『グリーンブック』(原題: Green Book)感想※ネタバレあり

『グリーンブック』(原題: Green Book)

監督 ピーター・ファレリー
出演者
ヴィゴ・モーテンセン
マハーシャラ・アリ
リンダ・カーデリーニ

バディものはやっぱりとても面白い。

1960年代に実際にあった人種差別や同性愛者差別が、信じられないほど理不尽なものだと知った。そもそもタイトルのグリーンブックというガイドブック自体が、人種差別があったから生まれたものである。差別意識に反対する人もいるが、当時表立ってそれを言える人はいなかったのだろう。ドロレスや、車のパンクに気づいた警官など、個々人では必ずしも起きない差別が、集団や土地のルールの中ではまかり通ってしまう怖さがあった。

自分には両親がいて、妻子がいて、彼らを食べさせるために働いているひとりの男だというアイデンティティを持つトニーと、孤独で自分が何者か分からないドクター。ふたりの違いを見ると、アイデンティティとは他者との関係性の中に生まれる自分の役割なのだとよく分かる。土砂降りの雨の中、自分が何者か分からないと叫ぶドクターと、それを聞いて悲痛な面持ちをするトニーが、とても印象に残った。

トニーがドロレスへの手紙にアドバイスを受ける中で、「追伸」を書いてもいいかと聞いたときの、「交響曲の最後にブリキの太鼓を?完璧だ」と言ったドクターの言葉のチョイスがすごく好きだ。そして、ロマンチックな手紙になるようアドバイスしたのがドクターだと分かっていたドロレスは、流石!

ドクター・シャーリーのピアノがめちゃくちゃ上手かった。トニーがドクターの演奏を聞いた時に、驚きと純粋な尊敬を抱き、自分のことのように、「どうだ、凄いだろう」という表情をしているのが面白い。手紙に書いた真っ直ぐな賞賛にも彼の人柄が表れていると感じた。地面に落ちていた売り物の石を返したと見せかけてポケットに入れていたり、バーでドクターが現金を出すのを見て、盗みにあう可能性を予想していたり。立ち回りがとても上手く、しかもそれでいて周りの人を傷つけたりはしていないところが、トニーの優しさや頭の柔らかさなんだろうなと思う。


最後まで読んでいただきありがとうございます。 これからもいろいろな作品・体験に触れ、日々の活力にしていきたいなと思います。よろしくお願いします。