吐露

※これは2019年10月29日にMediumに投稿されたものです。

生きるのが面倒だと思うことがある。

決して死にたいワケではないことが重要だ。

死にたいと思っているんだと錯覚していたこともあるが、別に死にたいわけではない。

生きることが苦手なだけだ。

死にたいと思っていた頃

死にたいと思っていた時期がある。自分の記憶が正しければ、小学校2年生の頃から、高校1年生の夏までだったと思う。小学校に入学した頃、「自分」なんてものは無意識の中にあったし、人が自分をどうみているとか全然気にしなかった。

小学校1年生の頃って、親だとか先生だとかに毎日のように叩かれたし、裸足で外に出されたりしてた。時代が10年遅ければ体罰とかそういう問題になるのかもしれないけれど、当時は周囲の認識も今と違うし、親や先生も精神的に安定していなかったんだと思う。学校に行けば先生に叩かれ、突き飛ばされ、論理的なようで感情的な罵倒に晒されて、家に帰っても暴力的な両親に怯えてた。だから「良い子」を演じようとしてた。出来なかったけれど。
そんな生活を続けて、小学校2年生の頃にふと「居なくなりたい」と思った。なにかキッカケがあったわけでもなく、なんとなく、ふと、居なくなりたいって思った。それは「死にたい」という明確なものではなかった、と思う。そんな時期に、肺炎と喘息の併発で入院することになって、この1ヶ月ちょっとの時間がとても幸福だったことを記憶している。だから、病院の先生が
「もう退院できそうだけど、どうする?」
って聞きに来たときに、
「もう少し入院してる」
って答えた。入院中の記憶は曖昧だけど、この日だけは明確に覚えている。

……思い出話になってしまった。

そういう話がしたいワケじゃなくて、それでも死ななかったってことが言いたくて。どうも、文章を書くのが下手だ。“作家”は一生名乗れそうにない。

小学校3年生の頃から、僕は荒れた。暴飲暴食が始まって、情緒不安定で暴力的な子供だった。勉強は頑張っていたつもりだけど、押し付けられているのが嫌で宿題はしなかった。この頃の習慣から、僕は今でも宿題が嫌いなんだと思う。この時の担任のH先生は、自分の恩師と言える人だ。ほぼ毎日のようにケンカして、誰かを殴って、暴れて、友達もいなくなって。それは大人に対する不信と、他人への恐怖と、どこにも行けない逃げられない閉塞感。

自分の価値を考え始めたのはこの頃からだったと思う。

そんな時期に、H先生は
「僕は君を信じているから」
と言い続けてくれた。何を信じているのか分からなかったけれど、自分の為に涙を流しながら、怒ることなく、穏やかに「対話」をし続けてくれた。たぶん、H先生に出会っていなかったら、僕は壊れていたんだと思う。H先生のことは好きだったけれど、信用することが出来なくて、H先生に心を開いたのは出会って2年ほど経った頃。2年周期のクラス替えと共にサヨナラだった。

幸いなことに、小学校5年生の頃、初めて親友と思える友達が出来た。毎日のように遊んでいた。家に帰ると現実を見なきゃいけないから、2人で夜まで遊んだ。そんな親友は中学受験で遠くの県に行ってしまった。ずっと親友だと思っていたけれど、彼が地元に帰ってくるたびに互いの間に距離が生まれていることは確かだった。

そうして、小学校を卒業する頃に少し安定していた心は、中学1年生の夏休みには元通りだった。

その頃からいじめられた。以上。

生きている理由が、ずっと分からなかった。だから、この8〜9年ほどの期間は「死にたい」って思い続けた。爪を噛むクセが染み付いて、意味もなく高いビルに登って下を見つめた。カッターナイフの切れ味の悪さを知った。
死ななかったのは、死ぬ理由もなかったから。あと、タイトルも忘れた本に「自殺はダメだ」って書いてあったから。童貞のまま死ぬのが勿体ない気がしたから。

……今思えば、生きるのも死ぬのも、どちらも無価値だと思いながら、死ぬときに痛かったり苦しかったりするのが嫌だったんだと思う。

それで、高校生になった頃に気づいたのは、この感情は「死にたい」っていうこととは違うんじゃないか?って事だった。「死にたい」と思いつつ「死なない」のは、本当に死にたいワケじゃないんだろうなって。

そう思い始めたのが高校生。たぶん、少しだけ大人になったんだ。

本題

あまりにも前置きが長くなってしまった。自分語りが過ぎるところがある。本当に治さないと、いつか後悔しそうだと思う。だけどまぁ、この記事そのものが自分語りだから、今回は許してほしい。

——高校1年生。

この頃から、生きることと死ぬことについて深く考えるのをやめようと思った。生きるとか死ぬとか考えるのは、精神がおかしい人のすることだと信じるようになった。周りにそんなことで悩んでいるように見える人がいなかったから。きっと、みんなも同じように悩んで、それを隠して生きてきたんだろうけれど、自分の目から見える世界は、意外と何も見えていないらしい。
環境が変わったのも大きい。大人しい人が多い高校に行くことができたから、中学よりは居心地の良い毎日だった。教室で本を読んでいても浮かなかったし、自分より頭のいい人に囲まれていると、人間っていう存在はちゃんと対話ができるんだって感じて、誰かと話すことが楽しいと思えることも増えた。自分の無知に悲しくなることも増えたけれど。

だけどまぁ、心地良い環境をいきなり与えられると、人ってバグを起こしてしまうらしい。『PSYCHO-PASS 2』というアニメ作品にユーストレス欠乏性脳梗塞 ¹ という病が出てくる。そこまで酷い状態ではないけれど、それと同じ系統のなにかだったのではないかなと思う。もしかしたら五月病に近い何かなのかもしれないけれど、とにかく毎日が酷く憂鬱で、次第にあらゆるやる気が無くなっていく。自分の感情が極めて虚無に近づく感覚が常にあった。

自分が生きている意味を失うことって、深刻な問題だと思う。

きっと、自分の将来を考えなきゃいけなくなったことも大きい。僕は、自由な将来が用意されていなかった。実家は、地元ではちょっとだけ大きな会社を経営している。(別に自分の暮らしが贅沢だったことは無いから、そのお金がどこに消えているのかは何となく察していた。毎日のように父親は家に居なかったから。)僕は、その家業を継ぐことになっていた。そのせいか、小学校の頃に書いた将来の夢は「サラリーマン」だった。未来が決まっていることはある意味では楽だけど、周りの自由な人たちを見つめるのが苦しかった。

僕が学生のころは、インターネット上に歌を投稿する文化が花開いた時期で、僕も歌うことが好きだったから歌の道に進みたかった。だけどまぁ、夢を見ることに憧れながらも歩むべき道を順調に歩き続けて、疲れ切っていた。「自由って何か?」を問い殺しながら、傍から見たら幸福な“将来の約束”という悩みの中で自分の無力さを呪い続けた。呪うばかりで、本当に逃げ出すことも出来ないほど臆病な人間だった。

僕は臆病な人間だった。

この臆病さが、生きるのが苦手だと思う最大の根拠だ。

僕は死ぬことにも臆病で、自由に生きるためにレールから飛び降りることにも臆病で、表現者として生きようと思っていながらも自分の作品をつくることが恐ろしくなる原因で、自分の感性を信じられない理由で、誰かを信じる恐怖の因子で、人間嫌いの根底で、他人が自分をどう見ているのか恐くて不安になって夜も眠れなくなる呪いの正体。

臆病だからこそ、自分の周りを無理難題で固めて、そのハードルを飛び越えなければならないように自分を苦しめて、臆病さと向き合う余裕を奪う。
そうしないと何も出来なくなってしまう。

そんな、綱渡りみたいな人生を歩み始めたのは高校2年生からで。わざとビックマウスになって、必要以上に周りを威嚇して誰も近寄らせないようにして、自分を追い込んでいって、何も上手くいかなくなって嘲笑に晒された。だけど「自業自得」って言葉で片付けられるのが楽だった。受験に大失敗したことで、自分は「ストイック」て言葉で褒めたたえられるような成功者にはなれないことを悟って、自分を“負け犬(Underdog)”と名付けた。ほとんどの人は知らないだろうけれど、いまだに自分の作品を書く時はペンネームに「R.U=Underdog」を用いている。さすがに世間に公表するときにその名前だとイタすぎるので、公開時には本名に直しているけれど。

以上が、生きるのが苦手なんだと思う理由だ。何も上手くいかなかった人生と、愚かな主義、馬鹿らしい臆病さ。もっとたくさんの根拠があるけれど、さすがに書くことが出来ないことも多いので省略させてください…。

みなさんも、きっと生きるのが苦手なんだろう。じゃなかったら、こんなところまで読まないだろうから。僕は、こんなくだらない理由で生きるのが苦手なんだと感じている。みなさんが日常を生きる上で感じる「生きることの難しさ」って、もっと違う文脈のなかにあるのかもしれない。

まぁ、こういう理由で「生きるのが苦手」だと思っている奴がいるという紹介でした。

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¹ シビュラシステム運用下にあるとされる架空の病気。精神メンテナンスやストレスケアなどに過剰に依存し、生命維持に必要とされるレベルのストレスさえも受けることがない状態が長く続くと、刺激に対する生理反応が麻痺して自律神経が侵されることによって発症する。真相は表沙汰にならず死亡後は原因不明の心不全扱いとなるため、この病気は都市伝説扱いされている( https://www.weblio.jp/wkpja/content/PSYCHO-PASS_%E8%A8%AD%E5%AE%9A ※2019/10/29現在)

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