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#6 アメリカで働くのに英語は必要か?

アメリカで飲食店を開業する時に心配になることの一つは英語だと思う。

僕も会社員時代にニューヨーク駐在の辞令を受けた時に、嬉しいと思った反面、

一番心配だったのは英語大丈夫かなということだった。

第一話でも書いた通り、僕のニューヨーク勤務時代は悲惨だった。

もうとにかくアメリカ人の言っていることが全く聞き取れない。

話すスピードが早過ぎるのに加えて、(当たり前だが)発音がネイティブ過ぎるし、

学校英語のように単語を一つずつ区切って話してくれないので、全然分からない。

もう一度言ってくれと聞き返しても、同じ結果。

でも、仕事で来ているからには黙っている訳にはいかないから、僕も頑張って何かを話すと、

アメリカ人は話好きだから、こちらが何か話すと100倍になって返って来る。

運よく相手の言っていることが聞き取れ、頭の中で英語を日本語に訳していると、

その間に相手はとっくに先に行っている。

また、そろそろこちらも何か話すなり、質問するなりしないとまずいと思って、

自分の言いたいことを日本語から英語に変換していると、もういつの間にか話題が変わっていたりする。

そうすると、あと僕が出来ることと言えば、へらへら笑うことだけ。


相手からすると、一体こいつ何しに来たんだろうなって感じだったと思う。

この悲惨なニューヨーク勤務時代から10年が経つが、僕はいまだに英語には苦労しているし、正直英語を話すのは好きでない。

駐在員時代の5年間は、やばいと思い必死で英語を勉強した。

会話中に相手の英語を日本語に変換している時間はない、

自分が話したいことは瞬発力をもって話す必要があると悟ってからは、

英語を英語で理解するために色々な方法を試した。

アメリカ人が普段見ているテレビドラマを見るのがいいと聞いてからは、「Friends」全236エピソードを3回繰り返して見たし、

同じ映画を100回繰り返し見るのがいいと聞いてからは、「ショーシャンクの空に」と「ハドソン川の軌跡」を100回ずつ真剣に見た。

知らない単語は英英辞典で調べて英語を英語で理解するようにした。

通勤中の車の中では子供向けの英語ニュースを聞きながらシャドーイングを行った。

気になるフレーズや言えなかったフレーズを3,000フレーズ集めフラッシュカードに纏めて何度も何度も口に出して練習した。

勿論、アメリカ人の同僚や友達とも積極的に話すよう心掛けた。

僕は英語をマスターするために出来ることは全てやったという自信がある。


しかし、英語習得に関する僕の結論は、

30歳を過ぎた日本人が英語をマスターするのは無理とは言わないまでも相当難易度が高いということだ。

言語耳がまだ残っている20代くらいまでならまだしも、

英語は文法面でも発音面でも日本語と最もかけ離れた言語と言われているからだ。

では、英語が出来ないとアメリカで商売が出来ないかというと、それはまた別の話だと思う。

英語が出来た方がいいのは間違いない。でも絶対条件ではない。


むしろ英語が出来るかどうかよりも、日本語でもいいからコミュニケーション能力があるとか、

行動力やリーダーシップがあるかの方がよっぽど重要なのは間違いない。

飲食店の場合、注文を取ったり、今日のお勧めを説明したりと英語でスムーズに接客をするのが重要だが、その部分は

英語が流ちょうなスタッフに任せておけばいいだけの話である。


勿論、お客さんからのクレームでオーナーが出て行かなければならない場面もあるが、

こういう場面では英語が上手かよりも、こちらの真摯な対応が伝わるかどうかの方が大切だと思う。

その他、英語を使う場面としては、スタッフへの指示・指導、食材ディストリビューターや設備の修理会社とのやり取りなどが挙げられるが、

お店のお客さん以外は、基本的にこちらが客であり、雇用者であるため、正直何とでもなる。


また、どうしても英語を話したくないというのであれば、マネジャーを雇えばいいだけの話だ。

アメリカにはアメリカンドリームを夢見て南米や中米からたくさんの移民が押し寄せてきている。

その人たちはほとんど英語が話せない。

でも生きるために、必死で英語を話そうとしている。


上手く話せなかったらどうしようとか、発音が下手だと恥ずかしいとか、そんなことを言っている場合ではないので、

身振り手振りで一生懸命自分の言いたいことを伝えようとしている。

中南米だけでなく、アメリカには中国、韓国、ベトナム、アラブ諸国、ロシア、東欧諸国など、

世界中から人が集まってきている。

特に僕が住んでいるカリフォルニア州は人種のるつぼ状態で、

普段周りから聞こえる言葉は英語でないことの方が多いくらいである。

第一言語が英語でない人の方が多いのではないだろうか。


これらの人達はみんながみんな英語を流ちょうに操れるわけではないと思う。

相手の言っていることが70%くらい理解できて、

自分の言いたいことがめちゃくちゃな英語でも相手に伝えられればいいのではないだろうか。

言語はその道の専門家を目指すのでない限り、完璧に習得することが目的ではなく、

コミュニケーションのツールに過ぎないのだから。

第一話はこちら

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