乃木坂46、Lily of the valley、でんぱ組.inc……アイドルディスクレビュー#12(9/20〜9/26)

1週間でリリースされたアイドルによる楽曲のうち、個人的に気になった楽曲をピックアップしてレビューをしていく連載の第12回。今回は「乃木坂46」「Lily of the valley」「でんぱ組.inc」の3組を取り上げます。

・乃木坂46『君に叱られた』(9月22日リリース)

前作『ごめんねFingers crossed』の遠藤さくらに引き続き、4期生の賀喜遥香をセンター据えてリリースした乃木坂46の最新シングル。今年に入ってから3・4期生のセンター抜擢が続いていることからも、世代交代を強く意識させるものとなった。

愛する人との関わりで得た気づきを歌った「君に叱られた」は、「I see…」「Out of the blue」という4期生の代表曲の作曲を手掛けたyouth caseが担当。イントロからバンドサウンド全開のアップチューンで、サビで歌われるユニゾンはいつにも増して力強く聞こえ、これからの乃木坂46を21人が作っていくのだという決意を強く感じられる。MVも印象的で、卒業を発表している高山一実が脚本家として登場していたり、賀喜が水色の奢靡なドレスを着たまま全力疾走で走るシーンがあったりと、高山が書いた脚本をほかのメンバーが演じるというドラマ仕立てとなっており、ダンスシーンを含め見どころが盛りだくさんだ。(賀喜さんの笑顔が眩しすぎて、ひと目で魅了されました……)

その他生田絵梨花、久保史緒里、賀喜のユニット曲「やさしいだけなら」、高山のソロ曲「私の色」、齋藤飛鳥、和田まあや、山下美月、久保、遠藤、筒井あやめによるバンドユニット曲「泥だらけ」など、ユニット曲、ソロ曲ともに粒ぞろいの楽曲が揃った印象がある。特にすでにTHE FIRST TAKEで披露されている「やさしいだけなら」は、切なくしっとり歌い上げる歌謡曲調で新鮮。乃木坂46の中でも歌声に定評がある3人のユニゾンは鳥肌もので、グループの真髄を感じることができる。乃木團依頼となるバンド活動も今後気になるところ。世代交代を余儀なくされている乃木坂46だが、本作が示しているように、グループの若い力は確実に実になりつつある。

・Lily of the valley『誕生前夜』(9月21日リリース)

2018年に結成され、2021年には初の全国流通盤としてシングル『ちーーーーー』をリリースするなど、熱量高いパフォーマンスと関西仕込みのトーク力で人気を集めているLily of the valley。新シングル『誕生前夜』は「こんな今だからこそ、アイドルとして立ち上がる」を共通のテーマに、今まさに生まれ変わろうとしている新生リリバリの姿が映し出されている。只野菜摘と浅野尚志という著名なクリエイターが楽曲を手掛けた表題曲は、最初から最後までハイテンポで駆けていく疾走感のあるポップチューンで、3分30秒がほんの一瞬に感じられてしまう。聴けば聴くほど元気がみなぎってくるエネルギッシュな楽曲だ。他に只野が手掛けた「リリバリダ」「生誕・再」の2曲も収録。

「rain melody」と「Fighting flag」で作詞を担当しているのが過去に「ファンファーレ」を手掛けたNOBE。晴れやかな未来への願望を繊細なメロディに乗せて歌った「rain melody」、道なき道を進んでいくという覚悟を歌った前向きな歌詞にラップ、バンドサウンドが朗らかなムードを演出している「Fighting flag」と二面性を発揮しており、表現力にさらなる磨きをかけたリリバリを垣間見ることができる。

只野、浅野、NOBEといった作家陣が引き出してくれたリリバリの新たな一面。新生Lily of the valleyの新たな門出に相応しい作品だ。

・でんぱ組.inc『衝動的S/K/S/D』(9月22日リリース)

愛川こずえ、天沢璃人、小鳩りあ、空野青空、高咲陽菜の新メンバー5人の加入、スピンオフユニット「チャぺの泉fromでんぱ組.inc」の結成など、今年に入ってもなお新しい挑戦を続けてきたでんぱ組.inc。『プリンセスでんぱパワー!シャインオン! / 千秋万歳!電波一座!』に続く新体制第二弾シングル『衝動的S/K/S/D』は、玉屋2060%や前山田健一、清 竜人といったもはやお馴染みとも言えるクリエイターを迎え、新曲からスピンオフユニットによる楽曲までバラエティに富んだ作品となった。

目まぐるしく展開が変化する激しいバンドサウンドに原点回帰を感じる「衝動的S/K/S/D」、ねもぺろのキュートな魅力とムーディーな雰囲気が絶妙にマッチした「ファーストキッスは竜人くん」、初期のでんぱ組.incの音楽性を再現したチャペの泉初のオリジナル曲「愛・舞☆ミライ!」。「これぞ、でんぱ組.inc」と思わず口からこぼれてしまうほど、結成から13年目にして“原点回帰”を強く感じる意欲作だ。体制が大きく変わり今後の去就に注目が集まっていたが、良い意味で期待をぶち壊してくれた。


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