【comicreview#2】「スインギンドラゴンタイガーブギ」灰田高鴻
あんまり稼働してなかったマンガレビューマガジン「Comic FUUUUUUN」を思わず起動させて、その素晴らしさを書き殴りたくなる衝動に駆られる作品に出逢った!
4月2日発売のモーニングにて連載が始まったばかりの「スインギンドラゴンタイガーブギ」という作品。著者は灰田高鴻。
上記リンクのナタリー記事にあるように、あらすじはこんな感じ。
太平洋戦争終結から6年。米軍占領下にある日本、東京が舞台。戦後日本の芸能界のルーツともなった「ジャズ」を軸に据え、焼け跡から復興するひとびとの再生の物語を描く。主人公は福井から東京にやってきた少女・とら。路上でウッドベース弾きながら歌いつつ、心を患ってしまった姉のために「オダジマタツジ」という男性を探している・・・
という導入部。
ジャズ漫画と言えばいの一番に出てくるのが、やはり「BLUE GIANT」。あとは実写映画化もされた「坂道のアポロン」とかも有名。邦画なら「スウィングガールズ」、洋画なら「セッション」あたりが著名だろうか。
で、この「スインギンドラゴンタイガーブギ」の魅力はどこにあるのか?
戦後を生きる、70年前の日本人のエネルギー!
音楽を「本気で」漫画という表現で伝えるにはやっぱりどう「熱量」を描くか。だと思っています。どうしても伝えきれない「音」である以上、「音を聞かせる」技量も問われるし、何より音楽によりもたらされる興奮と熱狂をいかに表現するか?は肝の肝の部分だと思うし、「BLUE GIANT」なんかは稀有な成功例。
この作品ではバンドの演奏シーンはもちろん、市井の人々の有様も描かれるし、焼け跡から再興しようとする70年前の日本人(最初のライヴは米軍基地でしたが)の、ガヤガヤ猥雑なエネルギーが匂い立つが如し。作者の灰田さんの他の作品も読んでみたのですが、この「スインギンドラゴンタイガーブギ」は、勢いを重視してややラフめに描いているような気がする。
とにかく、とらちゃんが可愛い!
で、「エネルギー」を一番感じるのが主人公の女の子・とらちゃんなのである。
とらちゃんは本名を於菟(おと)というのだけれど、渾名はとら。作中では触れられていないのだけど、恐らく「おと→おとら→とら」と転じたかと思われる。本作のタイトル、スインギンドラゴンタイガーブギ、の「タイガー」であることは明白かと思われる。福井県から姉の想い人であるベース弾き「オダジマタツジ」なる男を探すために上京。年の頃は14歳ということであったのだけど、作者さん本人のツイートから12歳或いは13歳と訂正されております。16歳くらいに見えるのだがな~
ガーリーなルックスであるが、まさかのボクっ娘である。
そして、天性のシンガーの才覚を持つ。彼女の歌がいかにひとびとを魅了していくか?これからのストーリー展開で大いに描かれる筈。
第1話でも「東京キッド」のポスターとともに「あの天才少女歌手の大躍進を知ってるだろ?」という台詞が。とらちゃんは美空ひばりではないですが、並び立つ可能性を感じさせる歌手、としての伏線なのでは。
しかし!この子は口が悪い。肝っ玉が据わっていて年上相手にも堂々と言い返す。喜怒哀楽も激しいし、くるくると表情が入れ替わる。喧嘩っ早いと思いきや意外に臆病でナイーブ。ピュアな一面もあるエモーショナルな女の子。極めつけに、ガーリーなルックスなのにまさかのボクっ娘!
米軍さん相手にこんな啖呵も切ってしまう!
本作のもうひとりの主人公?オダジマタツジ
丸眼鏡のクールガイ。ぶっきら棒で「嫌な奴」。とらの姉の想い人?年の頃は恐らく20代半ばといったところなのだろうか。とらちゃんとは10歳以上の年齢差がある筈。動のとらちゃんに対する静の小田島として、好対照なキャラ。
オダジマタツジ=小田島"龍"治ということで、本作のタイトルにおける「ドラゴン」であることは間違いないでしょう。「スインギンドラゴンタイガーブギ」は、とらと小田島、この2人を軸として進むのだと思われます。ぶっちゃけ第1話でいきなり出くわしますが、とらちゃんがこの「嫌味なベース弾き」を捜し人と認識するのはもうちょっとあとの話です。
(女子人気出そうだよな~、小田島)
ぼむぼむ ぶぅ~ん
重要なのが音楽。
本作で盛んに取り上げられるThe Mills Brothersの「Hold That Tiger」がこれ。トラ狩りです。音を聴きながらだとよりイメージが掴みやすいとおもいます。
4話で話題となった「にゃ~!」も確かに入ってた。
「スインギンドラゴンタイガーブギ」はモーニング本誌で連載中(5/7発売号ではお休みらしい)ですが、アプリのDモーニングでも読めるし、Comic Daysでも第1話が無料で読めますので、まずは1話を。2020/5/4現在で4話まで進んでおります。