初めての撮影

僕が初めて人形アニメーションを撮ったのは20歳の時だった。

大学の課題で作った3分の作品の1パート。粘土で作った人形が寝ていて、起きて、何か夢を見たはずなのにと思い出そうとする…それだけのシーンだった。それでも粘土を少しずつ動かしては撮影するのはとても時間がかかる。結局たった1分のシーンを撮るのにかかった作業時間は6時間だった。

作業時間は6時間だったが、実際にはもう少し余計に時間がかかっている。自宅のこたつのテーブルの上をスタジオに夜を徹して行われた撮影、途中で力尽きて普通に仮眠を取ってしまったのである。それもしっかり4時間。シーンとシーンの切れ目でも何でもなく、普通に人形が動いているシーンの途中だった。

1秒間24コマの撮影。寝ている人形が少し身をよじる、その動きの1コマと1コマの間に、見えない4時間が凝縮されている。僕は何よりもその事実に、アニメーションという技術の神秘性を感じた。完成した映像を見ても誰にも分からない4時間!あの4時間がなかったら、僕はアニメーション監督という仕事を選ぶことはなかったと思う。それくらいの大きな衝撃だったのだ。

そういえばあの夜、僕は夢を見た。狭いアパートのこたつのテーブルの上をスタジオにして、人形アニメの撮影をする夢。夢の中の僕は撮影の途中で力尽き、こたつの脇に毛布を出して、小さく丸まって仮眠を取った。どこまでが夢で、どこからが現実なのか。それを証明することは誰にも出来ないのかもしれない。

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