見出し画像

好きな文章シリーズ④ Jキーツ「いつも空想をさまよい歩かせよ」(一部抜粋)

いつも空想をさまよい歩かせよ。たのしみは決して落ち着いてはいない。雨ががぱたと降るときの泡立ちのように、甘いたのしみはちょっと触れただけで消えてしまう。だから羽根のある空想をさまよわせよう。空想の上に拡げられた思想の領域を。心のかごの窓をひろく開けば、空想は飛び出し、空高く飛び上がるだろう。美しい空想よ。自由になるがよい。夏のよろこびは慣れてしまえば色褪せてしまうし、夏のたのしみはその花のいのちのように萎えてしまう。唇の紅い秋の果物は霧と露のなかで、顔を赤らめながら甘い好みに飽満している。そうしてどうしよう。かさかさに乾いた薪が赤あかと燃えるとき、冬の精よ、炉端の椅子に腰かけるがよい。静かな大地が雪に覆われ農夫の子供の重たい靴が固まった雪を蹴散らすとき、夜がその空から夕べを追い出す。はかりごとを申し合わせて昼と出会うとき、そこに腰かけて、高い使命を担う空想を四方に放て。物怖じした心をもって空想を外に放て。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?