ナルシストではなく自己陶酔ストが苦手

高校生くらいまで、恋愛ものの少女漫画が苦手だった。
なんかこう、ムズムズしてくるというか、ソワソワしてくるというか、恋愛もののドラマもダメだったので、少女漫画に限らず恋愛が主題のモノが全部ダメだったんだと思う。

成人して、社会人になったころには、どういうわけか少女漫画は問題なくなって、むしろ好んで読むようになった。自分ができなかった青春を取り戻している感じ、なのか?
でも、声がついたり動いたりするとやっぱりゾワゾワしてしまって、アニメも、いわゆる乙女ゲーというようなゲームは、今も苦手だ。

面食いな方だという自覚はあるけど、顔がイケている男性に言い寄られるシチュエーションが我慢ならないのだろうか。よくわからない。

とりあえず、好きなタイプを訊かれても、「あんまりわからないけど、嫌いなタイプはあるよ。自分がカッコいいと自覚して、自分がこうしたら喜ぶよねってわかっててやってくるようなヤツ」と答えたりした。

それってナルシストってこと?とよく訊き返され、うーーん、なんか違うんだよなあといつも答えていたけど、今日、ふと分かった。
自己陶酔だ。自己陶酔しているヤツが苦手だ。
これは男性に限らず、女性も。苦手な人類。

芸能人でも、演技が上手いとか顔が好みとかそういう好き嫌いはあるけど、こう、なんていうかもう、「俺格好いいでしょ?こうすると最高だろ?」っていう自意識が漏れ出てくるような人は苦手なんだよねーと言っていた。

漫画は、声がないし紙の中のお話なので、「顔(絵)が良い……」と思って普通に読めるようになったんだけど、ゲームのように声がついてしまうと、途端にリアルな「人間」ができあがって、「俺カッコいいよねこうすると以下略」が漂いだす気がしてダメなんじゃないかな。

そりゃあそうだよ、向こう(誰だよ)はカッコいい男を演じてカッコよく見せるのが仕事だよ。完璧。

ナルシストはなんとなく、自分が大好きでそれが外に出ないというか、別にその自分のかっこよさを外には押し付けてこない。見ている私に押し付けてくるんじゃなくて、「俺ってかっこいい~」で自己完結しているような気がする。

私の中のナルシスト代表は、中学のときに隣の席だった不良で、まあ(市内一荒れていた中学の)不良の中でも悪い方の不良だったので、授業も居たりいなかったりだった。意外と思ってたよりは居た気もするし、全然居なかった気もする。
出席率なんかどうだっていいんだけど、その子が授業中、ただひたすら、手鏡で自分の顔を見ながら、前髪をずっと直していた。45分だか50分の授業中、ずっと。
よく飽きないな……と思ったり、それさっきと何か違うか?と思ったり、まだいじってる……と思って見ていたんだけど、次の授業でもまだ前髪を気にしていて、そうかナルシストというのはこういうヤツのことを言うのか……!と思った。

前髪さえキマっていればいいのかどうかわからないけど、そいつは別に私に「何ガンつけとんねん」的なことを言うわけでもなく、ただ鏡を見ていたし、私は彼の様子を観察していた。
自分自身の視線というか、自分自身との闘い……!と思ったのもその時だ。

当然その子は私に興味なんかないので、言い寄っても来ないし、私の視線なんか眼中にすらなかったんだと思うので、会話をした記憶もない。ただただ私に対して「真のナルシストとはこういうものである」という、間違っているんだか合ってるんだかわからない姿を見せてくれただけだ。

というわけで、「ナルシスト」といわれると彼のことが脳裏をよぎるので、「ナルシストが嫌いなのかー」と言われると、「いやそうじゃないんだよね」となっていたわけだ。
別に勝手に自分に浸っている分には、私に何の害もないので好きも嫌いもない。

「俺ってかっこいい!みんなもそう思うよね!だからこうしたらもっと俺カッコいいよね!」と己のカッコよさを押し付けてくるのは、もちろんナルシストという要素もあるんだろうと思うけど、それにプラスして自己陶酔していないといけない。

今日電車の中でシリーズ物の恋愛系の少女漫画を読みながら、なんか最近ちょっとムズムズするんだよな少女漫画も恋愛ものだと、歳かな、と思ったときに、ああそうかと思い至ったのがその「自己陶酔」だった。

恋愛ものでも、少女漫画の全部が全部ダメなわけではない。まだ、多分。
年齢の問題でもなくて、その自己陶酔を嗅ぎ取る感度が変わってきていて、「こういうストーリー、こういうイケメンがこういうことを言ってくれてときめく、こういうシチュエーション、最高じゃない!?」という作家さんの自己陶酔なんじゃないかこれは、とはっとしたのが良くなかった。

それはそうなんだろうと思う。自分が生み出すストーリーやキャラクターに自己陶酔できなければ、創作なんでできないし、それは否定してはいけないことなんだと思う。
まず自分が陶酔できなければ、人を酔わせることなんてできないから。

ただ、駄々洩れすぎると、なんか作為的にすぎるとか、ご都合主義的すぎるとか、そういう言葉で纏められるのかもしれないけど、そういう空気を嗅ぎ取ってしまうというか、「こういうの、好きだよね!」「好きですけど今はいいです!」という気分になってしまう。

ふむ、「こういう俺カッコよくて好きだよね!」「好きかもしれないけど、全然必要としてないです!」っていうのと似てる。
なるほど「苦手なタイプ:ナルシスト」でしっくりこなかったのは、自己陶酔が足りてなかったのか、と納得した。

多分、どんな作品でも酔えるのが楽しいし、そうであったらよかったなとも思うけど、あれもこれもそれも、と手を出しがちな中、合わない作品や合わなくなってくる作品があっても仕方がない。
読み始めた時は好きだと思って買い始めた漫画だったんだけどなー。
作中のイケメンも好きなタイプなんだけどなー。

幸いにして、ナルシスト自己陶酔系の人は、そんなに周りにいなかったし、いたとして別に言い寄られることはなかったし(そういう方とは釣り合いませんのでね)、同性であれば別にスルーしておけばいいだけの話だし、乙女ゲーも苦手なら苦手で手を出さなければいいだけなので、普通に回避できる。
恋愛もののドラマも見なければいいだけ……。

でもまさか、恋愛ものの少女漫画を読んでて、長年「ナルシストが苦手ってことだよね?」「いやなんかちょっと違うんだけど、まあそうなのかな」という問いに答えが出るとは思わなかった。

ちなみに電車に乗って行った先は、3回目のワクチン接種でした。
もうちょっとうまくまとめたかったなーと思うけど、エネルギー切れなのでこんな感じで。
副反応は1回目も2回目も腕の痛み以外ほとんどなかったので、3回目もどうってことはないと信じている。

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