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もっと生きたいと思った日

『海辺のカフカ』をもうすぐ読み終わる。
これまで村上春樹の本をほとんど読んでこなかったが、この小説を読むのが今で良かった。と思った。

少し前から世界の見え方が変化している感じがしている。
見え方の変化というか、勝手に入ってくる情報への気づき方というか。
シンプルにいうと以前より細やかなのだ。

これまでと同じものに接しているのに、いちいち木目が細かい。
具体的にどんな風にと言われると困ってしまうのだけれど、(なにせこの状態になってからまだ日が浅い)とにかく違うのだ。

昨日『海辺のカフカ』を読みながら、以前のぼくだったら「よくわからないっすわ」で終わっていただろうな。と思った。
今もどんな風に素晴らしいかなどは語れないが、読みながら自分の中の何かが反応しているのが感じられる。
村上春樹がこの小説を書き上げるために費やしたとんでもないものに想いを馳せられる。(もちろんぼくの勝手な想像だけれど)
モノゴトの奥行きというものを以前より感じられるようになったのかもしれない。

そんなことを考えていたら、ふと「もっと生きたいな」という想いが素直に湧いてきた。
心に底があるのなら、底から何にも邪魔されずに水面まで一直線に上がってきました、みたいな感じで。

誤解を恐れずに言えば、ぼくは生への執着が薄かった。
投げやりな意味ではなく、いつ死んでもいいと思っていたし、そういうものだと思っていた。
でも、今はもっと生きたいと思う。
もっとたくさん世界に触れてみたいと思う。

「もっと早くこの感覚に出会いたかったよ」と愚痴るぼくに、パートナーは「いま出会えて良かったじゃない」と言ってくれた。

根拠は全くないが、ぼく自身90歳くらいまで生きる予感がしている。
そう考えたらまだ半分か。
まだまだ楽しめそうだ。


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