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星野源、ここまで来たか。「Same Thing」における偉大なる挑戦

星野源が現在の日本のミュージックシーンのトップランナーであることに異論を挟む人はいないだろう。

僕は「Stranger」以前の星野源に対してはなんとなく「カクバリズム周辺で弾き語りっぽいことをやってて俳優とかもやってるサブカル女子に受けがよさそうな人(顔が薄い)」というくらいの認識しかなかったのだが、2013年の「地獄でなぜ悪い」あたりでなんとなく気になりはじめ2015年のシングル「SUN」以降はやることなすこと感銘を受けまくっている。

ブレイク期の星野源の動きをざっくりと振り返ってみよう。


YELLOW DANCER→逃げ恥のコンボで大ブレイク

2015年から2016年にかけての星野源の活動はすさまじいものがあった。2015年、過去の自分を清算するかのようにインストバンドSAKEROCKを解散。インディーズ事務所であるカクバリズムから、サザンPerfume福山雅治なども所属する巨大芸能事務所アミューズ移籍。2015年末にぶっこんできた大傑作アルバム「YELLOW DANCER」。明けて2016年、大河ドラマ「真田丸」に徳川秀忠役(最後においしいところを持っていくんだよねえ)で出演したと思えば、新垣結衣の相手役ともなったドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」と、その主題歌である「恋」のヒットで社会現象に。いったい何人の男がガッキーと最終的にイチャコラする星野ヒラマサに嫉妬したことだろう。いいからそこを代われ、源。

あのドラマは「はああガッキーかわいい(みくりさん)」「ヒラマサめ・・・ぐぬぬ」の繰り返し無限ループであった。むろん、面白かったことは言うまでもない。脇を固める俳優陣も良かったですよね。でも恋ダンスは踊れなかったし、いまでも踊れる気はしない。まあそれは別にいいんだ。どうでもいい話なんだ。

というわけで、それまでも日本武道館でやるクラスのアーティストではあったものの、あっちゅうまにドームツアーをぺろっと売り切っちゃうくらいのトップレベルに急成長した星野源。これはほんとにアミューズが上手いんだと思います。金も湯水のように使えるんがデカいんだと思いますが。

まさに「これぞブレイク、これがブレイク」。苦労人の花が咲く。

人気アーティストとなった星野源。ここからが肝心なのだけど、ブレイクすると変化を嫌い、いわゆる「金太郎飴状態」になるバンドやアーティストがいる。星野源で言えば「恋」や「SUN」みたいな耳馴染みの良いポップでキャッチー(死語)な曲を連発するような状態に陥ることだ。ブレイクした時の路線でずっとやっていく。それも策だろう。冒険しない。安全だし。それで満足してくれるファンも大勢いる。間違いではないかもしれない。でも、彼はそれを良しとしないことは明白だった。

だって面白くないもんね。

ポップの極致だと賛辞の言葉を贈りたいシングル「ドラえもん」や、国営放送で細野晴臣や三浦大知と音楽愛を語りまくる「おげんさんといっしょ」なんかの「尖り目のジャブ」は打ってたものの、2018年末にリリースした「POP VIRUS」というアルバムはやや「金太郎飴」感があるアルバムだった。悪くはないけど、ブラックミュージック色強めだった「YELLOW DANCER」を踏襲しすぎているような気がした。まあ「YELLOW DANCER」が素晴らしすぎたってのもあるけれど。

ここからが本題である。

「POP VIRUS」にいまいちのめり込めなかった僕は2019年下半期に星野源が撃ってくる強烈な一撃を全く予測をしてもいなかった。


星野源、世界戦略とSame Thingの衝撃

星野源が世界に打って出る必要があるのか?は置いといて、アミューズ(と星野源)は世界に出たい。11月に上海、ニューヨーク、台北、そして横浜を巡るワールドツアーを開催が決定。そしてその景気づけとも言えるシングルが配信限定でリリースされたのだが、これがまた痛快なのだ。客演には日本人のティーンエイジャーoronoが在籍することでも知られる多国籍バンドSuperorganismを迎えた「Same Thing」。全英語詞。作曲は星野源であるけど、Superorganismのフレーバーが強めであるように感じられる。星野源の既発曲も含め、日本のヒットチャートには居ない類の楽曲だ。ハッキリ言って異物に感じられるだろう。J-POPのトップを取った感がある星野源の次なる挑戦としてはあまりにも刺激的だ。「星野源」ではなく「Gen Hoshino」なのである。

この「Same Thing feat.Superorganism」をメインとして日本の人気ラッパーとの「さらしもの feat.PUNPEE」、近い将来に往年のジャック・ジョンソン的ポジションに収まる可能性も高いUKのシンガー/ギタリストTom Misch(トム・ミッシュ)との「Ain't Nobody Know」、そして原点に立ち返るようで「いま」の凄みを見せつける弾き語り「私」の4曲で構成されるのがEP「Same Thing」なのだ。

洋楽やインディミュージックをメインに聴いてきた自分にとって、メジャーのフィールドに居ながらにして「一般的な知名度は無いかもしれないが素晴らしい音楽をやってるバンドなりシンガー」をフックアップしてくれる人はとてもありがたい存在。フェスやレーベル/音楽賞などの活動で知られるアジカンのGotchなんかが代表的な例だけど、星野源もこのEP単発で終わらずにいろんな才能を紹介して欲しいなあと切に願っている。相手は超有名DJではあるけど、Mark Ronsonとの共演もそのひとつだ。売れるとこういうことできるの、いいよね。あとは表立ってやるかやらないかの話であって。

「Same Thing」は英詞ですが、youtubeではちゃんと日本語字幕も出ます。歌詞、めちゃくちゃいいぞ。

と思ったら、MVの終わり際。いつものアレ。変わらん!こういうところも愛されるゆえんなのだろう。


PUNPEEとの共演曲「さらしもの」に関してはブラックミュージックをこよなく愛する星野源がいつかラッパーと共演しても全くおかしくないとは思っていた、思っていたけれどやっぱPUNPEEは特別感ありますね。相性も素晴らしい。今年のGREEN ROOM FESTIVALのヘッドライナーでもあったTom Mischとのコラボに関しては、対談もしていたので、今から思えば「ああそういうことだったのか」と膝を打ったのだけど、この曲に関してはやや馴染みすぎているかもしれない。



こういうコラボモノの正しい楽しみ方は、コラボ相手を1曲でもチェックすることだと思います。というわけで!


「ドラえもん」は名曲!





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