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ぴ~すふる その1

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=>[???]

【エマージェンシー。エマージェンシー。総員は直ちに避難してください】

「奴らもうここまで来おったか」
「父上! このままでは」
「うぬ……こうなっては仕方ない」

 カチカチカチカチ、ターン。ビービー、プシュー。

「これは、脱出船ですか?」
「そうだ。……お前ひとりで乗るんだ」
「なっ! しかし!」

 エマージェンシー。エマージェンシー。総員は直ちに避難してください。

「よく聞け息子よ、このままではこの世界はもう終わりだ。お前も多くの世界が奴らに侵食されてきたのを見てきただろう?」
「そうです、だからこそ、この世界を守らないと──」
「聞け。実はだな。ただひとつ、奴らに侵食されていない世界がある」
「そこは?」
「つい数日前見つけたばかりの非常に小さい世界だ。だからこそ、奴らの魔の手を避けれておる。お前は一旦そこへ避難しろ。そして、なすべきことをなせ」

【エマージェンシー。エマージェンシー。総員は直ちに避難してください】

「……わかりました。必ずや私がこの……いや、全世界を救ってみせます」

 プシュー、ガチャン。ゴトゴト。シュー……。

「頼んだぞ我が息子よ」

 ガチャン! ガシャンガシャン。 カチッ。

KA-BOOOOOOOM!

・・・・・・
・・・

=>[ハシ海岸]

 ザザーン……ザザーン……。

「ねえ、知ってる?」

 白い砂浜のすそを白い泡が濡らした。波が引くと跡もすぐに乾いて消えた。空では太陽が燦々と輝いている。大きな入道雲が浮いている青空の下では数羽の鳥が悠々と飛んでいる。

 ここはハシ海岸。世界のハシにあるただの海岸。青い海にサラサラな砂浜、波打ち際にはクラゲやヒトデ。

「知らねー」
「……なんの話かわかってる?」
「もちろん」
「本当に?」
「あれだろ。あれだよあれ。そうそう、あれだ、相対性理論があれでタイムトラベルがそれみたいな」
「全然違うわよ。ストライクゾーンにカスリもしてないわ。というか相対性理論って何よ」
「えっ違うのか? それじゃあロブんちの犬が脱走して行方不明だって話?」
「違う。というかその話、半年前のことでしょ」
「まじかー。結構自信あったんだけどなー」

 そう遠くないところにある地平線まで広がる海の上に、いくつかの小型船が波に身を委ねるように浮かんでいる。砂浜から土道を挟んだ向かい側の森では、セミたちによる大合唱が繰り広げられていた。80dBぐらい。

 そして、砂浜の真ん中あたりに、一本の大きくてカラフルなビーチパラソルが突き刺さっている。そしてビーチパラソルの下には少年と少女。

「ところで、知ってる?」
「……だから知らねーって。言いたいんなら早く言ってくれ。俺は早くこんな熱地獄から抜け出して冷てえサイダーを飲みたいんだ」
「ふーん、知りたい?」
「別に知りたくはねーの。だけど話が進まないから知りたいってことにしておいてやるぜ!」
「しょうがないなあ。そんなに知りたいなら、この超凄腕情報屋美少女のユッキーちゃんが特別に教えてあげよう。感謝しろよな」
「会話が噛み合ってねーぜ! いつものことだけどな!」

『超凄腕情報屋美少女のユッキーちゃん』と名乗った少女は、パラソルの下でも大きな麦わら帽子をかぶりハート型サングラスで目を保護している。
長い白髪をもつ細身の美少女といったところ。少なくとも外見だけは。

 青いワンピース水着で隠しきれていない白い肌には、コレでもかと言うほど日焼け止めが塗ってある。
マッドモ博士の発明品で性能はなんとPF1000/PA++++++++。

 もう一方、砂浜に直接座りぼけーっと波打ち際を眺めている少年は、ユッキーちゃんより頭ひとつ分背が低い。名をタローと言う。

 半袖半ズボンに運動靴(先端に樹脂入り)。鼻の頭にバンドエイド。
ワックスを付けているわけでもないのにツンツンにとんがった、いわゆる熱血系主人公ヘアー。

「あのね、これ、本当の話なんだけどね……」
「ゴクリ」
「あのさ、その『ゴクリ』って口に出して言うののヤメてっていつも言ってるじゃん」
「あっはい」
「――気を取り直して、これ、マジの話なんだけどね……実はね、あのね。あ、今からとんでもなくびっくりすると思うけど心の準備できてる?」
「もちのろんよ」タローの視線は波打ち際から離れない。
「わかったわ。えっとね、コレは信頼できる筋から手に入れた情報なんだけどね。……大丈夫? トイレ行っとく?」
「全部汗になって流れるから大丈夫だぜ。これ以上ここにいると尿以外の水分も全部なくなっちまうから早いとこ話を続けてくれよな」
「おーけい」

 ユッキーちゃんがタローの目を覗き込む。眉をひそめるタロー。
 しばらく見つめ合ったのち、ユッキーちゃんが口を開いた。

「――私達はこのバースが世界のすべてだって教わったじゃない? だけどそれは間違いで、実は他にもたくさん世界があるって話なの! それで、そこには私達と同じかぜんぜん違う生き物がいるんだって! 考えたことある!? どう? すごくない!?」

「へー、まじやべえじゃん! ……じゃ、俺行くわ。今日は何も流れてこないし意味分かんない話は聞かされるし、まったくもってついてねーぜ」
「あっ、ちょ、何よその反応。もっと驚きなさいよー! 本当なんだからね―!」

 タローは立ち上がり、その場から颯爽と走り去っていった。
 砂浜に残る足跡をユッキーちゃんが追っていき、波の音と鳥の鳴き声だけが残された。


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チルお
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