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ネイバーアート2 アートに囲まれている①

去年の春、朝のアカウミガメの保護活動に参加した時に見つけた「富田浜の草地」。一ツ瀬川から流れ込む入り江と富田浜の浜辺に挟まれた原っぱです。そこがきっかけとなり、自分にとって大きな存在となるネイバーアートに気付きました。

新富町にある「富田浜」は、ぼくにとって偉大なネイバーアートだと思います。ここに感じるアート性とばあちゃんの赤飯のおにぎりには、同じような存在や構造を感じます。
ばあちゃんの赤飯のおにぎりについての紹介は、→こちら

宮崎県新富町の富田浜の草地

富田浜の草地に立つと聴こえる鳥の声。そこから、ここに「食べる・食べられるの関係」があることがわかります。鳥や巣を狙うヘビやイタチ、タヌキ等の動物。鳥たちは海辺の魚や、草の中に潜む昆虫、まわりの木々の実を食べているはず。鳥のフンに残った種からは植物が芽吹くかもしれません。

あと、忘れちゃいけないのが、「河口」です。ここは多様性に富んだフィールドです。河口は海水と淡水が入り交じり、それぞれの水域の生物が同居しています。

ここで重要なのは、
二つの水域が入り交じる要因となる「干満(潮の満ち引き)」。
それと、「干潟」や「砂地」の存在です。

潮の満ち引きで干潟や砂地部分は海水に浸かったり、出てきたり。それによって生物活動が促され、微生物の繁殖や水の浄化につながり、魚やカニ、貝類などが生きる貴重な場所が生まれます。草地の食べる・食べられるの関係にも、ここはつながっています。

そして、草地の向こうにある「浜辺」と「海」。

アカウミガメが上陸・産卵する貴重な砂浜。浜辺の波打ち際は、水生生物にとって生死を分ける境界線です。体が大型になるほど打ち上げられやすくなり、死のリスクが大きくなります。なので、大きな魚から逃げてくる魚が集まると聞いたことがあります。海水浴をしていると波打ち際でよく小魚を見かけますよね。

大きな魚が来ないからと言って、落ち着ける安全な場所ではありません。波や潮の流れが常にあり、空から狙う鳥やたまに来る釣り人など、警戒が必要です。ぼくが波打ち際の小魚だったら一日どころか、1時間ももたないでしょう。

草地、入り江、浜辺は互いにつながり合っています。専門家でないので説明が間違ってる部分があるかもしれませんが、ちょっと知識があれば草地に立つだけで、こういう世界を感じ取れる。イメージできるんです。
ぼくの場合は「みえる」感覚です。ばあちゃんの赤飯のおにぎりを見た瞬間に、その向こう側にあるものが「みえる」のも同じ感覚です。

富田浜の草地に立つと、たくさんのつながりが読み取れます。そこにあるいろんな存在がレイヤーのように重なりあい、「富田浜」というフィールドができあがってます。個人的にはひとつの「作品」のように感じます。

宮崎県新富町の富田浜の入り江

長くなりそうなので、一旦ここまで。
その②につづく。→こちら

甲斐隆児 / アーティスト、ネイバーアートキュレーター
宮崎県出身。大学で油絵を専攻。子どもNPO法人、児童養護施設、農業などに従事。福岡県で緑地保全活動等に携わり、2021年に宮崎県新富町の地域おこし協力隊として移住。アートプログラムや新富芸術祭を担当。


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