『カメラを止めるな!』の脚本

若干ネタバレになるかもしれないので、まだ見ていない方はご注意を。

『カメラを止めるな!』の脚本、編集も、監督の上田慎一郎である。この人の力量、緻密さ、計算高さは半端ない。私はスタッフではないし、現場を知っているわけでもないが、上田監督は終始、スタッフ、キャストを盛り上げ、一体感の中で撮影を進行し、最終的に自分の描きたかったもの、あるいはそれ以上のものを作り上げたに違いない。

ワークショップという形でスタートしたこの映画は、オーディションでキャストを決めると、コミュニケーションを取るうち、監督がその人のキャラに合わせた脚本を書き進めた。当て書きというらしいが、そうやってそれぞれのキャストが無理なくその個性を発揮できるようにした。

内容的には、怖い→笑える→泣ける、というステップを踏み、これは観客が映画に求める感情のオンパレードである。

最初の37分間はゾンビ映画。これは好き嫌いがあるので、ここで躊躇する人もいるようだが、ワンカットで撮るという無謀な企画を見事にやってのけた。血まみれになっての役者の熱演が素晴らしい。

次に人間ドラマが描かれる。あまり書くとネタバレするので省略するが、特に父娘の関係に焦点があてられる。

それから爆笑の時間。最初のゾンビ映画に感じていた違和感が見事に回収されていく。観客は、やられた感が半端ない。笑いの要素としても、転ぶ、子供の大好きな下ネタを含め、とにかくこれで笑わずにいられるかという要素が詰め込まれている。

そして、ラストには感動が待っている。ここで皆が力を合わせる。そもそもこの映画自体、お金で動いている企画ではないから一体感がなければできないのだが、内容的にもラストでそれを見せつけてくれる。1、2回の鑑賞ではここも笑って終わるところかもしれないが、回を重ねるとラストに近づいただけで涙がこみあげてくる。

みんなで力を合わせるということが、一番、人を感動させると私は考えている。観客を泣かせるには、誰かが死ぬような手法もあるが、私はこういう感動の涙の方が好きである。

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