全裸中年男性、アニメになる
「あんた、何か変なものを頼んだんじゃない。段ボール箱が大量に届いているよ」
全裸中年男性の部屋にカーチャンが入ってくると、そう怒鳴った。
段ボール箱のなかにはテレビアニメ『全裸中年男性の大冒険』の全巻と、関連番組、そしてその同人誌が大量に詰まっていた。送り主は知人で《全裸中年男性などどこにでもいると思っていたが、静岡で暴れていたというのはお前ではないか》という手紙がついていた。
全裸中年男性はあまり興味が持てなかったが、知人の勧めに従い関連番組「アニメ『全裸中年男性の大冒険』ができるまで」をみることにした。
番組では原作者が得意気に語っていた。
「5年前に静岡は浜松を旅していたら、猿を抱き抱えながら走っている全裸中年男性がいて、なぜこの猿は人語を喋らないと叫びながら陰茎を怒張させていた。あっという間に警察が来たんですが、これは面白いと思った。猿を見て勃起するんですよ。
とは言え本物の全裸中年男性など誰も見たくないでしょう。だから滑稽なアニメにしたんです」
それはたしかに自分のことだった。全裸中年男性は壁に穴があくほど殴ったが、カーチャンがすっ飛んできて全裸中年男性をハンマーで殴った。
「お前のほうが悪い」
カーチャンは言った。
全裸中年男性は眠れない夜が続いた。
そんなある日、いつものように陰茎を出して町を歩いていると、散歩している犬がいた。全裸中年男性が犬の口を掴んでコンビニで買った日本酒を無理やり注ぎ込んだところ、飼い主は悲鳴を上げて警察を呼んだ。飼い主はヒイラギちゃんが死んじゃう、ヒイラギちゃんが死んじゃうと大騒ぎした。犬のほうはケロっとした顔で飼い主を見上げた。
全裸中年男性は警察署に連れていかれた。警察官が身元を確認すると、
《浜松で猿を相手に暴れる》
と書かれていた。この全裸中年男性はあのアニメのモデルになった奴だ。警察は腰を抜かした。安斎内閣総理大臣に報告が上がり、緊急の関係閣僚会議が開かれた。
「週刊誌に本物の陰茎の話が載ることになるのか。潰せ。」
喜多川ジョニー国家安全保障大臣が言った。
全裸中年男性は何が起こったのかよく分からなかったが、23日で釈放され自宅に帰るといつものようにポテトチップスを食べ雑誌を読み始めた。
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