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#8 アメリカで会社を設立

日本からアメリカに来て飲食店を開業する場合、まず会社を設立する必要がある。

前回説明した通り、アメリカで外国人がビジネスを行うためには就労ビザが必要となるが、

僕が取得したEビザ、言い換えると実質的に取得可能だった唯一のビザだったEビザは、ビザ発給のスポンサーとなる受け皿としての会社が必要となるからだ。

Eビザは個人に対して直接発給されている訳ではなく、Eビザの取得要件を満たす会社が認定され、

その会社のビザ発給枠の中で個人に対してEビザが発給される流れとなっている。

会社を設立する理由は他にも、税金面や信用力、資金調達の観点などもある。

また、アメリカは訴訟社会だから、ビジネスのリスクを個人から切り離すことも重要であるから、その点でも会社を設立する意味はある。

アメリカで会社を設立する場合の会社形態の選択肢としては、

C Corporation(株式会社)
S Corporation(小規模法人)
Partnership(共同事業体)
Limited Liability Company(LLC:有限責任会社)

などがある。


結論から言うと、僕のような外国人が小規模ビジネスを行う場合は、LLCが最も適している。

C-Corporationは、日本の株式会社に該当する形態で、既に日本である程度の規模の事業を行っている会社がアメリカに進出する際はこの形態を選ぶことが多い。

S-Corporationは、小規模事業用の株式会社で法人税が課税されないというメリット(法人レベルと個人レベルでの二重課税が避けられる)があるが、

株主はアメリカの居住者に限られるという制限があるため、外国人には利用しにくい。

Partnershipは、二人以上で設立する合弁会社で、法人税が課税されないという利点があるが、無限責任を負うという大きなデメリットがあり、法務的・財務的なリスクが大きいと思う。

LLCは、僕らのような小規模ビジネス向けに制定された比較的新しい会社形態で、

出資者が出資額の限度で責任を負う「有限責任」を有する一方で、

税金面では法人レベルで税金(法人税)が課税されず、個人レベルで税金(所得税)が課税されるのみと、所謂「二重課税」が避けられるという

二つの大きな利点がある。

株式を発行するCorporationが株式を所有するのに対し、持ち分(Interest)を所有することになり、

出資者を株主ではなくMember(メンバー)と呼び、上述の通り有限責任制により各メンバーが出資額を超えた責任を負うことはない。

また、Corporation が会社法に規定されている方法でしか会社を運営できないのに対し、

LLC は基本的にはパートナーシップと同じで個人間の契約なので、会社運営に関しメンバー間で自由な取り決めができることが大きなメリットで、

例えば持ち分の保有比率にかかわらず、利益の分配は出資額に関係なく決めることができる。

いいことだらけのLLCだが、LLCのデメリットとしては、州によって特別のフィーが課せられることが多い。

カリフォルニア州の場合はFranchise Taxとして毎年800ドルの支払い義務があり、売上に応じて追加で納税する必要がある。

売上が100万㌦を超えると6,000㌦、500万㌦を超えると11,790㌦を支払うことになるので、売上に対して比較的薄利の飲食店にとっては痛いところである。

また、LLCは上記の通り株式会社ではないため、株式を上場することが出来ない。

そのため、ある程度の事業規模になり、株式を上場する場合は、C-Corporationに形態を変更するケースが多いようだ。

LLCの設立に当たっては、メンバー間でLLCの運営や利益配分、持ち分譲渡などについて定めたOperating Agreementの締結が必要となる。

会社を設立後は、

Articles of Organization(会社登録)
Employer Identification Number (EIN:連邦雇用主証明番号)
Business License(ビジネス許可書)
Seller’s Permit(販売許可証)

などを取得することになる。

Articles of Organizationは定款と訳されることが多いが、会社情報の登録みたいなもので、毎年会社情報の変更の有無に関わらず、更新する必要がある。


EINはFederal Tax ID Numberとも言われ、法人としてビジネスを行い連邦レベルで納税する場合などに必ず必要な会社のIDのことで、各種行政手続きで度々入力が必要となる。

EINに合わせて、州レベルの納税に必要なState Tax ID Numberも取得する。

Business Licenseはビジネスを行う拠点となる市に対して申請し、市によってはビジネス税を納税する必要がある。尚、Business Licenseの取得が必要でない市もある。

Seller’s Permitは卸売り・小売りをする場合に必要な許可証で、仕入時に仕入業者に対するSales Tax(消費税)の支払いを免除してもらう際にも必要となる。

会社設立に係る手続きは面倒そうだが、弁護士や会計士にお願いすれば数日で完了する。

僕の場合、会社設立に係る各種手続きに対して払った総額は2,000ドル程度だった。

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