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いつか星の海へ

宇宙船を作っている。学生時代からずっとだ。俺はこれでいつか宇宙に行くのが夢だ。昔は仲間も何人かいたものだが一人また一人去っていって、今は俺一人になってしまった。でも構わない。俺はまっすぐに俺の夢を突き進むだけだ。

俺が作っているのはロケットやスペースシャトルなんておもちゃじゃない。宇宙を自在に駆け巡るUFOだ。独学でたくさん勉強もした。研究結果のうちのいくつかは論文にして科学誌に投稿したり偉い先生に見てもらったりもしたが、アイツらは全く取り合ってくれなかった。でもそれも仕方ないと思っている。かつて地動説を唱えた学者は狂人と罵られたという。天才とバカは紙一重なのだ。俺は独自の研究を進めていった。

宇宙船を作るのに一番適した素材は、宇宙人の遺物だ。公にはされていないが、地球にはたくさんの宇宙人が紛れ込んでいて、宇宙から持ち込まれた物質がたくさんあるのだ。俺はそれを見分けることが出来る測定器を開発した。一見するとただの空き缶やゴミや鉄くずに見えるようなものの中に宇宙物質は紛れ込んでいる。俺はガラクタを収集し、測定器を使って宇宙物質を選別して集めた。とは言え俺の測定器もまだ試作品で精度は低い。もっとたくさんのゴミを集めて数値を算出してデータを増やして改良を重ねていくしかない。それは地道な作業だが、大きなことを成すためにはすべからくこういう小さな作業の積み重ねが必要なのだ。

また役所の奴がやって来て表のゴミを何とかしろだなんて妄言を言ってきたので怒鳴り飛ばして追い返した。俺の研究を、俺の崇高な夢を邪魔する奴は誰であろうと許さない。まだまだやることは山ほどある。俺にはそんなくだらない連中に関わっている時間は無いのだ。宇宙船の船体はほぼ完成している(当然まだ改良の余地はある)が、エンジンについてはまだ30パーセントといったところだし、諸々にある程度目処がついたら先送りにしていた船内の住環境についてももっと整える必要がある。でもきっと出来る!絶対にやり遂げてみせる!倉庫に置いてあった試作燃料から爆発火災が起き、全て燃えて吹き飛んだのは、そんな矢先だった。

宇宙船も、エンジンも、溜め込んでいた材料も、研究成果も資料も全て燃えてしまった。約30年つぎ込んできた研究の成果が全てパーになってしまった。失意のままに俺は死んでしまいましたとさ……となったらそれは普通の物語だ。俺はこの程度ではめげない。これまで重ねてきた膨大な研究や理論は全て頭の中に入っている。また一からやり直すだけのことだ。いつか宇宙に行く。俺の夢は決して折れない。

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