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自力で海を越えて。

GWにヨットで海を越えて韓国に行ってきた。
実は去年も韓国の釜山に行っている。

今年は5年ぶりに日韓親善アリランレースが開催されるという事で「みんなで行こう!」と声がかかったので断る理由もなく一つ返事で行く事にした。

「GWの日本海は大体荒れる」というのがお決まりらしい、実際に去年は経験上最も大きなうねりに叩かれてて酷い目にあった。
酷い目というのは到着までの44時間のうち大体30時間以上は船酔いで吐いていた。
ちなみにそれまで自分は酔いに強い方だと思っていた。

自家用のヨットで海外に渡航する際の最初のハードルは出入国時の書類制作だと思う。
去年も自分が担当したので今年も自分がやった。
入管、税関、検疫、そして船の場合は海上保安部に行って海外渡航の旨を伝える。
これの書類がまあ面倒である。
行って帰って来るのに同じが紙が10枚も必要になる。
はっきり言って印刷代がもったいのでオンライン申請を設けて、ペーパーレス化を進めて欲しいと切に願ってしまう。
結局は書類制作に1ヶ月くらい時間がかかった。

僕としては、みんなが無事に出入国できれば一安心で、後は修学旅行の引率の先生の様な気分だ。

出国の手続きを終えて、いよいよ出航したのが4月30日。
到着時間の関係で夕方まで待って出航した。
ホームポートの境港から釜山港までは220マイル。
調子良く進んだとして6ノットだとすると到着まで38時間の道のりになる。

みんなに見送られて出発。
今回は同じヨットクラブの船で2艇で向かう。
スピードを合わせてあまり離れない程度に進む予定だ。
美保湾を出た所でオートパイロットをセットする。
今どきは長距離航海で舵を持つことはほとんどない。
高性能なオートパイロットは目的地をセットすれば少しづつ調整して目的地にピッタリと到着してくれる。

GPSもオートパイロットもなかった頃の話を聞きながら船を走らせる。
走らせるというかほとんど、オートパイロットの仕事ぶりを見てるだけ。
周りに船がいないか進路上に変な物が浮いてないか魚網などがないかをひたすら監視するのが人間の仕事である。

夜中に突然オートパイロットが暴れ出した。
急に激しく動き出したと思ったらラット(車で言うハンドル)が左にいっぱいきれて船が同じ所をグルグルと周り続ける。
慌ててオートパイロットの電源を落として船の体勢を立て直す。
一回電源を落として入れ直してリセットしても同じだ。

どうやらオートパイロットが故障したらしい。
「マジか。」
まだ残りの距離が200マイルを切ったくらいだ‥
色々と試すも何もできない海のうねりもあるし真っ暗な中で何を見たって何も分かりっこない。

ちなみにレースはオートパイロットを使えない。
何も目印がない海の上で一定の方向に走って行くのはとても難しい。
「仕方ない手動で行こう。」
船長の一言に先が思いやられたが、レースに向けての練習と思うしかない。

幸に2艇で走っていたので前を走って貰ってそれを目印に付いて行く。
これだけでも大分楽になる。

気がつくとうねりが大きくなり始めた。
吐き気で気持ち悪くなる。気持ち悪いけど吐くほどでもない。
これが一番辛い。いっそ吐いた方が楽なのに。
吐き気がするとキャビン(船内)に入るのが怖くなる。
外にいる方が景色が見える分視線を一定に保てて酔いにくくなる。
船内で作業すると一気に酔いが回る。
眠たさに負けてキャビンで仮眠した。
起きたらいくらか気分が良くなった。
これは初めての経験で酔ったら眠た方がいいみたいだ。

いよいようねりが大きくなって余裕がなくなった。
ほとんど何もできない。また横になった。
先輩達が交代でラットを握ってくれた。
今年も役に立たず、時折GPSを確認して進路について話した。
うねりも風も大きななって嵐の様な天気になった追い風の強風。



横になっていると、
突然、ガキーン!と大きな音がした。
波に揺られて帆を横方向支えるブームが大きくひっくり返えった。
ワイルドジャイブだ!
ブームが折れたんじゃないかと思う様な音だと思ったらワイルドジャイブ防止用に張っていたロープが衝撃で切れたらしい。
古いとはいえこんな太いロープが切れるのか?嘘だろって思った。

また夜がきて朝が来る前に釜山に到着していた。
今年もほとんど酷く酔った記憶しかない。
ずっとラットを握ってくれた先輩には申し訳ない。
酔ったため今年もほとんど写真を撮る余裕がなかった。

海からいきなり大都会が見える。
韓国人のヨットマンの友人が出迎えてくれた。
1年ぶりに会えてこうして出迎えてくれるのはやっぱり嬉しい。

次はいよいよレースが始まる。
その前に揺れないホテルのベットでぐっすり寝よう。

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