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好きな文章シリーズ③ 「他人の顔」安部公房著より

「ぼくはおまえに近づきたいと願い、同時に遠ざかりたいと願っていた。知りたいと思い、同時に知ることに抵抗していた。見たいと望み、同時に見ることに屈辱を感じていた。そんな宙ぶらりんな状態のまま亀裂はますます内部にくい入り、ぼくは割れたコップを両手で支え、かろうじて形を保ってやっているのにすぎなかったのだ。」

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