愉快ジン#35

毎日緊迫した世界情勢が気がかりだ。ずっとスマホを開いては更新される最新ニュースに目を通す。住宅地を破壊されて泣いている女性の写真やシェルターで涙ながら戦争をやめてと言う女の子の姿を見ると心が痛い。「こんな時自分ならどうする?」という問いが次々と湧き上がってくる。それにも関わらずテレビをつけると対照的にバラエティー番組だ。チャンネルを変えてもバラエティ番組。頼みの綱であるNHKも生放送でバラエティ番組。なんだか温度差が激しくてとても同じ時間軸を生きているように思えなかった。違和感で頭がおかしくなりそうだ。

このまま家にいたら何もできずに1日が終わりそうだ。そんな危機感を感じた僕はとりあえず着替えると「勉強」するためにカフェに向かった。僕の中では台本を読むこと、本を読むことは「勉強」と呼んでいる。勉強と聞くと気が引ける思いもしなくもないが、自分の中では「勉強」と呼ぶことでインプットするという意味合いを強く持つことができる。要するに「ただ読む」という流れ作業ではなくなるということだ。
とにかくカフェに到着。レジ番はたまに見かける女性のスタッフ。ショートヘアと丸い瞳が印象的である。いつも通り「ホワイトモカ」を注文する。すると女性スタッフが一言「ホワイトモカしか飲まないですよね?」と聞いてきた。僕はなんだが恥ずかしくなった。というのも、最近カフェで「ホワイトモカ」を注文するたびにレジ内がソワソワしている様子だったからだ(気のせいの可能性もある)。僕は慌てて「これしか飲んだことないんですよね」と答えた。すると「これ以外飲んでるところ見たことないです(にやにや)」と言った具合に返された。
まあ、覚えられてて当然か。稽古のない日はかなりの頻度で通っている。

「もしかしてホワイトモカの人で認知されてます?」僕は恐る恐る聞いてみた。すると「はい、そうですよ!」と即答された。嬉しさ反面ますます恥ずかしい思いだ。続けて「私のオススメは△□%@¥&モカの◎★■○〜♯×=%です」と言われたのだが、横文字が必殺技くらい長かったのでまったく覚えられず、モカしか聞き取れなかった。とにかく次来たらまたそれ教えて下さいと伝えた。そして3時間ほど勉強すると帰路に着いた。
そして後日。なんだがカフェに行きたいのに、ホワイトモカで認知されている恥ずかしさと何て注文すればいいのかわからない緊張でなかなか行きづらい。でも勇気を振り絞って向かった。カフェに行くにも勇気が必要というのはなかなか滑稽である。
そしてレジで注文する。この日のレジ番は「ジャンヌダルク」だった。髪が青くなっていて一層存在感がある。注文を聞かれると僕は「ショートヘアの人にオススメされたメニューがあるんですけど覚えてなくて、今日おられますか?」と聞いた。すると「あ、ワタシ分かりますよ。ココアの〇〇かカフェモカの◎★■○♯×=★■ですよね?」と言われた。だがら必殺技っぽい後者の方を選んだ。ジャンヌダルクの「今日はホワイトモカじゃないのか?お兄さん?」みたいな覗き込む表情が一層僕をソワソワさせた。しばらくして飲み物が届いた。カップには「NEW お楽しみあれ!!!」と書いてある。こちらも温度差が激しくて頭がおかしくなりそうだった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?