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カーペットの歴史

カーペットの歴史は非常に古く、多くの文化と地域にわたって発展してきました。以下に、カーペットの起源や用途、様々な時代と地域での変遷についてまとめました。(画像は堺式段通)


1. カーペットの起源

カーペットの発祥は、古代ペルシャ(現在のイラン)やトルコ、エジプトなどの中東地域であると考えられています。カーペットの製造は、紀元前4,000年ごろには既に始まっていたとされ、当時は羊毛やラクダの毛を使った織物が一般的でした。最も古いカーペットの一つとして知られる「パジリク絨毯」は、紀元前5世紀頃のもので、ロシアのシベリアで発見されています。このカーペットはその精巧なデザインと技術力から、当時のカーペット製造技術が既に高度なものであったことを示しています。

2. ペルシャ(イラン)とカーペット

ペルシャはカーペットの製造において最も重要な地域の一つです。特にサファヴィー朝時代(16世紀~18世紀)にかけて、ペルシャはカーペット製造の中心地となり、王侯貴族の庇護を受けて技術が発展しました。この時代に作られたペルシャ絨毯は、精巧な花模様や幾何学模様、動植物をモチーフにしたデザインが特徴で、世界中で評価されました。また、ペルシャでは特に染色技術が発達し、天然染料を使用して色鮮やかなカーペットが製造されていました。これらのカーペットは装飾品としてだけでなく、家族の財産や地位を象徴する品物としても大切に扱われていました。

3. トルコとオスマン帝国のカーペット

トルコのカーペット製造も古くから行われており、特にオスマン帝国時代(14世紀~20世紀初頭)にかけて、その製造技術が発展しました。トルコのカーペットは、特に「アナトリアン・カーペット」と呼ばれるタイプが有名で、オスマン帝国の影響を受けて幾何学的なデザインや植物をモチーフにしたデザインが特徴です。トルコカーペットには、縦糸と横糸を絡める独自の「トルコ結び」が使われており、これにより非常に耐久性のあるカーペットが作られました。トルコのカーペットも、家庭のインテリアとしてだけでなく、礼拝や儀式の場での使用が盛んでした。

4. エジプトとマムルーク朝のカーペット

エジプトにおいては、マムルーク朝(1250年~1517年)の時代にカーペット製造が盛んになりました。マムルーク朝のカーペットは赤や青の鮮やかな色使いと独特な幾何学模様が特徴で、宗教的な意匠も多く見られました。また、エジプトのカーペットはヨーロッパにも輸出され、ヨーロッパの貴族たちの間で珍重されました。

5. ヨーロッパでのカーペットの発展

中世からルネサンス期にかけて、カーペットは貴族や富裕層の象徴としてヨーロッパでも広まりました。特にイタリアやフランスでは、オリエンタルカーペットが輸入され、貴族の館のインテリアに使われることが多くなりました。17世紀頃には、フランスやイギリスでもカーペット製造が始まり、特にフランスの「オーブッソン」や「サヴォンリー」のカーペット工房が知られるようになります。これらの工房では、手織りのカーペットが製造され、宮殿や邸宅の装飾として使われました。

イギリスでは、ウィリアム・モリスが手工芸の復興を目指して「アーツ・アンド・クラフツ運動」を起こし、その影響で手織りのカーペットが再び注目されるようになりました。モリスのデザインは自然をモチーフにしたもので、ペルシャ絨毯の影響を受けたとされています。

6. 日本とカーペット

日本にカーペットが伝わったのは江戸時代の後期とされていますが、一般に普及するのは明治時代以降でした。明治期には、ペルシャやトルコなどから輸入されたカーペットが富裕層や政府の建物に取り入れられ、日本においてもカーペットの需要が高まりました。その後、日本国内でのカーペット生産が始まり、国産カーペットの製造が進みました。特に昭和時代に入ると、機械織りの技術が導入され、カーペットが一般家庭にも普及しました。

7. 現代におけるカーペットの用途とスタイル

現代のカーペットは、住宅や商業施設の床材としての実用的な役割に加え、インテリアの重要な要素としても評価されています。デザイン面では、伝統的なオリエンタルスタイルのものから、モダンでミニマリズムを意識したものまで、幅広いスタイルが展開されています。カーペット製造も従来の手織りや結び目を多く使った伝統的な手法から、機械織りやプリント技術を駆使した大量生産へと移行しています。

カーペットはまた、各国の文化やデザインを反映したものが多く、インテリアにおけるアクセントとして使用されます。特にペルシャ絨毯やトルコのキリム(平織りの織物)は、オリエンタルな雰囲気を演出するアイテムとして根強い人気があります。さらに、環境に配慮したエコカーペットの開発も進んでおり、天然繊維や再生素材を使用したカーペットが注目されています。

8. カーペットの象徴的な意味と文化的意義

カーペットは単なる装飾や実用的なアイテムではなく、多くの地域で「権力」や「富」を象徴するアイテムとしての役割も担ってきました。ペルシャやトルコでは、カーペットは代々家族に伝わる財産であり、結婚や引き継ぎの儀式において重要な役割を果たしました。また、イスラム教徒の礼拝用カーペットである「サッジャーダ」は、信仰生活においても重要です。これにより、カーペットは宗教や文化的な意義を持つものとされ、他のインテリアアイテムとは異なる重みがあります。


カーペットの歴史は多様であり、その時代や地域によっても多様な変遷を遂げてきました。現代においてもカーペットは多くのデザインや用途で愛され、文化的な価値も失われることなく伝承されています。

9. 堺式段通の歴史

「堺式段通(堺緞通)」は、江戸時代後期の1831年に堺の糸物商・藤本庄左衛門が創始した手織りの絨毯で、日本国内外で高い評価を受けました。堺の段通は、中国や九州の伝統技術を取り入れ、改良を重ねたものです。19世紀後半には内国勧業博覧会にも出品され、その後は海外輸出も盛んに行われ、明治期に絶大な人気を博しました。現在は堺式手織緞通技術保存協会が技術の継承に努めています。

堺緞通は、精密な設計図に基づき、色や柄を一目一目手作業で織り上げる非常に手間のかかる工程を経て完成します。製作には独自の道具や技法が使われ、伝統的な手法が大切にされています​

こちらが「堺式段通(堺緞通)」をイメージした画像です。伝統的な日本の手織り技術と美しいデザインが反映されています。

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