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さよなら青春時代 (本文・下)

2018年10月、大好きだった仕事を辞めた。

明くる2019年はとてつもない年で、苦闘の末に拍子抜けするほどあっさりと仕事が決まったのを皮切りに、自分史上最も濃密と言ってよい1年間であった。前半はとにかく慣れない仕事に振り回される日々。スーツ嫌い、とか言ってらんない。やる。とにかくやる。

怒涛の日々をなんとか乗り切るなかで、大きくなってゆく妻のおなか。並行して運転免許取得計画がスローペースで進行する。そして、10年暮らした土地を離れて家探し。人生のなかで大きな出来事が1年間にぎゅっと凝縮されててんやわんやである。

前回のnoteで綴ったように、今までの自分を捨て去った。もちろん変わらない部分もあるのだけど。そして新たな環境を勝ち取ろうとするアクション。・・・に加えてデカいイベントがどんどん追加されてゆく。計画通りっちゃ計画通りであったのだが、めちゃくちゃ集中したのは否めないのだ。

前回、かなり内容ふくらんでしまったのでちょっと抑えめに。


運転免許を取得するの巻

本当に車の運転に興味がなかった。

20代の頃は「別にいらん。なくても困らないし」と本気で思い込んでいたし、両親も「取らんの?」と聞いてきたが、強く勧めてはこなかった。それでもこの年で自動車運転免許を持っていないのはレアケースだし、正直負い目があった。なので、積極的に「免許ないです」という情報を開示することはなかったのです。

それでも、さすがに結婚して子供が産まれるというイベントを経るにあたり「どっかのタイミングで取らないとさすがにまずいかな」と思うに至ったのだが「仕事があるから難しいよね」という言い訳を作ってしまっていた。そのとき住んでいた街は、車がなくてもまあなんとかなるところだったのだ。

・・・今となっては20代~30代前半の自分にこう忠告したい。

歳をとってからの免許取得はまじでしんどいぞ。

まず、仕事をしながらの取得は厳しい・・・ということで躊躇していた僕は「退職したし、転職活動しながら免許取得目指す」ということになったのだが、ちょっと呑気に構えすぎてしまった。もっとガツガツやれば良かったんだけどなあ。結果、次の仕事が決まった3月までにはまるっきり終わらず、そうすると新しい仕事を覚えながら合間で自動車学校に通うというハードモードになった。この状況に突入するなら「前職で働きながら学校通っても良かったじゃん」ということなのだ。しかも路上で精神的に瀕死のダメージを食らうし、まあ、えらく時間がかかってしまった。結局期限ギリギリになんとか卒業。

次に、学科や実際の運転などで諸々の知識を覚えるのが大変だ。当然ながら、20歳の頭はアラフォーの頭より柔軟だ。20年分凝り固まった脳味噌に知識を突っ込もうとしても、まったく覚えらんねえ。しかも転職活動からの転職決めて新しい仕事を覚えなければならないという並行作業がある、というのがキツさに拍車をかけた。

最後、シンプルに肩身が狭い。まわりは90%くらいの割合で20歳前後の学生さんと思しき若人ばかりである。で、主婦っぽい女性が5%くらい。レアキャラだが、制服姿の女子高生とかもいたりする。若者たちは「なんだあいつ」と思っていただろう。俺がレアだった。たまーーーに同年代の人がいると超絶安心した。

まあ、期限ギリギリで卒業しながらも引っ越しだー 出産だー などバッタバタが続き、結局なんとか免許証を手にしたのは先月の話だったりするのである・・・


おひっこし

長く暮らした土地を離れるのは寂しいものだ。

あの街に引っ越してきたのは、まだ「V」が存在したころで、駅の南口を出てすぐの不動産屋ですぐに部屋を決めた。まだ付き合ってそんなに日が経っていない彼女=現在の妻も一緒だった。いま思えばよく先方のご両親に許されたものだ。

最初はちいさな部屋だった。4年住んだ。結婚することになって、ちょっと大きい部屋に引っ越した。猫といっしょに暮らし始めた。結婚した。子供が産まれた。保育園に通い始めた。保育園を転園した。妻は数回転職したが、僕はずっと同じ仕事をしていた。そして転職。2人目の子供を授かった。

10年半が経過していた。

出会った人は数え切れない。組織は何度も変わった。関わる人もどんどん変わる。出会う人、辞める人、出会う人。恩師。本当に嫌いだと思った人。遠くに行った人。亡くなった人。Kさん、Sさん、Yくん。東日本大震災のときの衝撃。夜勤明けの街の匂い。怒り狂ったクレーマーとの対決。朝7時、通勤する人々とすれ違いながら睡眠をとるために帰るときの憂鬱さ。猫が部屋をボロボロにして柱までダメにした。川沿いの桜。ファミコンがプレイできるカフェ。シンゴジラでの盛り上がりに改めて愛着を覚えた。昼飯は松屋か吉野家かかつやか、それが問題だ。苦手だったドン・キホーテ。雑多な街並み。近所のとんかつ屋の豚の置物。最寄りのローソンの店員。まいばすけっと。自動車学校までを自転車でゆく道程。

そしてあの店の記憶。


僕と妻は育った土地が近距離のため、引っ越すならお互いの両親も住んでいる近くにしようね、ということはずっと話していた。上の子を連れて何度もいった武蔵小杉や二子玉川やラゾーナ川崎には行きにくくなるけれど、いざというときに頼れる親が近くに住んでいるのは圧倒的に安心ができる。現在のコロナ禍のような状況ではなおさらである。さすがに会うのは極力避けてはいるが、精神的な近さがあるものだ。

引っ越しをいつにするか?という問題に関してはずっと機を窺っていたのだが、子供の幼稚園問題がありなかなか動けないでいた。そんなとき、お互いの実家に近い幼稚園に空きがでて枠を抑えることができた。ということで、急遽家探しに動くこととなったのだ。


賃貸なのか購入なのか。マンションなのか戸建なのか。

色々と検討した結果、中古の戸建購入に絞ったのだが、数が少ない。しかも駅からが遠い物件ばかりでなかなかしんどい。先に幼稚園を決めていたためにエリアを変えるわけでもいかず、長期戦を覚悟していた頃、突然現れた優良物件。駅から徒歩10分程度、築浅5年の中古物件。中身も問題ない。内見してすぐに抑えたのだった。夫婦間でほとんど異論はなかった。

運が良かったと思う。


広い新居に引っ越し。ちょうど出張なんかも重なって、引っ越しの翌週にはデカい台風が来たりして大変な時期だったが、妻も子供もうれしそうで本当に良かったなと思う。

そして、この新居に新たな家族が加わることに。


New Born

子供の誕生についてはすごくプライベートなことなので、つまびらかにするのは避けるけど、11月に男の子が産まれた。2015年産まれの娘とあわせて、一姫二太郎ということになる。娘はだんだんと弟が可愛くなってきたようで、かいがいしく世話をしている(たまにいらんことをする)。4歳の歳の差できゃんきゃんとよく喋り、常にわちゃわちゃしているお姉ちゃん。僕は2人の姉がいて、上の姉とは5歳差。僕が産まれたときはそれはもう可愛がったということを伝え聞いている。姉の子供の頃の写真が娘と瓜二つで家族間で笑いのネタとなっているのだが、姉もお節介で世話焼きでよく喋るおひとなので、娘と性格まで似ていると思う。面白いものだ。

というわけで、息子をめちゃくちゃ自分に重ねてしまう。お前の境遇、俺と同じじゃんか。お姉ちゃんに負けないよう、意思を強く持って強く生きるように育てねばなるまい。じゃないと僕の悪い部分ばかり受け継ぐような気がしてならないのだ。


とりあえず、運転免許は20歳までに取らせようと心に誓っている。

まあ、20年後には自動運転になっているかもしれないけど・・・

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