缶コーヒー

仕事の日は、駅までの道を少しだけ回り道して、自販機で1本100円の缶コーヒーを買って飲みながら駅まで向かうのがここ数年の日課になっている。

ある日いつものようにいつもの缶コーヒーを買うと、ピピピピと耳慣れない電子音が鳴った、当たりが出たのである。そういえば毎回缶コーヒーを買うたびルーレットが回っていた気がする。毎回外れるし気にもしていなかった。本当に当たることもあるんだな。

とは言え、別に喉が乾いているから毎朝缶コーヒーを買っているわけでもない。はいもう1本どうぞと言われても持て余す。

はてさてどうしたものかなと思っていたら、目の前のバス停でバスを待っている女性が目に留まった。「すみません、自販機で当たりが出たんですけど、良かったらどうぞ貰ってくださいませんか?」僕は女性にそう声をかけた。当たりが出たことで気が大きくなっていたのかもしれない。今思うと不審者だと思われても仕方ないと思うが、有り難いことに女性は快く譲り受けてくれて、「ありがとうございます」とお礼を言ってくれた。女性が押したボタンは僕のと同じ缶コーヒーだった。

そこからなんやかんやあって、僕は今その女性と付き合っている。明日は2人で日本酒の飲み比べが出来る居酒屋に行く。そのあと多分彼女はうちに泊まってくので、いつものようにいつもの自販機でいつもの缶コーヒーを買うと思う。また当たりが出たらいいな。

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