【毎週ショートショートnote】ルールを知らないオーナメント
2023年12月。
今日通葉市(つばし)に引越ししてきた石本藍良(いしもと・あいら)は、荷物の詰まった大量の段ボールの中からたくさんの枝の模型を取り出した。組み立て式の大きなクリスマスツリーだ。
藍良にとって、クリスマスツリーを飾るのは人生で初めてのことだ。
今まで厳しい両親に勉強だけをさせられ続け、世の中の楽しいことを何も知らなかった。
見るに見かねた藍良の母の妹である聡子が黙って藍良を連れ出し、子育てのしやすい通葉市へ転居したというわけだ。
「わーい!ツリーだ!3歳の頃に絵本で見たことしたなかったから、本物を見られて嬉しい!」
藍良はツリーを組み立て終わると、たくさんのオーナメントを飾った。
2日後、藍良の隣の家の少年健二郎が訪ねてきた。
「藍良くん初めまして、健二郎です」
健二郎は家に入るや否や、不思議な顔をした。
「あれ、何でクリスマスツリーなんて飾ってるの?今日は12月28日だよ」
藍良はあまりに厳しく育てられたので、クリスマスがいつの行事なのかも分かっていなかったのだ。
ルールを知らない藍良のことを、聡子は黙って見守っていたのである。
今週も楽しく参加させていただきました。
田原にかさん、ありがとうございます。
ちなみに、先週のお題は「台にアニバーサリー」でした。
お時間ございましたら是非お読みください。
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