『カメラを止めるな!』の魅力

映画『カメラを止めるな!』6回目を見た。もう台詞から何からほぼ覚えているが、何度見ても飽きることなく、あっという間に時間が過ぎる。私は3回目くらいからは、ラストに近づくと、感動で涙をこらえることに必死になっている。

とにかく最初の37分間は、何か不自然なところが気になるゾンビ映画。ワンカットだから画面の揺れがあるし、ここで映画館を出てしまう人もいるという。しかし、その映画のエンドロールが出、この先どうなるのかと思っているところから本題が始まる。

とにかくクラウドファンディングから始まった300万という予算。普通、大劇場で上映するような映画は数十億、数百億かかり、同時期に上映されているハリウッド映画は、『カメラを止めるな!』の予算では1秒も作れないという。

私は広告代理店に勤めていた頃、CM製作にも関わっていたが、ちゃんとしたものなら30秒のCMを作るのにタレント費別で、製作費が3000万くらいはかかる。誰もが顔を知っているようなタレントなら一人、年契で数千万、トップスターは億を超えるから、何人も使えばそれだけですごい金額になる。

CM一つ作るのでもさまざまな仕事、役割があり、50人くらいのスタッフは必要。だから、さまざまなお金もかかる。これは関わった者でないと理解しにくいかもしれないが、タレントだってその周りで何十人何百人という人が、そのお金で食べているのだ。

だから300万では、この経済社会において、仕事として2時間近くある映画を製作することなど、到底不可能なのである。それをこの映画はやってしまった。なぜできたか。それは、出演者、スタッフみんなが、お金を度外視して、この映画を作りたい、関わりたいと思ったからに他ならない。

だからこの映画にはとてつもない熱量を感じる。興行収入が大きな目的の一つである普通の映画にはない、爆発的な情熱と、スタッフ、キャストの一体感がにじみ出ているのだ。そしてそれは観客を感動させ、観客までをも巻き込む。だから口コミが広がり、インディーズがここまでメジャーになるという奇跡を起こしたのである。

回を重ねるたびに、出演者一人一人に愛着が湧く。この人はここでこんなことをしていたのか、この台詞を言ったのはこの人だったのだな。地味な役だけど、なかなかかわいいじゃないか。出しゃばらないけど、まじ、イケメン。もう家族のようなものである。

最後にネタバレを少し。回数を重ねて一番真剣に見る部分は、大ラスのほんとのエンドロールの映像である。1回目、全く事前情報なしに見た後で感じた、いったいどうやって撮ったのだという、膨れ上がった疑問の答えはかなりここに隠されている。ここで席を立つ人は素人だなあと思う(笑)。

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