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今、ひとりの書店主として、伝えたいこと 期待していた経産省のプロジェクトの中身を知って、地団駄踏んだ、そのあと泣けてきた。

経済産業省の「文化創造基盤としての書店振興プロジェクトチーム」が、齋藤健経済産業大臣と書店経営者などによる「車座ヒアリング」を実施したというニュースが流れた。齋藤経産大臣 書店の意見聞く「車座ヒアリング」開催 補助金・無人書店・キャッシュレスなど話題に - The Bunka News デジタル より

 この経産省の「文化創造基盤としての書店振興プロジェクト」については立ち上げの報道がなされた直後より、沢山のお客様から、メールをいただいたり、店頭でもお声をかけていただいていた。中には、「もうちょっとしたら、経産省が、助けてくれるから、それまで踏ん張りや!」という声もあり、なんだか少しずつ期待するようになっていた。

しかし「車座ヒアリング」の、取次トーハン元社長の発言に触れると、悲しくなり、思わず地団駄を踏んだ。
スタッフに読み聞かせると、本屋ではなくトーハン自社のことしか考えていないと怒りを露わにした。

トーハン元社長(現会長)の発言はこうだ。

近藤理事長「無人書店を補助対象に」

 「JPIC・近藤理事長が「全国の書店の在庫をネット上で公開し、図書館にも開示して来客を促す取り組みや、無人書店の運営を始めているが、こうしたインフラを整備することで経済産業省と一緒にお手伝いできればと思っている」と発言。トーハンとして進めているMUJIN書店について、200~300万円で導入できるパッケージを補助金の対象にするよう求めていく考えを示した。」とあった。

「無人書店を補助金の対象に」

「これまで営業時間外だった夜間や早朝の無人営業を可能とすることで、読者の利便性を高めて売り上げの拡大をはかることが目的。また、有人と無人をハイブリッドに組み合わせた24時間営業モデルを実験することで、「書店の新たな営業形態を構築し、小売店としての可能性を追求する」ことを目指す。」但し運営は、トーハングル-プとある。

将来的には、良いかもしれないが、今、そこなんだろうか?

NHKのニュースでは、経済産業省の「文化創造基盤としての書店振興プロジェクトニュースの際に、ここ10年で廃業しているのは45坪までの中小書店と伝えていた。

9年前の2015年、父が亡くなった。2月だった。両親の介護をしながらの店での仕事は、体力的に厳しく、深夜12時までは、書店の接客で、上の自宅に上がってからは、両親の介護をしていた。2月は、特に売り上げが厳しかった。医師で、計算の早い弟は、経理のチェックをして「赤字やん」と冷静に言った。2月は、確かに赤字だった。

そして、妹と弟から、「本屋はもうあかん、本屋をやめるか?コンビニに貸すか?もう辞め時を考えたら」と言われた。両親が銀行に勧められた相続税対策でビルにしたため大きな借金の返済があと13年ある、そのことを言うと「ビルごと売ればいいやん」と言われた。

何も知らない方はビルをうらやましがられるが、正直、親の判断は失敗で、何度も銀行の手に渡りかけていて、財産ではなく大きな負担でしかない。

その日から、考えた。なぜ自分は本屋を続けたいのか?3日間、眠れなかった。

小さな本屋だから、出版業界でも決して良い待遇は受けていない。ランク配本という床面積で差別される制度によって売っても売っても本を回してもらえない理不尽な目に遭っているぐらいだ。しかし、三日三晩考えて、わかったことは、自分は、本を介して人と繋がることに幸せを感じているということだった。それは、お客様であったり、作家さんであったり。「本」を通じて人と繋がりたいんだと、気づいた。

三十代の頃からパニック障害を病んで外出もままならなかった自分にとっては、人と繋がることができる唯一の大切な空間なのだ。脳裏に浮かぶお客様おひとりおひとりの嗜好にあった本を頭に入れて、それが入荷されたときにお勧めして購入いただけたときの喜び、数日してから「あの本、良かったよ。ありがとう」と言われる嬉しさは何ものにも代えがたいものである。


しかし、私たち書店が、仕入れをしている取次の近藤元社長から発せられた言葉。地団太がおさまらないのでもう一度書くと、それは、「無人書店の運営を始めているが、こうしたインフラを整備することで経済産業省と一緒にお手伝いできればと思っている」であり、トーハンとして進めているMUJIN書店について、200~300万円で導入できるパッケージを補助金の対象にするよう求めていく考えを示した。のであった。

「無人書店」・・・

それもまた時代の流れかもしれない。書店員の給料は重労働の割りに極めて少ないが、それでも人件費の削減にはなる、接客をうとまれるお客様もおられるかもしれない。しかし来店された方にとって新しい発見は確実に減るだろう。トーハンが運営する書店のみが補助金の対象になるのならば、全国どこも同じ金太郎飴書店にならないか。人の手を介さないAmazonとどこが違うのだろう。この施策は本当に減少していく書店を救うことになるだろうか。

ト-ハンの近藤さんは、JPICの理事でもあるが、JPICは、「本や読書に関する情報やイベントを提供する財団法人」とある。私たち書店も読書に関する情報やイベントを提供する店なのだ。(涙)

活字文化議員連盟会長でもある上川陽子外務大臣も今回のヒアリングに強い関心を寄せていることも報告されていた。

 南審議官が外遊中の上川大臣が寄せた「私は海外出張時には可能な限り現地の書店を訪問しています。海外の書店訪問を重視している理由の1つは、日本の書籍や文化がその国にどのような形で受け入れられているかを知ることができる点です。日本においても、書店を日本文化の発信拠点、そして文化が行き交う文化交流拠点として一層大切にしていきたい」などとしたメッセージを代読した。とあった。

この「文化創造基盤としての書店振興プロジェクトチーム」のことについては、日本外国特派員協会(fccj)日本外国特派員協会 |FCCJのシンガポール人の記者の方から「隆祥館書店としての受け止めを伺いたい」と取材依頼を受けた。海外でも日本の書店に対する関心は高いようだ。


私は16日にインタビューに対応し「本を諸外国のように、非課税の対象にしていただきたい。また、韓国のようにイベント等をしている書店へ何らかの助成を考えて欲しい。流通の仕組みを改善し、身体で言えば動脈のような大型書店だけではなく、毛細血管のような地域の小さな書店の取り組みにもぜひ目配りして頂きたい。書店における本の利益はたった2割で、一万円売っても2千円の粗利です。でも本が好きだからこの仕事をしている」と答えた。


ヒアリングは、有難いが、この10年で廃業に追い込まれたのは主に45坪までの書店とNHKニュースで報じていた、それらの書店にもヒアリングをお願いしたい。

書店を日本文化の発信拠点、そして文化が行き交う文化交流拠点として残したい。と切に願う私たち書店に。

隆祥館書店ホームページ
https://ryushokanbook.com

齋藤経産大臣 書店の意見聞く「車座ヒアリング」開催 補助金・無人書店・キャッシュレスなど話題に - The Bunka News デジタル

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