2020センター試験(化学)レビュー

2020年センター試験化学のレビューです。かかった時間は45分とありえない時間です(2016年以前は30分弱が普通だった) が、大問6で計算ミスして(注:手計算です)あれ合わない!まずいやり直し!とやっていたせいで10分近くとられたせいです=負け惜しみ。難易度は昨年よりは少し易しいものの量が多いので同じくらいかな?問題ごとの難易度の落差が激しいというのが全体の印象。

以下、問題ごとに見ていきます。なお、「高校2年生以下の人が解く前に見るのはお勧めしません。解いてから読みましょう!ネタバレ100%です。解く前に読むのは思考力を奪います」

大問1
問1 普通の知識問題。来年からこういう問題がなくなってしまうのでしょうか。
問2 状態図の問題。状態図さえちゃんとわかっていれば何ということはなし。
問3 pV=nRTとn=w÷Mを利用してd=pM÷RT。ところがここはH2とN2の混合気体なのでMには「平均分子量」を利用する必要があります。H2とN2の等量混合なのでそれぞれの分子量を足して2で割るだけですが、、、
問4 トリチェリの実験、蒸気圧。トリチェリの実験などはきちんと知っておきたい。なお、圧力をmmHgからPaに換算させる必要があるので注意(というか手間がかかるmmHgのままでいいじゃん…
問5 浸透圧の出題。実験装置を見ると二次の問題であってもおかしくないが、「浸透圧とは何か」さえきちんと押さえていればそこまで難しくない。左右の気圧差がそのまま浸透圧になる(左室の気圧で浸透と右室の気圧を食い止めている)。見かけにびびるなよ!
問6 コロイドの知識問題。「ゾル」「ゲル」という言葉まで覚えろというのは「知識偏重からの脱却」に逆行していないかな?「ゲル」は身近なところにもよく出てくるからいいのかな。あとこの問題は他の選択肢が自明に正文なので消去法が効く。

大問2
問1 ベースはふつうのモル計算、反応式なのだが、設定が結構トリッキー。グラフを読み取って、「酸素が0.02mol反応した時点で反応終了」「鉄は0.03molある」→じつはFe2O3ではなくFe3O4ができる!
  bはQ=mCΔTを使うのかと思ったら違った(もっとやりやすいように工夫されている)
問2 拍子抜けするくらい簡単な生成熱を利用した反応熱の計算。ここで符号ミスってるようではまずい。
問3 対数グラフが出てきたのでかなりびっくり。ただ、対数グラフぐらいは知っていたほうが良いのかな、という気もする(311のときには新聞などにも結構登場しました)。あと対数グラフだからといってびびらず数値をクールに読み取ればOK。「ビビるな!」そして、グラフからA濃度2倍で速度4倍、B濃度2倍で速度2倍が見抜ければOK。見慣れない問題にびびったら負けなのです。
 
なお、出題の狙いとしては、「おーグラフが一直線上になっている、だから速度は濃度の1乗に比例ね~」と早合点する人が出ることを狙ったものと推測します(対数グラフではグラフが一直線上に乗っても「単純な比例」にはならない)

問4 反応速度と平衡の区別がついていれば定番の出題ではある。ここもグラフ(細かいことだが、対数グラフを出した以上、他の問題では対数グラフでないことを出題者は明記しなくてはいけないのではないか?まあ細かいことだが。。。)
問5 「指示薬の変色理論」という、トピック色の強い問題(1回やったことがあれば楽、ないときつい)こういう、トピック色の強い問題を1次で出すのは個人的にはどうなのかな?と思う。まあ、理系で化学を選択していればやったことがあるかな?

大問3
問1 15年前に住んでいた家では、ニクロム線でできた電熱線がコンロについていた。そういうのもすっかり見かけなくなったなあ・・・で、知識か?というと、「電気抵抗が小さいと発熱は小さくなるよね」(電気抵抗大=陽イオンに電子がびしばし当たる、これに伴って発熱量が大きくなる)という考え方をすれば知識に頼らなくてOK
  それと、「銅と比べて電気抵抗が小さい」から攻めることも考えられる。銅=全金属中電気伝導性2位、それより電気抵抗小さい?ん??(ただ、「合金だから「金属単体の電気抵抗」で考えるのは適切でない、というツッコミが入る考え方ではある)
  あとは、この問題も消去法でいける(他の選択肢はどう考えても正文)
問2 常識でしょう。。。H2O2の分解反応においてMnO2は触媒として働くというのは。。。
問3 陽イオン系統分析なのだが、塩酸を加えた後の沈殿と溶液に「同じ実験をする、その実験を当てなくてはいけない」
  AgClとPbCl2の分離は多くの場合熱湯を加えるのだが、ここはアンモニア水を加えてAgClを溶かす。Al3+とZn2+も過剰アンモニア水で分離する。ちゃんと選択肢を吟味しましょう。
問4 東工大のような出題だ。。。すなわち、A~Dが何であるかをチャートから確定させ(それだけでは1点にもならない)、それをベースに正誤判定問題を解く。こういう2段階以上の思考を必要とする出題が、ここ3~4年で増えているのは明らかに新テストを睨んだ変化。
問5 今回のセンター試験でこれが一番難しいのでは?まず、ニッケル水素電池の話はまず知らないだろう。反応式は書いてあるが、半反応式ではない(もっとも酸化数変化が書いてあるのが大きなヒント)そして、「1A・時」に対応しなければならない。考え方としては、
  〇Ni(OH)2が6.7×10^3÷93=72mol
  〇酸化数変化から、これと同じmolの電子を流すことが可能(←酸化数変化が1なのでここを飛ばしてしまっても結果的に正解になる)
  〇電気量は72×F=6.95×10^6C流せる
  〇これで1Aを6.95×10^6秒流せるということ→6.95×10^6秒÷3600=1930時間
  〇→以上より1930A・時
  (2つ目のステップを飛ばしても正解になってしまうという問題設定が個人的にはひっかかるかな。せっかくなら酸化数変化が1でない問題にしてほしかった)

大問4
問1 単純な知識問題といっていいと思う。来年以降はこういうのが(以下同文)
問2 普通のモル計算だがちょっと手間がかかる・・・と思ったが、できる水が1mmolなので、「そんなややこしい数にはならんだろう」ということと、H以外の式量が140だったし、取った試料が30mgなのでn=10かな?とカマかけたらしっかり当たり(ドヤ顔)。
問3 普通の知識問題。来年以降(以下同文)
問4 要するに不斉炭素がありえるのはどの分子式か?ということですね。多種類の元素が入っているほど不斉炭素にしやすくなるのだから3、と瞬時に出る。
問5 実験の問題だけれど、実験の主旨を聞いているわけではないですね。エステルなどC、H、Oのみからなる有機物は水に浮くよね!という知識と、エステル化の脱水が「カルボキシ基の酸素が水になる」形だということを覚えていればいける。

大問5
問1 普通の知識問題。来年(以下同文)
問2 等電点についての普通の問題。等電点とは何か?わかっていれば楽。

大問6
問1 低密度ポリエチレンのほうが枝分かれが多くて、結晶になりにくくなっているのだから、透明にはなりにくいよね。知識というよりも思考!あと、この問題も消去法でいける。
問2 高分子の計算。手間がかかった!しかも計算ミスして最初からやり直す羽目に・・・手間がかかるだけでやることは普通の高分子計算なので、うーんという感じ。

大問7
問1 知識、というか「らせん型なのにシートってことはないでしょ」で終わり。右回りとか左回りとかに惑わされてはいけません。
問2 炭水化物の計算問題としては並の問題。数値もきれいになるよう設定されている。

以上のように、「単純な知識問題」が数を減らしていて、二次試験であってもおかしくない出題が結構出ていますね。ただし、難易度はまちまちで落差も大きいです。
新テストはここから単純な知識問題が姿を消すことになるのでしょうか。ちょっと難しくなりすぎる気がします。「知識問題に見える思考問題」も消えないように祈りたいところです。
分量は今年ちょっと多い気が。計算もぱしっと割り切れないとか、手間がかかるものが以前よりも増えている(去年よりは少ないか)
予想通り、今年もセンター試験にしては難しかったと思いますが、二次試験対策をきちんとやっていればいける問題。昨年よりも少し平均点は上がるが、60点には達さずに57点と予想します(あまり意味のない予想)

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