような
そんな想いがするのだ。

凍てつく風が吹きつけ
暖かな心地よい風が緑の匂いを運び
真っ青なそらからジリジリと肌を焦がされ
木の葉は色づき宙を舞う

繰り返される日々と私はずっと有る
使命と共に私はここに在る
私の終わりを告げる誰かが迎えにくる

その時まで。

「私は、信号機」


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