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2021年、ふりかえれば甘ったるく

2021年の初夏終わりの匂いをよく覚えている。あの年の6、7月はあの頃だけの匂いがした。

これは半分比喩の半分本当。あの頃聴いていたキタニタツヤの曲とか、撮ったフィルム写真とかを見ていると、本当に鼻の奥でふわっと匂いがする。

季節の香りの正体ってなんなのかしら。花の匂いともちょっと違う気がする。
日本には4つしか季節がないから、1年の匂いは4通りしかないはずなんだけれど、その時々の出会いや気の持ち方でひと匙甘さ多めだったりして、とにかく、2021年の初夏はそういう時期だった。


2021年初夏、普段よりいろんなことをして、いろんな人と出会った。何をするにも何か新しい出会いがあって、目まぐるしく毎日が回った。自分が大きく改造されていくような感覚で、弾けるみたいに楽しかった。




「2021年の秋が幻みたいに綺麗だった」という話をある方としたことがある。
どうしてあんなにも綺麗だったのかしらとずっと考えていたけれど、多分、何もかもが未知だったからだと思う。


目の前にあるものが今後どんなふうにわたしを作るんだろう?明日のわたしはどんなことをしているんだろう?そういうのが全部わからなかったし、行動の結果がなんであってもよかった。こわいものなんて全然なくて、要するにとにかく自由だったのだ。



ふとしたときに一昨年を振り返ることが多い。
あの頃みたいな空さえ飛べそうな感覚、今はあまりなくて寂しくもなるけれど、いつかはきちんと思い出の棚にしまわれるんだと思う。


あの頃の怒りが今では笑い話になるし、あの頃の喜びでは今はもう笑えない。
そうやってただただ流れていく。
全ての記憶は、ふりかえれば甘ったるい。

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