愉快ジン#29

ある日曜日のこと。
家の水道が破損して床が水浸しになってることを知り朝を迎える。そこで朝食を食べる前にいきなり肉体労働である。これが慌ただしい1日のはじまりだった。それからも車に乗ろうとするとカラスの糞が沢山付着していて気分が萎える。急いで汚れを落として車に乗って出掛ける。すると、長靴を履いて家を出たことに後から気づき、スニーカーを持ってくることを忘れていたため急いで家に戻る。そしてスニーカーを持ってもう一度家から飛び出す。ところが次は雪の弊害にあってなかなか前に進めない。極めつけは目的地に到着したのだが、駐車する時に車が雪ではまってしまったことである。こうなってくると「今日はついてない日」と断言できる。もはや何か憑いてるんじゃないかと思ってしまう。冗談だけど。
なんとか心を落ち着かせたい。そうだ、コーヒーでも飲もうか。最近小耳に挟んだことなのだがセブンカフェが美味しいのだという。そこでものの見事に引っかかった自分は用事を済ませるとセブンイレブンに向かった。そしてカフェラテを注文する。基本的にカフェラテしか飲まない。いや、正確に言うとブラックで飲めないからカフェラテ。ガムシロップを沢山入れて飲むのが自己流。それなら最初から甘いものを飲めばいいだけなのだが。しかしコーヒー機の使い方がわからない。沢山あるボタンをジロジロ観察し、ようやくカップにコーヒーが注がれていく。そんな光景をただただ眺める。すると背後から突如「邪魔」と言われる。後ろを振り向くと、色黒の男性が立っている。このおっちゃん(1)は50〜60歳くらいだろうか。見た目で判断するのは失礼かもしれないが、ボロボロの毛玉のついたニット帽と擦れた傷の多いナイロンジャケット。泥まみれの長靴。そしてマスクからはみ出た白く伸びた髭を見る限り浮浪者だとなんとなく悟る。そうじゃなかったらすいません。
というか、人が通る導線は十分に確保されている。わざわざ自分が立っているところを通って店を出て行こうとすることが僕には理解できなかった。だけどここはぐっと感情を押し殺し導線を開ける。本当に今日はついてないなあ。
そして夕方古着屋に行った。そしたらまたまた事件が起きた。駐車場から出ようとした時、出口に人が立っている。おっちゃん(2)がずっと空を見上げている。なんか見えるのか?気になった自分も空を見上げるが何も見えない。こちらに早く気づいてくれないかな。クラクションを鳴らしたくないから自動車のライトに気づいてください。少し待ってあげた。しかし、まったくこちらに気付いてくれない。後ろに待つ車からの圧力もひしひしと感じる。だから、なるべく小さな音でクラクションを鳴らした。するとおっちゃん(2)が道を開けてくれた。そして駐車場から出た。すると、駐車場から出たところで信号に引っかかっていると突然、車をノックされた。外を見るとなんだが口うるさそうなおっちゃん(3)がいた。そして開口一番に「何クラクション鳴らしとるんじゃ!おい!」とやっぱり怒鳴られた。怖かった。まず、あなたに鳴らしてない。そして何よりクラクションを鳴らしたくて鳴らしたわけではない。とにかく「すいません。気を付けますね」と言って、青信号になるとすぐに後を去った。そして次に行った古着屋で洋服を見ていた。するといきなり肩を叩かれた。後ろを振り向くとさっき怒鳴ってきたおっちゃん(3)が立っていた。え、さっき遭遇した場所から5キロ以上離れているのに、ついてきたのか?と思った。もうここまでくると鳥肌モノである。しかし、おっちゃんから予想外の言葉を受ける。「さっきは怒鳴ってごめんな。でもクラクションを鳴らすのも良くない」
僕もしっかり事情を説明するとおっちゃん(3)は理解してくれた。そしてなんとか和解した。

と、1日で3人のおっちゃんに憑かれた今日はとても疲れた。ここで偶然、店内の有線放送で流れた曲の歌詞に「幸せにも日曜日がある」というワードが聞こえてきてふっと気持ちが軽くなった。これは不幸ではない。幸せが休みの日だったのだ。そうだと思って家路に着く。
次の日におみくじを引く機会があったから引いてみた。そしたら大吉だった。
なんだ、やっぱり昨日は幸せが休みの日だったのね。
そんな今年はとてもツイてる一年になりそうだ。

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