9/30『なんかいやな感じ』講談社発刊記念 テーマ 『今、この社会の「感じ」を考える』武田砂鉄さんによるリアル&リモートトークイベント報告レポート
武田砂鉄さんの第一声は、「やっぱり、あれですね。万博は無理だと思いますよ」で、会場は、大爆笑の渦となりました。なんでも、大阪に着くなり、心斎橋の大阪万博のオブジェ拳2025を見に行かれたのですが、盛り上がりどころか、そのままの日常で自転車置き場になっていたのを確かめて来られたとのことでした。
すでに何度も武田さんにはお越しいただいているのですが、今回のイベントの中で、あらためて印象深かった気づきを書きたいと思います。
元編集者としての属性からか、内容から装丁に至るまでの「本の作り方に対しての誠実さ」を感ぜずにはいられませんでした。
私はこの本を読んで泣いてしまった章があったとお伝えしたのですが、それは、随所に、武田さんの優しさが感じられたことからでした。
それは、ある時には、小さな書店の立場であったりもします。
営業マン時代に渋谷の大型店に「若者の間で方言が流行っている」という本を売って来いと言われるのですが、そんな現象が起きているとは思えずにプレゼンが出来ずにいた話には、書店員としてお勧めできない本に対して同じ思いを持つ者としてうなずいてしまいました。
ヘイト本は、注文もしないのに取次から一方的に送られてくるにも関わらず、「本屋はアイヒマンだ」と決めつけられる本が出たときも、武田さんはこの構造をご存じで、「ヘイト本について、まず悪いのは作り手である版元です」と看破して下さったのです。
コスパだけを考えた安直な作られ方をした本には、厳しい目線を泳がされますが、特に優しさを感じたのは、その一方で武田さんは、これは編集者の使命をかけてでも出さなければならないと感じた本については、情熱を持って会社の説得に取り組まれていたことを知っていたからです。
それは、川名紀美さんの書かれた『アルビノを生きる』という本でのことです。
この本は、「白皮症」という1万人から2万人に一人の割合で現れる遺伝性の疾患について書かれたものですが、日本ではこのテーマについては一冊も出されていなかったのです。
つらいことに、日本の社会では、本が出ていなければ、あるいは言語化されていなければ、どんな事件や人間も存在しないことにされてしまいます。
川名さんは出版を決める最終会議を前に「絶対にこの企画は通しますから」と武田さんから、連絡をされていたといいます。
安易な言葉ですぐに一般化する社会に疑義を呈して大切なことを言語化する武田砂鉄さん。今回のイベントのテーマは、 『今、この社会の「感じ」を考える』でした。
トークイベントは、まさにこの視点が感じられるものでした。
文中でご紹介させていただきました「アルビノを生きる」著者で、今回、40年ぶりに「女も戦争を担った ~昭和の証言」を復刊された川名さんが、10月22日に隆祥館にお越し下さいます。 「川名紀美さんによるトークイベント」は、そんな編集者時代からのお付き合いのある武田砂鉄さんが、インタビュアを務めて下さることになりました。
こちらもぜひ関心を持っていただきたいテーマです。
詳細につきましては、隆祥館書店のホームページをご覧ください。
隆祥館書店のホームページ
https://ryushokanbook.com
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