【ハワイの神さまと精霊の国 その⑨】

「それで僕たちはこの後どうすればいいですか?」

俄然このハワイを守りたくなった太郎は

コナに聞きました。

『もういいんじゃよ』

「えっ!?」

『太郎、貴子。

そなたたちはこれから

このハワイを存分に楽しんでもらいたいのだ。

そしてこの海を、山を、風を、雨を、森を、太陽を

存分に感じてもらいたいのだ。

この精霊の国の再生に力を貸してくれたのは

実は二人の使命のうちのホンのひとつ。

”ただこの世界を楽しむ”

それが二人がこれからを生きる使命なのだよ』



「ただこの世界を楽しむ・・・・」

『さよう。

ただ楽しめばそれでいいのじゃ。

美味しいものを食べ、この自然を遊べ。

何も遠慮することはない。

太郎と貴子が自分の人生を思いっきり楽しんでいる姿を見て

やがて同じように人生を楽しむ人々が増えていくだろう。

子供たちも自由に遊んでよいのだと知るだろう。

人に優しくすることも

人を愛することも

また愛されることも

すべてが自由なのだとわかってくれるだろう。

その手本となるのが

そなたたち二人なのだ。』

「そうですね。

僕たちが人生を楽しむことをみんなに伝える。

それが本当の使命だったんですね。」



メェーーーーッ!

「コナさまー!

もう!お話をしだすと

ホントに止まらないんだからー!」

『おお。忘れておった。

そろそろ二人を帰さねばいけないな』

コナは太郎と貴子にヤギの後をついて行くように伝えました。

「もうお別れなんて寂しいです」

「もっとコナさまのお話を聴いていたい」

太郎と貴子は名残惜しそうにコナを見つめました。



『永遠の別れではない。

このひととき、離れているだけじゃ

それに・・・・』

「それに・・・・?」

『うーん。いや。これは後で分かればよいか』

コナはなにやら口ごもりましたが

太郎と貴子はそれ以上追求しませんでした。

『さあ光の扉を開いたぞ。

行くが良い!

ヤギの後について

あの光の中へ入るのじゃ』

いつの間にかヤギの後ろには

来たときと同じような光の扉が開いていました。



「コナさま。本当にありがとうございました!」

「コナさま。また必ずお逢いしましょうね!」

貴子は抱きしめていた精霊の赤ちゃんを

足下の岩の上に下ろすとバイバイと手を振りました。

精霊の赤ちゃんも貴子を見つめて

バイバイと手を振っています。

「ううぅ・・・・・」

貴子の涙が溢れて止まらなくなっています.。

「貴子。いつでも逢える。大丈夫だ」

「うんそうね。分かってる。

でも寂しい氣持ちに嘘はつけないわ」

貴子は泣きながら手を降り続け

二人同時に光の中へ入って行きました。

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