つまらない人に恋をした
「仲間」とか「友達」とか。そんな言葉に当てはめてしまうにはどこか難しい関係性の人が多い。つくづく、僕は言葉を知らないなと思う。
気付けば大切な人で、気付けば横に並んで歩いてて、気付けばひとり。その人の下の名前も忘れてしまってるのか、そもそも知らないのか。
「ねえ、僕たちの関係には名前がないね」
そう言いあった関係のあの子とはもう連絡を取れていない
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今思えば、つまらない人だった。
彼とはバイト先で知り合った。とはいっても彼はお店の常連で、歳は3つ年上、すらりと高い鼻が印象的で、同じバイト仲間たちからも人気で、彼が来るたびに誰が接客するのかを取り合った。彼には彼女がいるとか、子供持ちだとか、既婚者だとか、様々な噂が飛び交ってたけれど、私にはどうでもよかった。
それでも、何度かバイト終わりにそのまま合流させてもらって飲んでるうちに仲良くなった。
大学の先輩で、家が一駅隣、好きな映画が同じ、得意料理は2人ともオムライス。色んなことが似ていてなんだかすぐに打ち解けた。
互いの家に行くのにもそんなに時間はかからなくて、気づいたらどちらかの家で映画を観る仲になってた。
年が明け、彼が卒業していく時期くらいに、彼に初めて抱かれた。
その日は珍しくバイト先に食べに来なくて、帰りのコンビニで見かけてそのまま彼の家に流れた。彼が作ったオムライスを食べ、何本か映画を観終わった頃にどちらからともなくベッドへと流れ込んだ。
そして、どちらからともなくキスをした。
ゆっくりと触れられていく指を感じながらなんとも言えない心地になって、紛らわせるみたいにまたキスをした。
それからはお互いどちらからともなく体を重ねるようになり、私も彼の体に嵌ってしまうのには時間がかからなかった。
いつかの飲み会で彼には相手も、ましてや子供なんていないことを知った。
いつか付き合えるかな。なんて思った。
私は彼に依存していたのか、本当に好きだったのかわからないけれど、彼のことは忘れられなかった。何気なく交換したインスタの彼のタイムラインを見て心が掴まれたみたいな感覚が忘れられなくて、気まぐれにストーリーに返信しては彼の家へ遊びに行った。
彼が卒業する日の前日も彼の家にいた。
この日もするんだろうな。と思っていたら彼から手を出してきてくれることはなくて、ただ真面目な顔して一言「ごめん」と言った。
彼はやけにあっさりとした口調で、彼女ができたのだと言った。そっか。とだけ答えて愛想笑いをした。お幸せに。なんて言葉は言えなかったけど。
なんだかんだ、初めて彼のために作ったオムライスの入ったお弁当は渡せなかった。
その日は結局彼の家に泊まらずに帰ってきて、お弁当はぐしゃぐしゃにしてゴミ箱へ捨てた。
今、彼がなにをしてるのかは知らない。まだ付き合ってるのか、別の女ができたのか。私はもうオムライスを作ることは無くなったけど、彼は今も作ってるのだろうか。
今思えば、つまらない人だった。
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彼女は、大学2年の時に知り合った彼のことが忘れられなくて悩まされてたのだと打ち明けてくれた。
もう6年は経つのに。
悲しみは時間が解決してくれると言うけれど
悲しみを思い出させるのも時間だったりする。
これからの彼女に素敵な出会いがありますように。
2人でいられるはずの七夕の日に
1人でいることを選んだ彼女へ。
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