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FXの適切なレバレッジを考えてみる

前回の投資の考え方の考察は、意外に多くの方に見ていただき、大変励みになりました。ありがとうございました。

その中でレバレッジは3倍以下という話を何度か書きました。

FX投資でサバイバルして、できれば利益を出すために、これは物凄い大事なポイントだと思っています。

そこで、補足としてレバレッジの考え方、そしてどのくらいが適当なのかについて、考察してみたいと思います。

※言うまでもありませんが、投資はご自身の判断と責任で行ってください。本稿は参考情報として提供するものであり、特定の銘柄や市場全般の今後の動きを予測するものではありません。この情報を元に読者の方が行ったいかなる結果についても、筆者は責任は負えません。

まずレバレッジとは何か?

分かっている方には、このセクションは読み飛ばしてもらえればと思います。

まずレバレッジとは何か? これは日本語だと、あの理科の力学で習った「梃子(テコ)」のことです。

日本語では「証拠金取引」と言います。

現物取引、というか、平たくいえば普通にモノを買う場合、たとえば1ドル110円の時に1万ドルをゲットするためには、110円×1万単位で110万円が必要です。

これに対して、売買したい資産の本来の価格の一部の金額を支払い能力の証拠として差し入れれば、差し入れた金額の何倍かの金額を動かすことができると言う、金融取引の仕組みがレバレッジです。

少ない力で大きなモノを動かすことが出来る、まさにテコと言えます。

たとえば100円のFXを1万単位買い、それが101円に上がれば1万円の利益になります。

資金100万円で現物を買ってそれが101万円になれば、100万円を元手に1万円の利益を得た、つまり1%のリターンとなります。

これをもし10万円の証拠金で100万円分のFXを買い、それが101万円になれば、10万円を元手に1万円の利益を得たわけですから、10%のリターンとなります。

この低金利の時代に、驚くべき利益率の投資が可能となるわけです。

とはいえ、投資の世界にフリーランチ=ただ飯はありません。

儲かる確率と損する確率は表裏一体、ということで、次に、この驚くべき利益率の取引の裏にある、リスクを次に見てみます。

レバレッジ取引のリスクを理解する

FXの初期には100倍とか200倍あったレバレッジ比率は、どんどん規制され、今は最大25倍になっています。

日本の法律的にはグレイですが、海外のFX業者では、今でもレバレッジ400倍とか1,000倍といったところもあります。

もし25倍マックスを使ってフルレバレッジで取引する場合、たとえば1豪ドル(オーストラリアドル)が80円の時に、FXの基本単位である1万ドルを買うと、80円x1万で80万円分を取引していることになりますが、25倍までレバレッジを掛けられるので、110万÷25で4.4万円あれば取引できることになります。

実際は、少し余裕を持たせて設定されるので、4.6万とか4.8万円くらいにはなりますが。

いずれにせよ5万円弱で80万円相当の取引が出来るので、便利な仕組みではあります。

この取引の後に、もし80円の豪ドルが85円まで上がったら、80万円のモノが85万円になりますので、5万円の利益です。

5万円で5万円を産み出したことになるので、利益率でいうと100%、2倍になったということです。

ところが、金融の世界で、上に5円動くということは下に5円動く確率も同じようにあり得るということです。

このどっちに動くか分からない不確定さを「リスク」といいます。

80円が75円になったら、投下資金を全部失う、ということで、もし全財産を突っ込んでいたら、これで投資の世界から一発退場になります。

わずかな動きで爆死し、一発退場、5円ならまだゼロで済みますが、もし7円下がったら、5万円しか資金がないのに、7万円の損。

2万円分を追加で払うように、証券会社から請求が来ます。いわゆる追証というものです。

恥ずかしながら、その昔、自分も400万も吹っ飛ばしたにも関わらず、それだけでは足りなくて、さらに追加で30数万円を払う羽目になりました。

これがレバレッジをフルに掛けてはいけない、という理由です。

思った方向に動けば大儲けですが、なかなか思い通りになるはずもなく、もしも思った方向の逆に動けば、資産を全額なくしてしまい、場合によっては投資ができなくなってしまう危険があるわけです。

それでもレバレッジは高い方がいい

上記のように、無茶なやり方をして資金を派手に吹っ飛ばす人がいるため、レバレッジ取引は危険だ、と必要以上に恐れている人がいます。

またネット証券が普及する以前は、悪徳業者がレバレッジの意味さえよく分からないような素人を騙して高いレバレッジで商品先物等を勧め、そしてちょっと値が逆方向に動いただけであっさり全額吹っ飛ばし、その追証を返すために子供の進学のための貯金に手を付けた、とか、クルマや家を売る羽目になった、なんて事例もあったため、余計、レバレッジとかデリバティブは怖い、という話が独り歩きしているような気がします。

しかし僅かな資金で取引ができるレバレッジという仕組みは、適切なレバレッジでやれれば、効率よく資金を運用できるという意味で、効率よく資産を増やしたいならば、しっかり研究し、活用すべき仕組みだと考えます。

たとえば同じレバレッジとしてもFXのような25倍の場合と、仮想通貨のような2倍の場合を考えてみます。

同じ条件として、100万円分を買った場合、FXの場合の証拠金は4万円(100万÷25)、仮想通貨の場合は50万円(100万÷2)となります。

多くの証券会社、仮想通貨取引所では、余力がなくなり、証拠金の金額を下回るとロスカットが掛かるということから考えてみます。

レバレッジ25倍の場合は、100万円が4万円を割るまで耐えられますので、たとえば1米ドル100円が1ドル5円まで減っても、まだロスカットは掛かりません。

現実世界としては、アメリカ合衆国の大半が何らかの理由で消滅する事態にならなければ、米ドルが80〜90円くらいまで下がることはあっても、70円以下になる可能性は極めて低いので、全然耐えられます。

ところが、レバレッジ2倍の場合は、原資産(投資対象のモノ。この例だとビットコイン等の仮想通貨)が半分になった時点で、証拠金を下回ってしまいます。

ビットコインだと2021年度の動きを見ると、最大760万円、そして最安の際は320万円近くまで行っているので、半分以下になる可能性はそれなりにあり得るということです。

結論からいうと、レバレッジは最大限利用して、なるべく証拠金を少なく済ませつつ、レバレッジはあまり掛けずに、十分な余力を残して取引するのがよいかと思います。

資金効率は良いので、全くレバレッジを利用しない、というのも、勿体ないとも思うので、リスクを抑えつつ、可能な限り活用したいところです。

適切なレバレッジとは

では、具体的にどのくらいのレバレッジが適切なのか考えていきましょう。

結論をいうと、これまでの投資に関する考察の中にも書きましたが、FXで3倍くらい、できれば2倍ちょっとくらいが安全だと思います。

<過去記事>
投資必勝法はないが・・・勝つ確率を上げるために「型」を持て

ところが、証券会社のWebサイトやFX本などを見ても、レバレッジ取引は注意してやってください、とあるのみで、適切な倍率とか、模範的な使い方は書いていません。

そもそも正解がないということもありますが、秘めたる事情としては、ユーザーがロスカットに引っ掛かってくれた方が証券会社が儲かる、という理由もあります。

ユーザーが100円で1万ドルの買いポジションを入れた、ということは、FX証券会社は100円で1万ドルの売りポジションを持ったということになり、もし10円動いてユーザーがロスカットに掛かったとすると、ユーザーは10円×1万で10万円の損、逆に証券会社は10万円の利益になるので、ロスカットに掛かってくれる方が儲かるわけです。

実際は、同じ会社のユーザー同士で別の売り注文があればそちらとぶつけるし、またカバー取引といって、別の会社を使ってヘッジ(リスクを下げるための反対売買)することもあるので、ロスカット分全額が証券会社の利益になるわけではないのですが。

さて、2倍とか3倍という根拠は何でしょうか。

それは過去の値動きのグラフ、いわゆるヒストリカルデータ(過去の値動きの履歴)から判断しています。

たとえば豪ドルのヒストリカルデータのグラフを見てみましょう。

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左上にあるように、2015年に上は96円まで、下はコロナショックの際にほぼ60円まで下がっています。

あまり高値で買ってしまうと、なかなか利益が出ないので上は83円くらいで止めておくとして、下は60円まで下がる可能性があります。

しかも次回もきっちり60円で下げ止まってくれるという保証もないので、即死の可能性を下げるために10%くらい余裕を見て、54円まで耐えられるようにするのがよいと考えます。

あるいは、もっと慎重にマージンを取って、50円まで下がっても耐えられるようにしてもいいでしょう。

暴落時に証券会社がユーザー保護とか理由を付けて(実は早めにロスカットに掛けて自社の負担を下げようとする措置だと思います)、レバレッジの掛け率を下げてくることもよくあるので、そこでもロスカットに合わないよう、できるだけ余裕を持った設定にしておくのがよいとは思っております。

合法的なロスカット狩りというべきものであり、そこはネットで調べて、過去にそのような不満やクレームが見られるFX業者は避けた方がいいというのも、付記しておきます。

その前提で83円の時に買うとすると、まず証拠金はFXは25倍ですので、83円÷25で3.3万ですが、少し余裕を見て3.5万としておきましょう。

そして83円が55円まで下がったことを考えると、30円分の余力が必要になります。1万ドル買う場合は、30円×1万で30万円になります。

すると、先程の証拠金と併せて、1万豪ドルを持つのに、33〜34万円程度の資金が必要ということになります。

33万円で83万円の買いポジションを建てることになるので、83万÷33万で約2.5倍が暴落デイに即死しないための適切なレバレッジということになります。

まとめ

よく10万円くらいで米ドルや豪ドルを1万通貨買っている人を見ますが、いかに無謀か分かるかと思います。いわゆる投資でなく、投機です。

逆にいうと、レバレッジをこのくらいに抑えておけば十分に「投資」になりますし、逆に十分に資金があれば、つまり貴方が金持ちならば、レバレッジを掛けずにFXを買えば、外貨預金ということになります。

FX会社は法令で、「分別管理」といい、顧客の資産は信託銀行に預けないといけないので、結局は銀行で外貨預金をやっているのと同じ効果が得られます。むしろ、手数料やスプレッド、またスワップポイント(利息と考えてよいかと思います)では、銀行よりFX業者の方がユーザーに有利です。

ポジションをロング(買い)で持てば、様々な通貨ではそのスワップポイントで夢の利子生活が出来るなど、FXは上手く使えばメリットもあります。

上記に書いたように無理のない範囲のレバレッジ=3倍以下、できれば2倍程度で堅実に運用すること、また上記の豪ドルの例では83円と書きましたが、過去の値動きをきちんと見て、高値で掴まないこと、そして一気に全額買わないで、過去の値動きからどのくらいまで下がるかを想定しながら、何度かに分けて買い下がっていくこと、この3つを徹底することで、徐々に利益が出せるようになっていくはずです。

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