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漫画『はだしのゲン』の継承について

4月1日の広島市教育委員会が平和教育の教材から『漫画はだしのゲン』を削除したことに、強く抗議する意味で企画したイベントレポート(※リクエストにお応えして、アーカイブ動画の配信もございます。お申込みは、隆祥館書店のホームページhttps://ryushokanbook.comをご覧下さい。)

テーマ「漫画『はだしのゲン』の継承について、漫画と講談が訴えていること」講談師 神田香織さんによる講談とアフタートーク

広島市教育委員会が、「漫画 はだしのゲン」を、平和教育の教材から排除するというニュースを耳にした瞬間に、本屋として看過できなかった理由は、中沢啓治さんが、どんな思いでこの漫画を描かれたのか、ということ。読み返すと、戦争と原爆の責任を徹底的に追及しているのです。

下記は、中沢さんが、最後に書かれた本「はだしのゲン 私の遺書」に、書かれていた言葉です。


「はだしのゲン」は、わたしの遺書です。わたしが伝えたいことは、すべてあの中に込めました。「はだしのゲン」がこれからも読み継がれていって何かを感じて欲しい。それだけが、わたしの願いです。」と書かれていたのです。

本に関わる書店として、中沢さんの思いを伝え、抗議し、撤回していただくことを、目的に、今回は、イベントを開催することにしました。

リスペクトしているノンフィクション作家の木村元彦さんから、以前から講談師の神田香織さんのことを、お聞きしており、隆祥館書店でも講談をしていただくことが念願でした。

今回、「はだしのゲン」を、排除という事件を受けてお願いできないか?聞いて頂いたところ快諾して下さったのでした。


実は、イベント当日あろうことか、神田さんのお着物が、予定の12時に着かず、待てども待てども来ず、ヤマトに電話しても、連絡が取れず、大手前のヤマト営業所にも行きましたが、配達員に連絡が取れず、なんと40分も遅れたのです。髪を結うのと着付けに、最低でも1時間はかかります。それなのに・・・・・。
その間、私が考えたことは、届かなければ、私の着物を着ていただくしかないと密かに考えていました。
神田さんに、伝えると背丈?体重?が、違うでしょうと。にこやかに、お応えになられたのでした。
私たちスタッフは、届くまで、落ち着かず気が気ではありませんでしたが、どんと構えておられました。

結局、開場が、10分遅れの13時40分になってしまったのは、このような事情からでした。

リハーサルは、声を発するぐらいしかできなかったに等しかったにもかかわらず、本番は、まるで、何もなかったかのように、迫力ある講談を披露して下さいました。


生で見るのは初めてでした。お一人で、何役もこなす講談、父親の大吉の役から、優しい母親のきみえ役、そして信次や、ゲンの役、見事に役をこなしておられました。

見ているうちに、どんどんと引き込まれ、漫画では、原爆の落とされた後に、身体中にガラスの破片の突き刺さった白黒の描写が、神田さんの講談によってさらに鮮やかな色がつき、核爆弾を落とされた後の想像を絶する恐ろしい情景が浮かんでくるようでした。

それはまるで、中沢啓治さんと被爆者の悲しみと怒りをそのまま表現されているようでもありました。

大吉と信次、姉の英子が、家屋の下敷きになっていて、助けようとするところあたりから会場から、すすり泣く声が聞こえてきていました。
「生きろ~」という大吉の声

そして、最後は、原爆が落ちた日に、放射能の極限に、何も知らずに生まれた赤ん坊、その生まれてきた赤ちゃんを、ゲンが、抱き上げて、『もう二度とこんなことはさせんで、わしの力で、戦争なんてない、ええ世の中にしちゃる、めしが腹いっぱい食えるようにするんじゃ。お前を守っちゃるで~』

このシーンでは、溢れ出る涙を抑えきれず、号泣してしまいました。今も、思い出すと泣きそうになりますが、辺りを見渡すと、会場の皆さん、ほとんど泣いておられました。

神田さんの迫真の講談と、会場の皆さんがひとつになっていました。
中沢啓治さんや、当時の被爆者の亡霊が、その怨念が乗り移っているかのようにさえ感じました。


核武装などという政治家がいますが、核のことを知っているのか?問いたくなります。

これほど、悲惨で残酷な目に遭った日本人が、どの口をして言うのか!

世界で唯一の被爆国の日本が、核兵器廃絶を訴えずにどうするのか?

講談師の神田香織さんは、冒頭で「戦争は教育から始まる」と、話されました。

実は、娘家族が、サッカーが大好きで、国際試合をよく見に行っています。
最初に美しいグリーンの芝生で行なわれるセレモニーで、それぞれの国の国歌を歌います。
それが、カッコ良く見えたのでしょう。当時、幼稚園か、小学1年の長男の龍ちゃんが、カラオケで、「君が代」を歌ったと聞いて意味が分かっているのか?少し心配になっていました。
ところが、3月6日私の誕生日で、久しぶりに、娘家族と食事をしました。その際に、今度「はだしのゲン」のイベントをするから来ない?と聞いたのです。
すると、

龍ちゃん:「ぼく、はだしのゲン知ってるで、サッカーが、めっちゃうまい静君が読んでたから、ぼくも図書室で、読んでん」
私 : 「どんな漫画やった?」
龍ちゃん: 「あんな 君が代はな、ええ歌やねんけどな、歌うときは気いつけなあかんねん」
私:「なんでやのん?」
龍ちゃん:「それにはな、2つ理由があるねん、一つ目はな、天皇陛下の命令で、日本は朝鮮の人をたくさん殺してるねん。 二つ目は、天皇陛下バンザイ!って言うて、みんな、がけから飛び降りて死んでるんねん、せやから、君が代は、ええ歌やけど、歌うときは、よう考えなあかんねん!」

これを聴いた時に、正直びっくりしました。小学二年の子が、ここまで理解できるのです。

ついこの前まで、「君が代」をカラオケで歌っていたと聴いていただけに。漫画の持つ力に、驚かされました。

今回、イベントを開催するにあたり「はだしのゲン』を読み直しましたが、漫画では、戦争と原爆の責任を徹底的に追及しているのです。

アメリカのしたことは、国際法違反です!
当時の天皇の戦争責任もしっかりと追及しています。
「戦争を教育から止める」ためには『はだしのゲン』は継承されるべき必須教材です。
会場にいた戦争体験の当時者、奈良勝之さん(元高校教諭)は「ゲンの削除は裁判に訴えるべきだ」と発言されました。

広島市教育委員会は「はだしのゲン」を、平和教育の教材から外すことを撤回すべきだと考えています。


愛媛県から参加して下さっていた保持さんが、愛媛に神田さんを呼びたいと仰ってましたが、日本全国にこの輪が広まりますように!

最後になりますが、今回のイベントには、福島から原発事故の時に避難されてきた森松明希子さんが、甲状腺がんになっている子どもたちの講談もされている神田さんにお会いしたい、ぜひスピーチをさせていただきたいと仰ったので、ご招待しました。(原発事故から避難されてきている方々はすべて無料にしています)

森松さんは、原発賠償関西訴訟原告団代表で国を訴えておられます。
「ゲンは原爆被爆に対する庶民の怒りを語っている。わたしたち避難者は国と東電に原発被曝の責任を追及している。原爆も原発も平和を奪った、原発も攻撃されれば放射能被害が出るから危険性は同じ」

12年間避難生活をしている森松さんのお子さんたちも『はだしのゲン』を読んでいるそうです。だから、差別され、分断されても「おかしいことはおかしい」と言いつづける森松さんを理解しているとのことでした。

原発賠償関西訴訟で5月に本人尋問を控えている森松明希子さん。
踏まれる度に強くなる、麦のように生きる!「はだしのゲン」がいかに平和教育にふさわしいか、森松さんの力強さから感じ取れました。

今回のイベントには、「教育と愛国」の映画監督、斉加尚代さん、平井美津子さん。「子ども脱ひばく裁判」の水戸喜世子さん、「おこりじぞう」を描かれた四國五郎さんのご子息、四國光さん、映画「はだしのゲン」で隆太役を演じられた上野郁巳さんもお越しくださっていました。ありがとうございました。

神田香織さん、素晴らしい講談をありがとうございました。
音響のプロ並木さん、ありがとうございました。

お客様から早速、「はだしのゲン」パート2のリクエストがありましたので、ご検討何卒宜しくお願い致します。

ドーンセンターでの開催にあたり、ご尽力下さった、樋口徹さん、伊藤悠子さん、才木さん、ありがとうございました。

神田香織さんとのご縁を下さった木村元彦さん、本当にありがとうございました。

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