カメラを止めるな!

『カメラを止めるな!』(2017年製作 監督:上田慎一郎)

2018年6月、インディーズのこの映画は、日本のたった2館で上映されるや、爆発的な人気を呼び、2カ月後には全国190館(8月現在)で公開されるまでに至った。

製作費300万円というから、ほとんどボランティア参加でしか作れない予算であり、よってCGなどは一切使っていないのだが、それでこれだけの作品が出来上がってしまうところにまず、驚きと感動を覚える。

当然、いわゆる一般的に有名な俳優は出演しておらず、だからこそ、フィクションと現実の差がわからなくなるようなリアリティが感じられる。俳優たちはみな非常に個性的。役者としてはベテランから、映画は初めてという人までいるが、みんなついつい応援したくなるキャラクターである。

私は最初、先に見た妻と息子に勧められ、ワンカットのゾンビ映画だくらいの情報だけで見た。ネタバレするので何も言えないのが歯がゆいが、確かに最初の37分間、一度もカメラを止めることのないゾンビ映画だった。そしてエンドロール。いったいこれからどうなるのだと思っているところから、この映画は始まる。

私は現時点で3回見たが、技術的にもいったいどうやって撮ったのか、作ったのか、わからないところが多い。さまざまなインタビュー記事などから大分情報は得たが、製作者の立場から考えると、謎は深まるばかりである。また、この低予算でこれだけの人が協力し、これほど素晴らしい作品を作り上げた情熱と才能には本当に頭が下がる。

この映画は、この金にまみれた、問題だらけの社会に投じられた希望である。観客は映画の登場人物、または、スタッフの一員に加わったような感覚で、爆笑し、感動し、涙する。すでに海外での称賛もかなり得ているようだが、ぜひ世界中に旋風を巻き起こしてほしい。

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